お知らせ(公社)生体制御学会第296回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました

令和元年7月7日(日)(公社)生体制御学会第296回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

(公社)生体制御学会第296回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)

9:30~10:20
自律神経機能評価  (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
名古屋共立病院統括部長リハビリ室室長
森山 義文 先生

今日は運動と自律神経について御講義頂きました。
「透析患者は自律神経障害を合併しやすいです。例えば、透析中に急激な血圧の低下をきたすことがありますが、これは自律神経障害による血管収縮異常に起因します。透析患者の死亡率は透析導入後5年で60%、10年36%、その中の死因の第一位は心不全で24.9%になります。いい運動を行うことで、自律神経活動を改善することがわかってきています。
 実際にどんな運動がよいのかというと、まずは散歩がお勧めになります。運動の強度は有酸素運動から無酸素運動になる直前の強度がよく、これを無酸素性作業閾値といいます。この無酸素性作業閾値は(220‐年齢)×0.6=心拍数、例えば50歳の人は(220‐50)×0.6=102が運動時の理想的な心拍数の目安になります。運動時間は1日合計で30分、運動頻度は2日に1回が理想的です。運動をした後、5日はその効果が残り、それ以上だとほぼ0になると言われているので、5日に1回が最低ラインになります。」と御講義頂きました。

10:30~12:00
基礎生理学 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座 
愛知医科大学医学部生理学講座教授
岩瀬 敏 先生

今日は脳の機能について御講義頂きました。
「脳領域の研究については、20世紀前半のブロードマン脳地図が有名で、大脳皮質を52に分類しています。脳の機能について、飛躍的な進歩がみられたのは、昭和50年代にイギリスのEMIという会社が開発したCTスキャンでした。
頭頂葉、後頭葉、側頭葉はインプット、情報を処理する機能を主に司っています。アウトプットは前頭葉であり、情報を発信する機能を主に司っているという特徴があります。
眼優位性とは、片眼を遮蔽されたことによって弱視を生じた動物では、眼は正常なのに脳の機能異常のために物が見えなくなっていることです。このことで気をつけないといけないのは、小児期に眼帯をしてしまうと、眼は正常なのに脳が認識しない現象が起きてしまうことがあるので、やらない方がいいということです。
フィネアス・ゲージは、事故で脳の前頭前野に障害をもってしまいました。すると、意思決定や感情の調節ができなくなり、周りからは事故以前の誠実なゲージ氏とはまるで違う人になってしまったと言われたそうです。前頭前野は人間を人間らしくする機能を司っていることがわかっています。」と御講義頂きました。

13:00~13:50  
心臓リハビリテーションに対する基礎・臨床(1)
「多職種で挑む心臓リハビリテーション」
名古屋ハートセンターリハビリテーション部理学療法士主任
柴田 賢一 先生

今回は「多職種で挑む心臓リハビリテーション」と題して御講義頂きました。
「心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、快適で活動的な生活を実現することを目指し、個々の患者の医学的評価・運動療法・危険因子是正・患者教育及びカウンセリング・最適薬物治療を他職チームが協調して実践することであります。
心臓リハビリの対象疾患としては狭心症や急性心筋梗塞、開心術後や慢性の心不全、カテーテル大動脈弁留置術後などです。
歴史としましては、1930年代には心筋梗塞発症後8週間はベッド上の安静が提唱されていましたが、1950年代には座位での訓練が介入され、1960年代には早期離床・退院の概念が定着してきました。
我々は、例えば冠動脈バイパス術後、1日目に座位や立位でのリハビリを開始します。ラインやコード類が挿入されているため、循環動態に注意しながらのリハビリになります。
手術後2日目には不整脈や心臓の痛みに気をつけながら100メートル歩く歩行練習に入ります。
手術後3日目からリハビリ室での運動療法に入ります。点滴や酸素が外れる時期の為、痛みや不整脈に気を付けながらの歩行や自転車こぎです。心エコー検査やカテーテル検査を行い、状態を確認していきます。
運動の構成要素としては
1)運動の種類
2)運動強度
3)運動の継続時間
4)運動の頻度
であり、各指標をもとに患者と話し合いながら運動を習慣化していくことを目標にしながら、病態の悪化や意欲の低下、転倒などによる外傷に気を付けながら、心臓リハビリテーションからの卒業を目指し頑張っています」ということを、スライドを用いて詳細に御講義頂きました。

