糖尿病通信19 高齢者糖尿病の治療目標

○超高齢社会です
みなさんご存知のように、高齢者の方が増加し続けていますので、高齢者の糖尿病も増加しています。
高齢者は心身機能の個人差がとても大きく、糖尿病が加わると重症の低血糖を起こしやすく、血糖コントロールが厳格だと認知症になりやすいという問題点があります。
2013年に、「6.0%未満、7.0%未満、8.0%未満」というHbA1c3段階の血糖コントロール目標「熊本宣言」を定めていますが、心身機能の個人差が大きい高齢者に一律に当てはめることには問題があるということです。

そこで、高齢者糖尿病向けの血糖コントロール目標が今年の5月に発表されました、というのが今回のお話です。

○高齢者糖尿病の血糖コントロール目標
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は2016年5月20日に「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c)」を発表しました。
 
詳しい内容は図を見て頂くとして、今回の目標から読み取れる意味は、「心身機能の個人差が大きい高齢者個々に対して、より柔軟に対応するようにして、高齢者糖尿病の治療の質を高めましょう。」ということです。
是非、参考にして下さい。


 
注1:認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など)、手段的ADL(IADL:買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など)の評価に関しては、 日本老年医学会のホームページ ( http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/ ) を参照する。エンドオブライフの状態では、著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する。

注2:高齢者糖尿病においても、合併症予防のための目標は7.0%未満である。ただし、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法の副作用がなく達成可能な場合の目標を6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする。下限を設けない。カテゴリーIIIに該当する状態で、多剤併用による有害作用が懸念される場合や、重篤な併存疾患を有し、社会的サポートが乏しい場合などには、8.5%未満を目標とすることも許容される。

注3:糖尿病罹病期間も考慮し、合併症発症・進展阻止が優先される場合には、重症低血糖を予防する対策を講じつつ、個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい。 65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり、かつ血糖コントロール状態が図の目標や下限を下回る場合には、基本的に現状を維持するが、重症低血糖に十分注意する。グリニド薬は、種類・使用量・血糖値等を勘案し、重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある。

一般社団法人日本糖尿病学会より

 (文責:山田 篤)