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コラム

2019年5月 1日 水曜日

認知症の基礎知識 東洋医学研究所®グループ  ことぶき鍼灸院 院長 秋田 壽紀 令和元年5月1日号

はじめに
超高齢社会となっている現在の日本ですが、総人口に占める高齢者人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降一貫して上昇が続いており、1985年に10%、2005年に20%を超え、2018年には28.1%となりました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。
このように急速な超高齢化に直面している日本において、認知症患者の人数も増加しており、2012年には462万人でしたが、2025年には700万人を超えると予測されています。
治療院で、高齢の患者様と接する機会が良くありますが、自分が認知症になるのではないか、最近物忘れをするようになったから認知症になっているのではないかという心配の声をよく聞きます。加齢による物忘れと認知症による初期の記憶障害は区別が難しいので、心配になってしまうのは仕方がないでしょう。しかし、認知症に対する知識を身につけることである程度、区別することができ、認知症の早期発見にもつながります。また、早めに対処することで、認知症の進行を遅くすることもできるため、知識を身につけておくことは大切です。
そこで今回は、認知症の基礎知識、特に認知症の症状について説明していきます。

認知症とは
「認知症」は、病名ではなく、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたために、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことを示す言葉です。認知症と言えば記憶障害のイメージが強いと思いますが、認知症では記憶だけでなく、認知機能全体が障害されるため社会生活に支障をきたしてしまいます。
認知症の原因となる病気には様々なものがありますが、もっとも割合の高い病気は、脳の神経細胞が通常よりも速いスピードで減少し、脳が委縮してしまうアルツハイマー型認知症で、全体の67%を占めるとされています。次いで、脳の血管が詰まったり、出血したりすることで脳が障害される脳血管型認知症が19%、レビー小体という異常なたんぱく質が脳に現れ、神経細胞が減少するレビー小体型認知症が5%という割合になっています。原因となる疾患によって認知症の症状は変わってきますが、認知機能が低下するという点は共通しています。

認知機能とは
認知機能とは、理解、判断、論理などの知的機能のことを言い、五感(視る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう)を通じて外部から入ってきた情報から、
・物事や自分の置かれている状況を認識する
・言葉を自由にあやつる
・計算する、学習する
・何かを記憶する
・問題解決のために深く考える
などといった、人の知的機能を総称した概念です。 
認知症ではなくても加齢によって認知機能は変化します。加齢の影響は認知機能を構成するそれぞれの要素によっても異なります。教育や学習などの社会文化的経験によって発達した能力は、高齢になっても比較的良く保たれます。高齢になっても活躍をする芸術家、文芸家、政治家、組織や企業の指導者などは、世の中にたくさんいます。それに対し、新しい環境に適応するために問題を解決していく能力は、加齢に伴ってその機能が低下することが知られています。また、脳内での処理速度が加齢に伴って遅くなっていくため、課題を遂行するのが総じて遅くなっていき、瞬時の反応や判断というものは苦手になっていきます。
 
認知症の症状
このような認知機能が生活に支障が出るレベルまで低下した状態が認知症と言われますが、主な症状として「記憶障害」「見当識障害」「失語」「失行」「失認」「遂行機能障害」の6つがあります。

・記憶障害
記憶には、記銘(まず何かを覚えること)、保持(覚えた記憶を情報として維持すること)、想起(維持している情報を思い出すこと)の3つの流れがあります。誰でも、若い時から物忘れをすることがありますが、通常の物忘れでは「想起」が問題となっている場合が多いと考えられています。加齢による物忘れも同様です。ですから、思い出すきっかけやヒントがあれば思い出すことができます。また、買い物や外出した時に、何を買ったか、何があったかという出来事の一部を忘れてしまうことはありますが、出かけたこと自体を忘れてしまうことはありません。
一方、認知症の記憶障害では、はじめの「記銘」が問題となります。ですから、ヒントなどを出しても、記憶の記銘自体ができていないので、思い出すことはできません。また、出来事自体を忘れてしまったり、忘れているということを自覚できていない場合があります。そのため、話をしていてもつじつまが合わないことや、何度も同じ話を繰り返す、話の脈絡をすぐ失うということが多くなってきます。また、物を無くしやすくなり、盗まれたと勘違いしてしまうこともあります。新しいことは覚えられませんが、昔から覚えていることや、楽器や裁縫、家事などの手続き記憶といわれるものは比較的保たれるのも特徴です。
加齢による物忘れと、認知症の記憶障害とを区別するポイントは、物忘れをしている自覚があるかどうか、日常生活に支障があるかどうか、ヒントやきっかけがあれば思い出せるかどうかという点になります。認知症であると気が付くきっかけはこの記憶障害であることが多いので、注意するポイントになります。

