健康長寿は自己管理と鍼治療 東洋医学研究所®所長 黒野保三

平成24年1月1日号

東洋医学研究所®所長 黒野保三

謹賀新年
明けましておめでとうございます。
 私達は、なんとか病気にならないように、元気で長生きでき、家族や人に迷惑をかけないようにと願って日々努力しております。

 

 2007年の内閣府による高齢者の意識調査では、60%以上の国民が「自宅で療養したい」と回答しております。
 また、要介護状態になっても、自宅や子供達、親族の家での介護を望んでいる人が40%を超えたと報告しており、住み慣れた所でできるだけ長く生活できるように、在宅医療を推し進めることが必要であると結論づけております。
 この大きな流れに沿って、幾つかの具体策が打ち出されており、自分の健康や長生きに関しては、自己管理が一番大切だという事になります。要するに、健康や長生きは高齢になってからでは遅く、老若男女すべての人が健康・長寿の自己管理を始めて頂きたいと思います。
人は動物であり、読んで字の如くで、人間は動く物で、ひたすら歩いて生活をしてきた生物であり、現代においても、健康と長寿の秘訣は歩く事が第一であります。
 私が患者さんに歩きなさいと話しますと、「先生に歩けと言われて歩いたら膝が痛くなった、腰が痛くなった」と言われる方がおられます。要するに、普段歩いておられない方が急に多く歩きますと、かえって体調を悪くされる事があります。
 したがって運動をする順序が大切であり、歩く事は最初20分位にして、1週間続けて問題が起こらなければ、5分位多く歩き、1週間問題がなければ、また5分追加するという具合にして、40分位歩き続けるようにして下さい。また、歩く時に意識を脳に伝えるようにすることが大切です。
人の健康には基準が示されておりませんが、私は日常生活が不自由なく動ける事、三食が充分摂れる事、夜良く眠れることが健康であると定義づけたいと思っております。
 孫思バク(A.D.581-673)は「未だ病まざる病を治す」と言って「未病治」を強調し、「上医ハ未病ヲ治ス」「中医ハ人ヲ治ス」「下医ハ病ヲ治ス」と鍼医師をランク付けております。
 貝原益軒は、「鍼治療によって生ずる利益は薬や灸よりもすみやかに現れる。ゆえに良くその利と害とを検討しなければならない。強くしてひどく痛む鍼はよくない。早く病気を治そうとして、かえって病気が加わる。これは良くしようとして悪くすることであり、大いに用心しなければならない。」と鍼医師の心得を説いております。

      

 私の鍼治療は「第一に健康で長生きのするため治療を行なう。第二は病人の持つ心痛と病気を取り除く治療を行なう。第三に病がこれ以上ひどくならないように治療を行なう。」であります。良い治療効果を得るためには鍼医師と患者が一緒になって病気を治す心が必要であると考えております。
 高齢の方は老化と病気をしっかりと診ないといけません。病気は治すことが必要です。老化は治らないけれども、老化を遅らせることはできます。病気によって出る症状は早く治りますが、老化によって出る症状は年数がかかります。いずれにしても鍼治療は根気よく続けることが必要になってきます。しかし、病気によっては1回の鍼治療ですっかり良くなることも多くあります。
 東洋医学研究所®では、健康維持の鍼治療は週1回以上、病気を治す鍼治療は週2回以上を原則としております。
 要するに、健康と長生きは自己管理によって作られるものだと言いたいのです。
 健康と長寿のためにできるだけ朝歩くことをお勧めしたいのです。朝は排気ガスも少なく、爽やかで心も豊かで朝食もおいしく頂けると思いますので、ぜひ朝散歩をして、朝食をしっかり頂いて一日元気に過ごされる事を願ってやみません。