顔面神経麻痺通信5 ラムゼイハント症候群について

ラムゼイハント症候群は、James Ramsay Huntが1907年に自験例をまとめて報告したことに由来します。
 


 

人口10万人当たりの年間発症数は2~3人といわれています。性差はなく、年齢別発症率は、20 歳代と50 歳代の2峰性のピークを示します。ハント症候群は5月と8月が少なく、3~4 月、6~7月に発症が増加します。ハント症候群の場合、自然経過のなかで顔面神経麻痺が完全に治癒するのは50~60%と報告され、ベル麻痺の自然治癒率に比べて治りにくいと言われています。
ハント症候群は、脳神経の神経節に、以前に感染(潜伏感染)していた水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうのウイルス:VZV)が、再活性することによって発症します。
症状としては、顔面神経麻痺に伴って、耳の穴や耳介周囲に帯状疱疹による水ぶくれができたり、強い耳の痛み、耳鳴、難聴、めまいなどが起こったりするのが特徴です。個々の症例では、これらの症状のいくつかが組み合わさって出現します。
鍼灸院に来院される末梢性顔面神経麻痺の患者はほとんどがベル麻痺かハント症候群です。そして、ハント症候群の方がベル麻痺と比べて予後が悪いことから、発症機序の違いからその鑑別について正しく理解していることは非常に重要です。
東洋医学研究所Ⓡグループでは、耳介・外耳道、頚部、舌、口腔粘膜の観察と、聴力検査や平衡機能検査、ウイルス抗体価測定(ベル麻痺を発症する単純ヘルペス1型、ハント症候群を発症する水痘帯状疱疹ウイルスの測定)などの結果を問診することにより、正確な鑑別ができるよう勉強しています。
是非、安心してご相談下さい。

           (文責 井島 晴彦)