・見当識障害
見当識とは、自分が置かれている状況、例えば年月日、時間、季節、場所、人物などの状況を正しく認識する能力です。見当識に障害が起きると、今日は何月何日か、今が何時か、今自分がどこにいるのか、誰と話をしているかなどが正確に認識出来なくなります。
そのため、遅刻をする、外出の準備ができない、慣れている道でも道順がわからなくなる、トイレの場所が分からなくなるなどの症状があらわれます。

・失語
失語とは話をできる機能は保たれていても、会話ができない状態のことです。失語には運動性失語という「聞いた言葉は理解できるが話せない」ものと、感覚性失語という「話はできるが言い間違いが多かったり話の内容が理解できていない」というものの、2種類があります。

・失行
失行とは、運動障害が見られないにもかかわらず、日常生活で普通に行っている行動ができなくなることです。例えば、ネクタイが結べなくなる、着替えができなくなる、うがいができなくなると言った日常動作ができなくなります。

・失認
失認とは、目や耳などの異常はみられないが、物体を認識できない、周りの状況を理解することができなくなることです。例えば、普段歩き慣れている道が分からなくなる、道具の使い方が分からなくなる、赤信号を見ても止まらない、などの症状があらわれます。

・遂行機能障害
遂行機能障害とは、計画を立てて物事を行うことができなくなることです。例えば、料理をするときには、まず、作る料理を決めて、同時進行で野菜を切ったり、お湯を沸かしたり、調味料を適量で使ったりと様々な作業を計画的に行う必要があります。それができなくなるので、料理を作れても時間がかかるようになってしまったり、味が変わってしまったりします。また、何か問題が起きたときにはうまく対処できなくなってしまいます。

このような、認知機能の低下による症状を認知症の「中核症状」と言います。
一方、中核症状によって引き起こされる二次的な症状を「行動・心理症状」や「周辺症状」と言います。中核症状が元となって、行動や心理症状に現れるもので、本人の性格や環境、心理状態によって出現するため、人それぞれ個人差があります。
例えば、認知症になり、様々な認知機能が落ちてくると、日常生活に支障が出てきます。できないことが増えることから、気分が落ち込む(抑うつ)状態が見られることがあります。この抑うつや不安が行動・心理症状の一つで、比較的初期から多くの人に見られる症状です。意欲の低下や不眠、食欲が落ちたり何事にも興味を示さなくなるなどの症状もあらわれるので、うつ病とも誤解されがちですが、認知症の行動・心理症状としてのうつ状態です。うつ病が悲観的なのに対し、認知症によるうつ状態は無関心が多いと言われています。
行動・心理症状の行動症状として睡眠障害や徘徊、介助への拒絶、異食・過食、徘徊、暴力、不潔行為などがあり、精神症状として不安、抑うつ、怒りっぽくなる、意欲の低下、妄想、妄言、幻覚などがあります。多岐にわたる症状で、介護者にとっても大きな負担になります。しかし、行動・心理症状は本人の心の表現であり、このような症状があらわれるのはそれだけストレスがかかっているという証拠でもあります。環境や対応を変え、本人の負担を軽減することで、行動・心理症状が改善するということもあります。

