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コラム

2013年4月27日 土曜日

経穴について その8 東洋医学研究所®グループ 井島鍼灸院  院長  井島 晴彦

今回は、生体防御免疫疾患(アレルギー疾患や、風邪症候群、関節リウマチ、癌など、免疫の影響を強く受けると考えられる疾患)に使用される経穴の中で、大椎穴、気戸穴、合谷穴、身柱穴、天突穴を紹介させて頂きます。

病気の治療に使用する経穴を選ぶ根拠に、古典文献があります。そこで、黒野保三先生の発案により、10年前より、各病気に対してよく効くといわれている経穴のうちから古典文献や穴名考などを根拠に数穴優先順位をつける作業を行ってきました。
方法は、中国や日本の代表的な鍼灸に関する古典文献50冊あまりを調査・分析して著された「鍼灸医学ー経絡経穴の近代的研究ー」(竹之内診佐夫・濱添圀弘著)に掲載されているすべての主治症と経穴との関係をコンピューター(エクセル使用)に入力し、主治症別(590疾患・症状)、科目別(21科目)、経穴別(357穴 のべ経穴数4715穴)に抽出・集計できるようにしました。
その結果から、生体防御免疫疾患について抽出すると、主治症が28疾患あり、経穴が158穴掲載されていました。その中で多く使用されている経穴は、大椎穴5回、気戸穴5回、身柱穴4回、天突穴4回、廉泉穴4回、合谷穴3回、陽谿穴3回、彧中穴3回、兪府穴3回、気舎穴3回、水突穴3回でした。
そこでさらに、回数の多い経穴を1穴づつ細かく検証した結果から、古典文献からの生体防御免疫疾患の代表穴として大椎穴、気戸穴、合谷穴、身柱穴、天突穴について紹介させて頂きます。

 
大椎穴(骨の位置から名前が付けられました。)

位 置  背部、第七頚椎・第一胸椎棘突起間。
穴名考  大は、大きい。椎は脊椎骨。脊椎骨の大きなもの。いわゆる、頚を前に倒すと、一番大きい椎骨、第七頚椎棘突起があり、その下にある穴の意味です。
主治症  発熱、鼻塞り、舌炎、扁桃炎、胸膜炎、風邪、喘息、気管支炎、肺炎、不眠症、骨および脳脊髄疾患。


 
気戸穴(治療効果から名前がつきました。)

位 置  胸部、鎖骨の下、乳頭線上。
穴名考  気は、身体の根本となる活動力。戸は物の出入口。気の入るところ=肺の上部にある穴、気の入り口=気管の病変に効ある穴の意です。
主治症  喘息、気管支炎、百日咳、咳嗽、呼吸困難、肺炎、胸膜炎、肋間神経痛、扁桃炎、乳腺炎、肩背部疼痛。
合谷穴(経穴の位置を意味します。)

位 置   手背部、親指と中指の中手骨接合部の前の陥凹部。
穴名考  合は、三人の意見が集り合意すること。谷は、泉より湧き出て山との間を通って川に入るまで、山合の水の通過するところ。したがって合谷は、合は合う、谷は山間のくぼみ、山間のくぼみの閉じるところ、第一・第二中手骨の間の閉じる部すなわち上際にある穴の意味です。
主治症  発汗を当とする。風邪、間歇熱、脳充血、高血圧、咽喉炎、扁桃炎。


 
身柱穴(感染症や精神疾患に使用されます。)

位 置  第三・第四胸椎棘突起間。
穴名考  身柱は、身は身体、柱ははしら、身体の柱、脊柱を表す。臓腑の最上部の、支え柱に当たるところの穴の意味です。
主治症  脊髄炎、脊髄カリエス、喘息、肺炎、気管支炎、肺疾患、胸膜炎、精神病を主る。脳充血、高血圧。

天突穴(場所を意味する経穴です。)

位 置  胸骨の上のくぼみ。
穴名考  天は上で鎖骨より上を天の部という。突は急に出る。胸部より気管が、頚部に急にでてきているところ。胸骨柄の上部の気管の前にある穴の意味です。
主治症  咳止め・痰の症状一切に応用します。気管支炎、 喘息、呼吸器疾患、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、バセドウ病、嘔吐、食道痙攣、心疾患。

経穴の実証医学的研究

 東洋医学研究所®所長の黒野保三先生の論文「ダン中(CV17)への鍼刺激は心拍変動の心臓迷走神経成分を増加させるが、中庭(CV16)への刺激では増加しない」が、2011年1月6日、オートノミックニューロサイエンス誌に原著論文として掲載されました。この研究論文は、自律神経系機能を調節する経穴の特異性の存在に対する強い科学的根拠を与えている世界初の論文です。 
 また、黒野保三先生の論文「心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価 -腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価-」が、日本自律神経学会雑誌の自律神経49巻4号に原著論文として掲載されました。この研究論文は、腹部の経穴に鍼刺激(筋膜上圧刺激)を行うことによって心臓迷走神経の亢進を証明した世界で初めての論文になります。
 これら一連の研究の一つに、「心拍変動解析・胃電図による鍼刺激に対する自律神経反応の評価 -中カン穴への鍼刺激に対する自律神経反応の評価-」という研究があり、中カン穴への鍼刺激は、胃の活動には影響を与えないという結果が報告されています。
 このような研究結果をふまえて、黒野保三先生から、経穴の効果について古典文献から紹介することは、今後、慎重にしなければならないと教えて頂きました。
  このことは、古典文献などを単純に信用することの危険性を警鐘するとともに、今後の経穴の特異性に関する研究の重要性を示されたと思います。
 これまで、古典文献から調査した「経穴について」は、婦人科疾患、循環器疾患、消化器疾患、精神科疾患、泌尿器疾患、生体防御免疫疾患に使用される経穴を紹介させて頂きましたが、ここで一区切りとさせて頂きます。
 次回の私のコラム担当のときは、(公社)生体制御学会生体防御免疫疾患班の班長をさせて頂いている関係で、生体防御免疫疾患(アレルギー疾患や、風邪症候群、関節リウマチ、癌など、免疫の影響を強く受けると考えられる疾患)について分かり易くご紹介したいと考えております。是非、楽しみにしてください。


文 献 
・黒野保三.鍼灸医学概論〈改訂増補〉.エフエー出版.1996.
・黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
・Kurono, Y., Minagawa, M., Ishigami, T., Yamada, A., Kakamu,T,. Hayano,J., 2011. Acupuncture  to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical.161,116-120
・黒野保三,各務壽紀,皆川宗徳,石神龍代,山田篤,早野順一郎.心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価-腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価-.自律神経雑誌.2012;49(4):251-256
・竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
・日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

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