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コラム

2011年8月 1日 月曜日

経穴について-その7- 東洋医学研究所®グループ井島鍼灸院 院長 井島 晴彦

平成23年8月1日

今回は泌尿器疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂きました。
 前回のコラム(平成22年6月号)では、循環器疾患の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ること(穴名考)により紹介させて頂きました。
 今回は、排尿困難、膀胱炎、尿道炎、尿閉、尿意頻数などの泌尿器疾患によく使用される経穴として、中極穴、横骨穴、腰陽関穴、気海穴、水道穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。


泌尿器疾患に使用される経穴はたくさん有りますが、その中からどうして、中極穴、横骨穴、腰陽関、気海穴、水道穴を選んだのかを説明させて頂きます。

 病気の治療に使用する経穴を選ぶ根拠に、古典文献があります。いつも黒野先生から教えて頂いているように、古典文献の内容がすべて正しいわけではないので、実証医学的な証明が必要です。
そこで、黒野先生の発案により、各病気に対してよく効くといわれている経穴のうちから古典文献や穴名考などを根拠に数穴優先順位をつける作業をさせて頂きました。
 方法は、中国や日本の代表的な鍼灸に関する古典文献50冊あまりを調査・分析して著された「鍼灸医学ー経絡経穴の近代的研究ー」(竹之内診佐夫・濱添圀弘著)に掲載されているすべての主治症と経穴との関係をコンピューター(エクセル使用)に入力し、主治症別(590疾患・症状)、科目別(21科目)、経穴別(357穴 のべ経穴数4715穴)に抽出・集計できるようにしました。
 その結果から、泌尿器疾患について抽出すると、主治症が13疾患あり、経穴が85穴掲載されていました。その中で多く使用されている経穴は、横骨穴5回、腰陽関穴5回、気海穴4回、中極穴4回、水道穴4回、通谷穴4回、石門穴4回、中封穴3回、関元穴3回、大赫穴3回でした。
 そこでさらに、回数の多い経穴を1穴づつ細かく検証した結果、古典文献からの泌尿器疾患の代表穴として中極穴、横骨穴、腰陽関穴、気海穴、水道穴、通谷穴、中封穴、関元穴などがありました。
 その中で今回は、中極穴、横骨穴、腰陽関穴、気海穴、水道穴について紹介させて頂きます。


中極穴(特に膀胱疾患に使用されます。)

位 置 曲骨穴の上1寸、臍下4寸、白線中に取る。

穴名考 中は、なか、真中、心。極は、棟、棟木。
したがって中極は、中は一致するの意味、極は最上。最上に一致する。また中極は「北極星」のことで、北の極点にあり、方位で北、五行で水、五腑で膀胱に属し、膀胱を表す。
膀胱のあるところ、膀胱の最上部に一致するところにある穴の意である。

主治症 膀胱疾患を主る。尿閉、血尿、尿意頻度、陰委、陰茎痛、尿道炎、子宮出血、月経不順、不妊症、腎疾患、腹水、腰痛。


横骨穴(経穴の位置からその名前がつきました。)

位 置 曲骨穴の外5分、恥骨の上際、陰毛際にとる。

穴名考 横は、よこ、よこ木、横手。骨は、ほね=動物の支柱をなす堅固な物質、堅い、鋭い。
したがって横骨は、横はよこ、骨はほね。横の骨、いわゆる、横骨=恥骨のことである。恥骨の上縁にある穴の意である。

主治症 膀胱炎、膀胱麻痺、尿閉、陰嚢収縮など泌尿生殖器疾患、腸疝痛、腹直筋痙攣、下腹痛、腎石疝痛、腎炎、尿道炎。 


腰陽関穴(掲載回数の一番多かった経穴です。)

位 置 腰部、第4・第5腰椎棘突起間に取る。

穴名考 陽は天の気、太陽、陽に当たるところ、背部。関は閉ざす、貫く、境界。
したがって、陽関は、陽は背部、関は境界=関節。いわゆる、陽の部=脊柱の一番大きく動く、大関節の部にある穴の意である。

主治症 腰痛を主る。坐骨神経痛、リウマチ、下痢、便秘、下腹冷感、遺尿、尿意頻数、膀胱炎、膀胱麻痺、前立腺炎、月経不順、子宮出血など。 


気海穴(黒野式全身調整基本穴に含まれています。)

位 置 臍の下1寸5分、曲骨穴の上3寸5分、白線中に取る。

穴名考 気は雲気、天地人の間に流動する無形の活力。海は天の池、大きい、広い、地のはて。 したがって気海は、身体の根元となる活動力の多く集るところの穴の意である。

主治症 膀胱炎、遺尿、尿閉、夜尿症、尿道炎、子宮疾患、月経不順、下痢、便秘、消化不良、下腹冷感、内蔵の慢性病よりくる衰弱など。


水道穴(経穴名に意味のある経穴です。)

位 置 下腹部、天枢穴の下3寸、気衝穴の上2寸、関元穴の外2寸、腹直筋上に取る。

穴名考 水はみず、水分、汁。道は、みち、通り道。したがって水道は、腎臓より膀胱までの尿の通り道=輸尿管の部にある穴の意である。

主治症 泌尿器疾患を主る。腎臓炎、膀胱炎、腎石疝痛、尿閉、頻尿、睾丸炎、子宮および膣疾患、月経痛、不妊症、下腹冷感症、虫垂炎、黄疸、便秘、下痢。 


経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、泌尿器疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。
 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。
 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。
次回の私のコラム担当のときは、生体防御免疫疾患に使用される経穴を紹介させて頂きたいと考えております。是非、楽しみにしてください。


文 献 
 黒野保三.鍼灸医学概論〈改訂増補〉.エフエー出版.1996.
 黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
 竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
 日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

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