おわりに
今回は、認知症の基礎知識として、認知症の症状について説明してきました。通常の加齢による変化と認知症による変化を見極め、早めに対処することで認知症の進行を遅くすることもできます。しかし、最も大切なのは、認知症にならないように予防をするということです。認知症には、睡眠や運動、食生活などの生活習慣が大きく影響を与えます。また、糖尿病や、高血圧などの生活習慣病も認知症のリスクになることが分かっています。
鍼治療は、これらの生活習慣病に対して効果があることを示しています。また、鍼治療は認知症の認知機能の低下に対して効果があるという研究も報告されています。ですから、生活習慣の改善とともに是非、鍼治療を取り入れて、認知症の予防をしていきましょう。

引用・参考文献
・総務省統計局 統計トピックスNo.113 統計からみた我が国の高齢者
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1130.html
・認知症施策の現状 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000...Soumuka/0000069443.pdf
・デール・プレデセン:アルツハイマー病 真実と終焉. ソシム.2018 
・池上晴之:NHK今日の健康大百科NHK出版.2010
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008
・Bai-Yun Zeng.Effect and Mechanism ofAcupuncture on Alzheimer'sDisease. International Review of Neurobiology;Volume 111.181-93.2013
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2019年4月 1日 月曜日

女性の美と健康に関わる女性ホルモン 東洋医学研究所®グループ  たかやま鍼灸院 院長 高山 加奈子 平成31年4月1日号

40代以降の女性が感じる心身の変化には、女性ホルモンが大きく関係しています。女性の健康に大きく関わる重要なホルモンですが、実はよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は女性ホルモンの役割について確認したいと思います。

女性のリズムに関係する女性ホルモン
ホルモンは体内で分泌される物質で様々な器官や組織をコントロールしています。その中で、女性特有の体つきや体のリズムに大きな影響を与えるのが女性ホルモンです。女性ホルモンは脳の中心部にある脳下垂体の命令で分泌されています。命令を受けた卵巣が女性ホルモンを作り、分泌します。分泌されたホルモンは血管から血液に入り、全身を巡り、からだを調整します。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。

女性らしさに関わるエストロゲン(卵胞ホルモン) 
妊娠に不可欠な卵胞を受精卵へと成長させるために必要なホルモンです。また、骨の密度を保つ作用や、血管を強くして動脈硬化を防ぐ役割があります。その他に、血圧やコレステロールをコントロールする作用もあります。女性の健康はエストロゲンによって守られていると言えます。また、エストロゲンは女性特有の丸みを帯びた体をつくり、肌や髪の潤いを守ってくれます。女性らしさを引き出すホルモンなのです。

妊娠をつかさどるプロゲステロン(黄体ホルモン)
プロゲステロンは受精卵の着床のために子宮内膜を整えたり、基礎体温を上昇させたりする働きがあり、妊娠を維持するために働きます。体内に水分を保つ作用があるため、体がむくんだりします。腰痛や腹痛、イライラなど、生理前に体に変化が現れるのは、プロゲステロンの影響だと言われています。
※2つの女性ホルモンは、月経と連動し、約28日の周期でそれぞれの分泌量のバランスを変化させます。女性の体と心の変化は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量バランスが変化したときに現れます。

年齢と共に減少する女性ホルモン
女性が一生のうちに分泌する女性ホルモンの量は、なんとティースプーン1杯ほどです。
このわずかな量によって、女性の美と健康は保たれているのです。
しかし、女性ホルモンは年齢と共に減少していきます。女性ホルモンの分泌量のピークは20代後半から30代前半。30代後半になるとその分泌量は徐々に低下を始めます。閉経前後の45~55歳には激減していきます。50代後半になると、卵巣はわずかな女性ホルモンしか分泌しません。卵巣の働きが止まったら、女性ホルモンは分泌されないのです。(図1)


図1

女性ホルモンが分泌される目的は、妊娠して胎児を体内で育てるためですから、年齢とともに減ってくるのは仕方のないことです。しかし、女性ホルモンのサポートを受けられなくなった時に自分の体に何が起きてくるのかということについて考え、対処していくことが必要です。これから先の健康についても考えてみましょう。 

