動脈硬化と血管内皮機能(FMD)検査 東洋医学研究所®グループ 伸誠鍼灸院 院長 加納 俊弘 平成28年12月1日号

はじめに
現在の動脈硬化のリスク因子(死の四重奏)は、1.上半身肥満(内臓肥満)、2.耐糖能異常(糖尿病)、3.高中性脂肪血症、4.高血圧と言われています。
これらのリスク因子を持った患者さんは循環器医師の適切な診断と治療が必要なのは言うまでもなく、何よりも食事と運動が大切であり、ご自身で実践されている方もお見えになると思います。
その効果の判定には定期的な採血による生化学的検査が主なものでありますが、患者さんからはなかなか実感に乏しいものでもあるのではないでしょうか?
今回ご紹介する血管内皮機能検査は非侵襲的(生体を傷つけないような )であり、精神的、身体的及び経済的負担が少なく、深い知識がなくとも自分の血管機能評価を知ることができ、患者さん自身の努力目標にもなると思います。

血管内皮機能(FMD)検査(早期発見、早期治療に有用)
FMDとはFlow Mediated Dilationの略で「血流依存性血管拡張反応」といい血管内皮機能評価の検査として近年注目されています。動脈硬化は血管内皮機能障害から引き起こされると言われており、FMD検査は動脈硬化が引き起こす様々な疾患に対する早期発見・早期治療に有用です。

血管内皮機能(FMD)検査の概要
超音波装置を用いて上腕動脈を描出し,安静時の上腕動脈血管径を測定する。
安静時血管径の測定後、前腕部をマンシェットにて5 分間駆血する(動脈血流を完全遮断するため、通常カフは収縮期血圧プラス30~50 mmHg 以上の圧にて加圧・維持する)。阻血状態から動脈血流を開放することによって血流の増加が短時間のうちに上腕動脈で生じ(反応性充血)血管内皮へのずり応力(血液が血管内皮上を移動するときにかかる抵抗力:shear stress)が増大する。
その結果、NO (一酸化窒素)に代表される血管拡張物質が血管内皮から放出され、血管平滑筋細胞に作用することによって上腕動脈拡張が生じる)。

FMD は安静時血管径に対する最大拡張血管径(通常,阻血解放後おおむね60 秒前後)の比率であり、下記の式で表される。

正常値の目安は6%以上で、5%未満で血管内皮障害が疑われます。

血管内皮機能低下は動脈硬化の初期病変とされ、FMDは形態的な血管障害の変化が生じる以前の機能的な障害ととらえることが可能です。現在まで、喫煙、高血圧、脂質異常症など古典的な動脈硬化危険因子を有する患者さんは、血管内皮機能が低下していることが報告されています。フラミンガム研究では、とくに加齢、肥満、喫煙、血圧がFMD 障害と相関する因子としてあげられており、日本人健常者における検討でも同様の結果が得られています。
以上からFMD検査は動脈硬化初期段階の病態を比較的鋭敏に反映する検査と考えられています。
今までの多くの研究で、薬剤や食物摂取、運動などの生活習慣の改善によりFMD が改善することが報告されています。冠動脈疾患症例、高血圧症例で治療に伴うFMD 改善例は非改善例に比べて予後が良好であることが報告されており、単なるFMD の絶対値よりもFMDの改善に重要な意味があり、心血管イベントと関連している可能性があります。また、最近のメタ解析ではFMDが1 %改善することで心血管イベント発症リスクを13 %低下させることが報告されています。

おわりに
今回ご紹介したFMD検査は徐々に普及されつつあり、この検査を一つの指標とした患者さん自身の努力目標の評価に用いられてはいかがでしょうか。

引用参考文献
・ユネクス:http://unex.co.jp
・島根大学医学部附属病院バスキュラ・ラボ総合医療学講座内バスキュラ・ラボ:http://www.med.shimane-u.ac.jp/hospital/Vascular.Lab/
・血管体力:http://kekkantairyoku.jp/index.html 
・血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン:Guidelines for non-invasive vascular function test (JCS 2013)