(公社)生体制御学会第283回定例講習会に参加してきました

平成29年2月5日(日)(公社)生体制御学会第283回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

(公社)生体制御学会第283回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)

9:30~10:20 神経科学の基礎7 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「感覚神経1」      
愛知医科大学医学部生理学講座教授
岩瀬  敏 先生

今日は感覚の生理学について講義していただきました。
「嗅覚や味覚は古くからの感覚で、食べられるかどうか、新たな食料源なのか、毒なのかを見分けるという重要な役割をもちます。嗅覚と味覚の最大の違いは、嗅覚は離れたところでも感じることができ、味覚は接触しないと感じることができません。 
味覚には辛味、甘味、酸味、塩味の4つが古くからあり、最近では2000年に新たにマイアミ大学のニルパ・チャウダリ先生により旨味の感覚が発見されました。旨味とは、昆布やかつおぶしなどのイノシン酸や味の素などのグルタミン酸の味になります。
舌の神経支配は前3分の2は三叉神経の第Ⅲ枝である舌神経であり、後3分の1は舌咽神経になります。舌の運動は舌下神経になります。
視覚はレンズが厚くなることで瞳孔が収縮し、近くを見ることができます。逆にレンズを薄くすることで瞳孔が散大し、遠くを見ることができます。視野は普通約150度となります。
視細胞には桿細胞と錐体細胞があり、錐体細胞はRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色を感知します。桿細胞は色を感知しませんが、暗い場所に行っても白黒でわかるのは桿細胞の働きで、白黒ではありますが、感度が良く、錐体細胞は色がわかりますが、感度は悪いという特徴があります。
暗順応という現象は、明るい場所から真っ暗な場所に一気に移動したときに、暗い場所に順応する能力で、暗い場所の周りが見えるまで20分から30分かかります。
なぜ、目は2つあるのでしょうか。2つの目で見ることで立体的に物が見えると考えられています。2つ目があるからといって、5歳以下の小さいときに眼帯をしてしまうと、眼帯をした方が見る力が弱くなる弱視になってしまうことがわかっているので気をつけてください」というお話しがありました。

10:30~12:00 
神経科学の基礎8
「感覚神経2」      
愛知医科大学医学部生理学講座教授
岩瀬  敏 先生

2時間目は主に聴覚について講義していただきました。
「音には音の三要素というのがあり、大きさ、高さ、音色で成り立っています。大きさはHz(ヘルツ)、高さは㏈(デシベル)であらわします。0㏈は人間の聞き取れる最小音と言われており、静かな事務所が50㏈、普通の会話が60㏈、自動車の警笛(2m地点)が110㏈、耳近くのサイレン音が130㏈であり、110㏈以上だと不快感を感じ、140㏈以上で音が痛みに変わります。 
外耳の耳介は音を集める機能と共に、最近ではメガネをかける、マスクをするためにも使われています。中耳は外界と中耳の気圧が異なるとツーンとした感覚があり、飛行機の上昇中や潜水の時などにおこります。
蝸牛は鼓室階、中心階、前庭階の3つの階から成ります。鼓室階と前庭階は外リンパで満たされており、カリウムが多いという特徴があり、中心階は内リンパで満たされており、ナトリウムが多いという特徴があります。 
前庭感覚は生体が運動している時や重力に対して傾いた状態にあるときにそれを察知する状態をいい、平衡知覚ともいいます。半規管では頭部の回転速度、耳石では頭部の直線加速度を知覚します。」とお話ししていただきました。

13:00~13:50  
循環器疾患の基礎・臨床、診断と治療
「脈波について」
(公社)生体制御学会研究部循環器疾患班副班長
加納 俊弘 先生
 
今回は「脈波について」と題し、脈波のグラフの説明、中心血圧、そしてAI(augmentation index)についてスライドを用いて詳細に説明していただきました。
中心血圧の指標としてAI値があり、これは動脈圧波形から大動脈圧波形への算術的変換を行って表されます。心臓の肥大や冠動脈疾患、腎障害などはいずれもAIならびに中心血圧が高いほど発症リスクや進行度が高くなるということを話していただきました。また、末梢の橈骨脈波は脈差診や脈状診を診るうえで脈波の成分や生理学的意義を知っておくことは重要なことであるということを話していただきました。

 

14:00~14:50 婦人科疾患に対する症例報告及び症例検討
「不定愁訴を伴う不妊症に対する鍼治療の一症例
―妊娠から出産まで経過を観察できた症例―」
臨床鍼灸医学研究会会員 

河瀬 美之 先生

「不定愁訴を伴う不妊症に対する鍼治療の一症例 ‐妊娠から出産まで経過を観察できた症例‐」と題して、結婚後4年間子供を授からなかった女性が、鍼治療により、妊娠に至り、妊娠中のつわりや逆子も鍼治療で改善し無事出産。その後も2人の子宝に恵まれた症例についてスライドを用いて詳細な報告がありました。

15:00~16:00 鍼灸学校学生向け企画 婦人科疾患の基礎と臨床
「各論3 妊娠・出産と鍼灸治療」
明生鍼灸院副院長
(公社)生体制御学会会員  
木津 正義 先生

今回は流産、妊娠高血圧症候群について講義していただきました。
「流産とは妊娠22週未満におこる妊娠中絶のことを言い、9割は12週までにおこります。頻度は30歳未満で8~15%、35歳で20%、40歳で35%流産率があります。
妊娠初期の流産は染色体異常であり、悲しい話ですが、妊娠した時に流産することが決まっています。鍼灸治療では妊娠初期に治療することもありますが、きちんと鍼灸治療は流産率をあげることはないことを説明することが大切です。
その根拠として、オーストラリアで妊娠14週以内の583例で鍼灸治療をしたグループとしていないグループの流産率をみたところ、鍼灸治療をしても流産率は上がらない研究があります。
また、中国では100例において鍼灸治療をしても流産率は上がらなかった研究があり、明生鍼灸院においても妊娠初期600例以上で流産率をみたところ、鍼灸治療をしていない一般の流産率と変わりはなかったという調査をしました。
これらのことから鍼灸治療をしても流産率は上がらないことがわかると思います。
妊娠高血圧症候群は10年前まで妊娠中毒症と呼ばれていました。妊娠20週以降から産後12週までに収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上が妊娠高血圧症候群になります。
妊娠高血圧症候群の合併症は脳出血、肺水腫、常位胎盤早期剥離などがあるので、鍼灸院に来院した妊婦の患者さんには血圧を測り、高血圧になっていないかを見て、病院と連携していくことが大切です」というお話しがありました。

このマークのついている先生は東洋医学研究所®グループに所属しています。