卵巣を元気にしよう!
卵巣が元気に長く働いてくれれば、その間は女性ホルモンは分泌されます。腰痛や冷え性がある人は血液の循環が滞り、卵巣の働きが弱くなっている可能性があります。卵巣に十分な栄養が行き届くように血液の巡りをよくすることを始めましょう。
・バランスの良い食事をしましょう:血液は毎日の食事からつくられます。食事を見直して質の良い血液を作りましょう。
・体を積極的に動かしましょう:血液の循環がよくなり、卵巣をはじめ内臓や、筋肉に酸素や栄養を十分に届けることができます。無理なく続けて、体を動かすことを習慣化しましょう。
・鍼をすることで血液循環がよくなります:自律神経を介して卵巣血流の改善が認められることが分かっています。
定期的に生体制御療法(東洋医学研究所®HP参照)の鍼治療をして、血流改善をすることで、体調を整えていくことをおすすめします。

参考引用文献
・新野博子:女性ホルモンの増やし方.株式会社宝島社.2012
・武谷雄二:エストロゲンと女性のヘルスケア.メジカルビュー社.2015
・中村一徳:ninニン~妊活情報サイト~ http://www.nin.club/
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2019年3月 1日 金曜日

汗腺の発達について 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 院長 角田 洋平 平成31年3月1日号

はじめに
思い起こすこと数か月前、昨年は様々な異常気象に見舞われた一年でした。中でも私自身初めての経験で、記憶に残っているのが新潟県で観測史上初の気温40℃超えのニュースでした。テレビなどでたまに目にしますが、いざ自分の住んでいる所が摂氏40℃を超えた世界になると危機的なものを感じます。大人の私ですらそうなのですから、小さいお子さんのいる家庭では尚更の事だと思います。真夏の日中、外から聞こえる市役所の熱中症の注意勧告の放送。昔は夏休みといえば昼ご飯も食べるのを忘れて夕方暗くなるまで虫取りだの何だのと遊んだものですが、このような気候ですと真夏の昼間に冷房の効いた部屋から出づらいといった状況が出来上がっていると言えます。
昨年の9月1日の朝日新聞デジタル版では、「夏場に冷房の効いた部屋から出ないのは暑い環境における汗腺発達の機会が奪われているのではないか」と懸念していました。そう、危険な程の暑さが故に元々体に備わってる"汗をかいて体を冷やす"という機能の発達を阻害している可能性があるのです。

汗は優秀な放熱装置
昨年インターネットで見かけた記事で『キッチンペーパーだけで約10分で常温のビールをキンキンに冷やすことができる方法』というのがありました。濡れたキッチンペーパーをビール缶にぐるぐる巻き付け乾燥している冷蔵庫に入れておくことで、ペーパーに含まれている水分が蒸発すると一緒にビール缶の熱も奪われるといった、汗が乾く際に熱を奪う気化熱の作用を利用したものです。記事によると缶ビール1本冷やすのに4時間くらいかかっていたのが、10分程で飲み頃の美味しく冷えたビールになるようです。それと同様に人間の汗の気化熱による身体の冷却機能も暑熱環境適応という面で大変優れているのです。
こうして全身に汗をかくのは実は人間くらいのもので、他の動物は犬を見てるとよく分かるように、ハッハッと小刻みに浅い呼吸を繰り返して(浅速呼吸)上がった体温を下げます。この呼吸とわずかばかりの汗腺が体の一部に備わっているのみです。多くの動物はケガや直射日光、寒冷による体温低下を防ぐために体毛を発達させた一方で、ヒトの体毛は退化しほとんどが非常に細いうぶ毛になり、代わりに汗腺が発達しました。その結果、体温の上昇を発汗で効率よく緩和出来た事によって長時間の歩行・走行が可能になりました。歩行や走る事で42・195㎞も一度に移動出来るのは人間くらいのもので、元気な人は喜んでお金を払ってそれをこなします。他の動物がいくら真似しようとしても、あっという間に熱処理できず熱中症で倒れてしまいます。実際昔の人間の狩りは獲物を追い込んで追い込んで熱中症で動けなくさせてから仕留めていたようで、そのおかげで危険な目に遭う事なく大型の獲物も仕留める事が出来たようです。こうした長距離の移動能力は人類がアフリカ大陸で誕生し、瞬く間に各地に散らばり繁栄できた要因の一つともいえます。

