強く、元気な骨をつくろう ~骨は生まれ変わる~ 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長 田中 良和 令和3年11月1日号

はじめに
私は施術の際、立つ姿勢についてのアドバイスすることが多くあります。その方法の最初は、まず足の裏を意識していただくことです。踵(かかと)の中央と母趾球(足の親指の付け根)、小趾球(足の小指の付け根)を認識しながら、踵を中心に立つ姿勢です。いわゆる"骨で立つ"ことを意識していただきます。その理由は、スムーズな身体の重心移動(歩行)を行うため、下肢等の筋肉や腱に余分な力を加重しないことが理由です。

大切な骨について
人の身体は使わないと衰えていきます。これは皆様よく理解されていることと思います。「最近、筋肉が落ちた」「歩くと息があがる」など、目に見えたり、感覚として自覚できる部分は、身体の衰えを実感できます。
では骨の衰えは自覚できるかといいますと、見ることができませんし、骨密度の検査等を行わないと捉えることができません。ですが骨も筋肉などと同様、身体を動かすこと(運動)により適度な刺激を与えないと衰えが加速していきます。もちろん骨の構成成分となる栄養の吸収(食事)も重要になることは論を待たないところです。
骨の主成分は、リン酸カルシウムとタンパク質です。骨の中の無機質(主にカルシウムとリン)の量を「骨量(骨塩量)」といい、単位面積内の骨量を「骨密度」といいます。

骨は身体を支える柱の役割をしています。骨あっての脊椎動物であり、骨があるから人間は多彩なメリハリのある動きが可能となります。人体にある約200個の骨は身体の成長とともに、大きく、強くなり、骨折をしても再生します。成長期が終了しても、骨は他の細胞と同様に活発に新陳代謝(骨リモデリング)を繰り返し、質と量を維持しています。骨は約10年~20年で生まれ変わる組織なのです。このバランスが崩れると骨粗鬆症などの骨の疾患を起こします。

骨の新陳代謝(骨リモデリング)は緻密に行われている
骨には大きく分けると「骨細胞」と老化や壊れた骨細胞を吸収に導く「破骨細胞」、その後、新しい骨細胞形成に働く「骨芽細胞」の三つがあります。この三つの細胞と、その機能を結びつけているタンパク質がシグナルとなり、その人の生活習慣に応じた骨の新陳代謝が行われていることが分かってきています。
骨の代謝は、骨細胞から放出されたタンパク質がシグナルとなって、破骨前駆細胞へ働きかけて成熟した破骨細胞へと変身させ、骨細胞吸収が始まります。破骨細胞からは骨芽細胞の働きを抑えるタンパク質が放出される一方で、骨吸収を進めながら骨芽細胞の表面にシグナルを送るタンパク質が放出され、骨吸収から骨形成(増殖)へスムーズに移行するように促されます。骨吸収が終了し骨形成のフェーズに入ると、骨芽細胞からも骨形成を行いながらタンパク質が放出されます。このタンパク質は骨吸収と骨形成の両者を調整する働きを担っています。
このように骨の代謝が行われ、皆様が知らないうちに古い骨から新しい骨へと造りかえられています。
近年、骨は、中心部の骨髄での血液や免疫細胞の造成、カルシウムやリン酸の蓄積、身体の屋台骨としての機械的作用の他に、骨細胞から分泌されるタンパク質が腎臓の制御に重要な役割を果たすこと、免疫系の制御とも密接に関わっていることなど、身体全身の制御に関わっていることが明らかになってきています。

おわりに
人の身体の機能や構造は緻密に精巧にできています。新陳代謝は、自然に自律的に粛々と行われ、現在の自分の身体を維持しています。
骨の機能をみてもそう感じます。その自然に修復・調整される身体の機能の中で、私たちができることは、運動や食事などの生活習慣を整えること「養生」です。
鍼灸治療で動きやすい身体づくりを行うと共に、健康管理のお手伝いをさせていただきながら、積極的に運動を生活の中に取入れ、強く、元気な骨をつくっていきましょう!

参考文献
・高柳 広:特集1「骨と免疫の新しい夜明け」 JSTnews June2012 
・本間 雅ほか:骨リモデリングにおけるLANKLの役割(ミニレビュー).生化学.第91巻4号.2019