免疫力と機能性ヨーグルト 東洋医学研究所®グループ 海沼鍼灸院 院長 海沼 英祐

平成26年2月1日号

○はじめに
近年、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の効果について研究が進み、体に良い腸内細菌(善玉菌)を多く取り込んで腸内環境のバランスを変えて、善玉菌を優勢にさせることにより、生体の免疫力がアップすることが分かってきました。
今回は、健康志向で注目され、種類も様々に増えている機能性ヨーグルト(乳酸菌が「生きて腸に届いて健康効果を発揮する」タイプのヨーグルト)と免疫力について考えてみたいと思います。

○機能性ヨーグルトの効能
機能性ヨーグルトの乳酸菌は、腸内環境のバランスを変えて、体に良い菌(善玉菌)を優勢にしてくれます。その結果、機能性ヨーグルトに期待できる健康効果には、免疫力アップ(NK細胞の活性など)、様々なアレルギー疾患(花粉症やアトピー性皮膚炎)の抑制、便秘や下痢の改善、美容効果、大腸がんの予防、コレステロール値の抑制などがあげられます。
人の腸内細菌は3種類に分けられ、以下の働きがあります。
・善玉菌:乳酸菌、ビフィズス菌など
・悪玉菌:大腸菌、フラジリス菌など
・日和見菌:強い方につく性質があり、腸内環境が崩れると悪玉菌を手助けする一方、乳酸菌などを摂取して腸内の善玉菌が増えると、日和見菌も善玉菌へ味方する。
現在、国内で販売されている機能性ヨーグルトの乳酸菌としては、1073R-1乳酸菌、乳酸菌シロタ株、LB81乳酸菌、ビフィズス菌BE80、フェカリス菌、L-55乳酸菌、LGG乳酸菌、ビフィズス菌LKM512、ビフィズス菌BB536、ガセリ菌SP株などがあげられます。
それぞれの乳酸菌には特性があり、効能が異なります。しかし、これらの多くの乳酸菌はアレルギーの抑制や、がんの予防、NK細胞の活性など、免疫力アップと関係する効能のものが圧倒的に多いのです。
では、なぜ乳酸菌が免疫力アップに繋がるのでしょうか?

○機能性ヨーグルトと免疫力の関係
腸に存在する腸管免疫系は、人間の免疫系全体の約60%の免疫細胞や抗体から構成されています。その結果、腸内環境が人の免疫系の大部分を占める腸管免疫系と密接に関係してきます。
機能性ヨーグルトの効能でも述べましたが、善玉菌である開発された強い乳酸菌を体内に多く取り込むことで、腸内細菌の割合が善玉菌優勢となります。その結果、腸内環境が改善され、腸管免疫が本来の正常な機能を発揮できるようになります。また、乳酸菌の種類によっては免疫賦活作用がある物質を産生するものもあり、より免疫力が高まるという研究報告も出ています。
しかしながら、それらのヨーグルトを毎日のように食べていたのに風邪をひいてしまった、あるいはインフルエンザにかかってしまったという話も聞きます。
それは、機能性ヨーグルトが我々の免疫力を高めてくれる効果も確かにあるのですが、実際に免疫系を維持しているのは私たちの体であるということが理由です。免疫系の要になる免疫細胞や抗体を産生しているのは我々の体であって、その体が健康な状態を保っていなければ、いくら機能性ヨーグルトを毎日食べても免疫力アップは期待できないのです。つまりは、健康な体の状態で機能性ヨーグルトを食べることによって、はじめて免疫力アップが期待されるということなのです。

○おわりに
今回は、免疫力と機能性ヨーグルトについて考えてみました。機能性ヨーグルトの効能と、なぜ免疫力アップに繋がるのかを理解するとともに、それを食べる人の健康状態の必要性を知っていただけたらと思います。
東洋医学研究所®の黒野保三先生は、鍼治療が免疫力を増強させることについて早くから着目し研究され、いくつもの研究論文を書かれました。黒野先生の生体制御療法による、免疫力の向上、NK細胞の活性化、花粉症などのアレルギー症状改善の報告がなされています。
鍼治療での免疫力アップは、治療により心と体の安定した状態・充実した状態が得られるために起こります。      
元気な体は、強い免疫細胞を産生し、異物や外敵の侵入時には素早い免疫系の対応を可能にします。黒野先生の生体制御療法は、まさに体作りを考慮した治療法です。
そうした元気な体作りを行ったうえで、機能性ヨーグルトを食べれば、よりいっそう免疫力の向上が期待できるというものです。
 
参考文献
 ・はなまるマーケット「健康志向で大人気!ヨーグルト大研究」
            2012年3月8日O.A
 ・安保徹 安保徹の免疫学講義 三和書籍 2010 
 ・黒野保三 長生き健康「鍼」 現代書林 2008 
 ・黒野保三 鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅰ~Ⅵ)  
全日本鍼灸学会雑誌 1980~1986