働く汗線の数が増えるのは2歳半まで
人間が進化の中で獲得した叡智ともいえる発汗機能ですが、温熱刺激により汗腺能力は起動し、当然ながら涼しい・寒いといった環境では放熱は命取りになるためあまり機能しません。汗腺の機能が出来上がるのが2歳半ごろといわれています。気温の高い地域の住民ほど分泌能力を持つ汗腺(能動汗腺)が多いのですが、成長してから熱帯に移住しても能動汗腺の数は増えません。暑い環境で乳幼児期を過ごせば、働く汗腺の数は増加することになります。その能動化は2歳半までに完了するので、暑い環境に適応する意味で夏に汗をかくことが大事なのです。 しかし昨今の猛暑はそういった意味で汗腺発達の機会を奪っていると言えます。 

汗腺の能力をあげていく
しかし気温が40度近い中に乳幼児を放り出せともいえません。もはや命に関わりますので、真夏は冷房をしっかり使って熱中症対策をしなければなりません。ただ地球の温暖化が進む中で、ある程度は暑さに耐えれる身体を作っていきたいものです。ちょうどこれから寒さもほころび、外出しやすくなってきます。まだ暑さが厳しくならないうちにお子さんと外出したり外で運動させてたっぷり汗をかかせるのも一つの手です。先ほど汗腺の数の増加は2歳半までに完了するといいましたが、汗腺一つ一つの能力は成長と共に発達していきます。学校での登下校や運動、帰ってからしっかりお風呂につかる事でその機能は伸びていき、汗をかく夏の準備はされていきます。

おわりに
熱中症という言葉が定着して久しいです。稀有な能力として得た発汗機能を保持すると共に、まだちょっと先ですがこれから来る夏には汗で排出される水分・塩分補給等に気を付けて下さい。また熱中症予防という観点から言えば睡眠・疲労をためないようにするなど普段の体調管理も重要です。
これからの極端な気候を乗り切るために是非とも鍼灸治療をお薦め致します。

参考文献
・ダニエル・E・リーバーマン.人体六〇〇万年史─科学が明かす進化・健康・疾病(上).ハヤカワノンフィクション文庫.2017.
・塩原哲夫.アトピー性皮膚炎と発汗.別冊医学のあゆみ アトピー性皮膚炎.2009.
・汗をかく力は25歳までに? エアコンは子どもに悪いのか
https://www.asahi.com/articles/ASL8Y42N0L8YUBQU00F.html?iref=com_apitop
・キッチンペーパーだけで!約10分で常温のビールをキンキンに冷やすことができる方法  https://togetter.com/li/1300297
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2019年2月 1日 金曜日

お天気と体の関係(3)

2月はまだまだ寒い季節。しかし、2月の異名は「中の春(なかのはる)」、「初花月(はつはなつき)」、「梅見月(うめみつき)」など春が連想できる時期であり、3日は「節分」、4日は「立春」と暖かくなってきそうな気配のする月です。暖かな季節までもう少しですね。
前回は、気圧が体に与える影響をお話しました。簡単に要約すると、天気と体の関係を研究する分野を生気象学と言いますが、佐藤純先生の報告では、気圧が下がるときに痛みが強くなり、それだけではなく、うつが悪化するなど精神的にも影響を与えることがわかってきたことを話しました。
今回は、季節と体の影響について、少し話したいと思います。私が研究している東洋医学の古典「黄帝内経素問」の中には、季節と体の関係について多く書かれています。例えば、「四気調神大論篇第二」には、「春は新しいものを出す季節であり、ものみなすべてが生き生きと栄えてくる。体をのびやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させ、目を楽しませるべきで、体をしいたげてはならない。夏は万物が繁栄し、秀麗となる季節で、暑さを厭うことなく、気持ちを愉快にすべきで怒ってはならない。秋は万物が成熟し収穫の時期である。心を安らかに静かにさせて、外に働かせず気を清浄に保持しなければならない。冬は万物の生物機能が潜伏する時期である。秘密をつかんだような愉快な気分で、厳寒を避け、温暖に保ち、汗を出すようなことをして、体の気に影響を受けさせてはならない。」と、季節における養生法が書かれています。クーラーも暖房もない2000年以上前の時代に、四季の気候変化に従い、体調を整えることは、養生と、病気の予防などにとても大切なことだったのです。

