海外における鍼刺激の考え方について 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長  皆川 宗徳

 平成24年4月1日号

黒野保三先生の論文「ダン中(CV17)への鍼刺激は心拍変動の心臓迷走神経成分を増加させるが、中庭(CV16)への刺激では増加しない。」が、2011年1月6日、オートノミックニューロサイエンス誌に掲載されました。


 

 鍼治療が心拍変動による評価としての自律神経機能において特異的効果を持っているという明確な証拠はない中で、今回の研究論文は、自律神経系機能を調節する経穴の特異性の存在に対する強い科学的根拠を与えている世界初の研究であります。この論文の中で、海外で考えられている鍼刺激の定義を根底から論破されています。

 海外での鍼刺激の定義は、鍼刺激をしたときに独特な感覚を与えることであり、重い、しびれ感、放散痛、ちくちく、ひりひりという特徴的な感覚であります。この感覚を与えるために鍼を皮下の筋膜を貫いて深く挿入しています。このように定義されている海外での鍼刺激方法で、自律神経機能にどのような影響を与えているかを韓国の研究グループがまとめた論文が2010年にオートノミックニューロサイエンス誌に掲載されました。この論文の中では、ドイツ、中国、韓国、台湾、デンマークで行われた12件の研究を取り上げ、これらの研究結果は、鍼刺激により副交感神経に変化が認められなかったり、副交感神経が減弱したり、交感神経が高まったりと自律神経の反応がまちまちでありました。これらの研究結果をふまえて韓国の研究グループは、現時点において鍼刺激が自律神経機能に影響を与えているという科学的根拠が認められないという結論を出しました。

 黒野保三先生は、経穴の深さ、鍼刺激の強さについての基礎的研究結果から鍼を筋膜の深さまで垂直に刺入し、筋膜を貫くことなく20gの圧を加える手技を「筋膜上圧刺激(図1)」と提唱されました。この筋膜上圧刺激の治療効果については、過去数多くの研究報告がなされています。

図1 筋膜上圧刺激

 今回の論文では、筋膜上圧刺激による自律神経反応の基礎的研究を心拍変動解析を用いて検証した結果、副交感神経を有意に増加させたという研究結果を報告されました。
 この研究結果は、海外での鍼刺激の考え方を根底から変えるものであり、筋膜上圧刺激による自律神経反応の基礎的研究が多方面から検証される時代に入りました。
 現在、東洋医学研究所®では、臨床の現場で鍼刺激により胃や腸の動きが活発になる現象が多々見受けられることから、そのメカニズム解明のために筋膜上圧刺激による自律神経反応の基礎的研究として胃電図を使用しての自律神経機能評価研究を進めており、筋膜上圧刺激により胃電図の振幅が大きくなり副交感神経が高まる現象が確認されています。
 今後、自律神経機能評価研究が多方面から検証されている中、この基礎研究の流れに遅れることがないように黒野保三先生のご指導を頂きながら、鍼治療のメカニズム解明のため、自律神経の研究を進めてまいりたいと思います。