14:00~14:50 生活習慣病に対する症例報告及び症例検討
生活習慣病に対する症例報告・検討
「糖尿病と経絡治療」 経絡治療学会東海支部
菊池 達矢 先生

今回は「古典文献における糖尿病と経絡治療的病態像」と題して、糖尿病について詳しく説明があった後、蜂窩織炎の鍼治療で糖尿病を疑った一症例について、東洋医学的な視点から臨床の経験を踏まえてお話して頂きました

15:00~16:30 名古屋市立大学睡眠医療センター認定 睡眠育成士認定講座(1)
「睡眠の基礎と臨床」
「睡眠医療とは」 名古屋市立大学睡眠医療センター センター長
中山 明峰 先生
「睡眠検査とは」 名古屋市立大学睡眠医療センター 臨床検査技師
安東カヨコ バールドワジ 先生

今回は、睡眠医療についてと睡眠の検査についてご講義頂きました。
中山明峰先生には「今回、大勢の方の第2期睡眠育成士の応募があり嬉しく思っています。この講座は一般市民にも公開して小学校などの教育施設より睡眠教育の要請があった際には積極的に応じていく事を目的としています。

現在、名古屋には14万人の小中学生がいます。先日、学校から要請があり、睡眠育成士第1期生の方が小学校へ行き、講義して頂いたことがテレビで放送されました。小学生のうちに正しい睡眠について知ってもらうことと、睡眠のリズムの狂いから不登校になってしまう児童が出てくる懸念があることから、少しでも子供たちに寝る大事さを伝えたいのです。 
とはいえ正常の睡眠とは何なのか、睡眠の正常値って何だろうと言ってもなかなか答えられるものではありません。まずは睡眠にとって大きな問題である「睡眠時無呼吸症候群」と「不眠症」、この二つを把握してください。そこから知識を増やしていただければと思います。
この講義を受けられる皆さんは、皆さんの中で睡眠に対する思いがあると思います。皆様方には正しい指導、アドバイスができるようにしっかりと勉強していただき、眠育成士として正しい情報を大いに世間に伝えてほしい、そして良い社会現象として形になればと思っています。」とお話頂きました。
 
そして安藤先生の講義では「睡眠障害の患者さんの主訴は、いびきや昼間の異常な眠気、寝ている時に呼吸が止まるなどの『睡眠時無呼吸症候群』や、なかなか寝付けない夜中に何度もトイレに行く、朝早く(3時や4時)目が覚める、朝すっきり起きれず寝た気がしないなどの『不眠症』があります。他に睡眠医療センターで診断される主な睡眠疾患としてむずむず脚症候群や、急に眠気に襲われるナルコレプシー、突発性過眠症などがあります。特に多くみられる疾患である睡眠時無呼吸症候群の診断には高血圧や糖尿病などの合併症があり、睡眠検査が必須です。 
そして睡眠の検査法であるポリソムノグラフィー検査(PSG)は、睡眠中の脳と体(主に呼吸と下肢の動き)の生理的現象を記録します。特に睡眠時無呼吸症候群を防止するために、脳波だけではなく睡眠中の呼吸にも注目されるようになりました。
もっと簡便な検査法として、検査施設外睡眠検査(OCST)があり、慣れた自宅での検査が可能であります。価格も安価であるものの脳波記録がないため詳細に見ることができない欠点があり、アメリカを中心に再度検討がなされています。」と御講義頂きました。

中山 明峰 先生
 
安東カヨコ バールドワジ 先生