 

現在においても、季節と体の影響は重要視されてきています。一昔前は「夏バテ」という言葉しか聞きませんでしたが、最近では「春バテ」という言葉も使われるようになってきました。夏は暑さで「バテる」のですが、春は何で「バテる」のでしょうか。川嶋朗先生は、2月から5月は1年の中で一番気温の変化が激しく、1週間の中でも15℃の差がある時もあり、この気温差が体の不調を引き起こすことを報告しています。
川嶋先生は「激しい寒暖差や春特有の環境の変化(ストレス)などが原因となって、自律神経が乱れ、『だるい』『イライラ』『やる気がでない』などの症状が現れることがあります。このような症状を春バテと呼んでいます。また、『昼間眠い』『目覚めが悪い』『夜眠れない』などの睡眠の不調があらわれるのも春バテ特有の症状といえます。昨日は、暖かかったのに、今日は極寒といった前日との寒暖差が最も身体にこたえるのです。バテないためにも日頃の予防と対策が必要です。」と春における養生の重要性を話しています。
春バテの身体的な症状として、昼間眠い、身体がだるい、肩がこる、疲れる(倦怠感)、目覚めが悪い、腰痛、頭痛、手足の冷え、お腹の不調、夜眠れないがあり、精神的な症状として、イライラする、憂鬱(ゆううつ)、気分の落ち込み、不安感があります。
私たちの研究では、四季のうちで春が一番不定愁訴(体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態)が多いという結果でした。不定愁訴の項目の中で、春に多かったのは、腰や背中が痛くなる、手足が冷える、手足に痛みやしびれがある、耳鳴りがする、性欲の衰えを感じるでした。
気持ちのよい暖かな春を迎えるにはどうすればいいのでしょうか。川嶋先生は、春バテの予防と対策は、自律神経を整え、交感神経と副交感神経の切り替えを適正かつスムーズに行うようにすることであると話しています。
自律神経機能の調節については、東洋医学研究所®所長黒野保三先生の長年の研究により、生体制御療法の鍼治療により自律神経が整うことがわかってきています。春になると体の調子が悪くなる方は鍼治療を受けてみてはいかがでしょうか。

引用・参考文献
・佐藤純、溝口博之、深谷佳乃子.天候変化と気分障害.日本生気象学会誌.48(1)3-7.2011.
・石田秀美.現代語訳 黄帝内経素問.東洋学術出版社.序文.2006.
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J. Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. Autonomic Neuroscience:26(1・2).2011:116-20.
・寒暖差による不調「春バテ」が急増!?.監修:東京有明医療大学 川嶋 朗教授
https://www.well-lab.jp/201803/feature/14015
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2019年1月 1日 火曜日

長寿社会を健康で長生きに暮らすために良い生活習慣と鍼治療を 東洋医学研究所®所長 黒野 保三 平成31年1月1日号

謹賀新年
皆様におかれましてはお健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。今年は改元の年でもあり、皆様の益々のご健勝を心より祈念申し上げます。
2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳(香港87.66歳に次いで2位)、男性が81.09歳(香港81.70歳、スイス81.50歳に次いで3位)といずれも過去最高を更新しました。
また、センテナリアン(100歳を超えた人)は1963年の調査ではわずか153人でしたが、2017年には6万7,824人にまで増加しました。センテナリアンの女性が占める割合は87.5%を超えており、約9割近くが女性です。


 
さて、健康寿命とは、「医療や介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間の平均」を指します。厚生労働省の専門委員会が公開している2016年の全国の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳でした。平均寿命と健康寿命の差は、男性は8.84年、女性は12.34年であり、日常生活に制限のある期間はそれだけ長いのです。健康寿命を伸ばすことが、老後の生活にとって重要な要素であることがわかります。
2017年の3大死因は、1位は悪性新生物(がん)で全死因の27.9%、2位は心疾患で全死因の15.3%、3位は脳血管疾患で全死因の8.3%であり、がんで死亡した人は37万3,334人(男性22万398人、女性15万2,936人)でした。
1970年代のがん医療は、まだ旧態依然とした状況でありましたが、1980年代以降には大きな進歩がみられ、基礎分野では、がん発生のメカニズムの一端が明らかにされ、がん予防分野でも喫煙や感染症対策が進み、科学的根拠に基づくがん検診が推奨されるようになりました。
がん診断分野では、上部・下部内視鏡、CTスキャン、血管造影、MRI、超音波断層、腫瘍マーカーなど新しい診断技術の導入が進み、がん治療分野でも、内視鏡手術、体腔鏡手術、ロボット支援手術などの患者負担が少ない手術法が普及し、放射線治療や粒子線治療では高精度照射が追求され、薬物療法では、分子標的薬や免疫治療薬の開発とともに、術前術後補助薬物療法による治癒率の改善も図られるようになりました。
1980年代以降、がんの告知が一般化し、それに伴いインフォームドコンセントが普及し、患者がセカンドオピニオンを求める機会も増しました。国民は現在も「がんは不治の病」という意識が強いので、告知により患者・家族の悩みや負担はより一層重いものとなります。患者に優しい医療技術の普及と患者・家族支援が必要であります。
今後は、社会の人々や医療関係者が、がん患者・家族に向き合い、心の通う対話を通じて、真の意味での全人的医療と患者・家族支援をおこなわなければならないと思います。
(※ 新しいがん免疫療法を開発した本庶佑京都大学特別教授は2018年のノーベル医学生理学賞を受賞されました。)
また、長寿社会が直面する問題として認知症があります。認知症とは「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態」を指すものです。厚生労働省が実施した認知症の全国調査では、2012年時点での全国の患者数は約462万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約20%が何らかの認知症を有する)に達すると予測されています。
久山町研究によって明らかになっている認知症の危険因子は高血圧、糖尿病、喫煙であり、認知症の防御因子は運動習慣と、大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品、果実、芋、魚、卵の摂取量が多く、米、酒の摂取量が少ないという食事パターンを有する人でした。
加齢に基づく認知症の発症リスクは生活習慣病の予防や生活習慣の是正によって軽減できることが示唆されました。
私は30歳(1960年)の時から今日まで、東洋医学(鍼灸医学)が予防医学を本旨とし、1次予防(病気になる前の健康者に対して、健康の増進を図って病気の発生を防ぐ)、2次予防(病気になった人にできるだけ早期治療を行い、病気の進行を抑え、病気が重篤にならないように努める)、3次予防(病気が進行した後の後遺症治療、再発防止、残存機能の回復・維持をはかる)に適した医療であり、人の健康を維持するために、いかなる状態においても的確に対応できる医療であることに魅せられて、研究(臨床・基礎)、学会活動、弟子の育成に邁進してきました。
昨年6月にWHOの国際疾病分類第11回改訂版(最新版)に伝統医学(漢方・鍼灸)が追加され、今年の5月の世界保健総会にて採択されることが公表されました。100年以上西洋医学一辺倒であった世界の医療基準の大きな転換であり、古代中国を起源として日本や中国、韓国等に広がった東洋医学(漢方・鍼灸)が医学・医療として認められたことを意味しております。このことは私が長年念願してきたことであり、心より喜ばしく思います。
私は東洋医学の人の生命力(自然治癒力)を増強する人に優しい医療と、日進月歩する西洋医学の長所を融合することが長寿社会の全人的医療となることを確信しております。
私ごとですが、お蔭様をもちまして健康で90歳(卆寿)を迎えることができました。本年も「病気にならない体を作りましょう。健康で長生きできる体をつくりましょう。」を目標にして、皆様の健康維持のお役に立ちたいと願っております。

文献
○山口建(2018).国民・患者・家族の視点を重視したがん対策 月刊新医療,第45巻第11号,15.
○二宮利治(2018).認知症の危険因子と防御因子 日本医師会雑誌,第147巻・特別号(2),280-2.
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