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コラム

2021年1月 1日 金曜日

新型コロナウイルスについて 東洋医学研究所® 副所長 石神 龍代 令和3年1月1日号

はじめに  
2020年元旦、国民が期待に胸膨らませ待ちに待ったスポーツの祭典『東京オリンピック』開催の輝かしき年が明けました。
ところが1月6日、厚生労働省は「中国内陸部の湖北省武漢市で前年12月より原因となる病原菌が特定されていない肺炎の発生が複数報告されている。」という内容のプレスリリースを発表し、14日には世界保健機関(WHO)は中国当局からの情報提供を受け、『新型コロナウイルス』確認を発表し、15日には初めて日本人の感染例が確認されました。
そして、2月3日に横浜港に帰港した大型クルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス」集団感染、13日には国内初の死者が報じられ、16日には「新型コロナウイルス感染症専門家会議」が発足し、3月11日、WHOのテドロス事務局長が「新型コロナウイルスはパンデミック(世界的な大流行)と言える」と表明し、ついに日本政府は4月7日に「緊急事態宣言」を発令しました。
昨年より世界中が新型コロナウイルス感染の拡大による未曾有のコロナ禍に見舞われており、今なお収束の目途がたっていない状況です。
この難局を健康で心穏やかに乗りきっていきたいものです。

新型コロナウイルス感染との闘いの鍵 『免疫』
世界を脅かす未知なる強敵新型コロナウイルスは、現在、世界中で9700万人以上が感染し、170万人以上が命を落としています。
私たちの体の中に侵入した新型コロナウイルスと果敢に戦うミクロの戦士が免疫細胞であり、その数2兆といわれます。その免疫力を司る神秘のメカニズムが最近の科学の力で次々に解明され始めています。
「NHKスペシャル『人体 VS ウイルス』 ~驚異の免疫ネットワーク~」で紹介された、誰も見たこともないミクロの攻防を、貴重な最新顕微鏡映像と精緻なコンピューターグラフィックスで完全映像化した、私たちの体の中に広がる知られざる世界を覗いてみましょう。
☆新型コロナウイルス 体内ミクロの攻防 『自然免疫』
新型コロナウイルス(以下ウイルス)は感染した口から飛び散るごく小さな飛沫などに潜んでやってきます。直径1㎜程度の飛沫の中に700万個のウイルスが含まれていることもあります。ウイルスが鼻や口に飛び込んでいきます。最初の関門は空気を肺に吸い込む気道。その表面を電子顕微鏡で1万倍以上に拡大すると毛のような線毛がたくさん生えているのが見えてきました。ウイルスはこの線毛を巧みに通り抜けて、遂に肺の奥深くまで到達し、いよいよ感染が始まります。ウイルスが肺の細胞に近づき、その表面にある不思議な形の突起に自分の周りのトゲをピッタリ合わせると細胞の中に潜り込んでいく。これが感染です。細胞の表面にあった突起は、本来細胞がコレステロールなど必要な物質を取り込む際、扉を開ける鍵穴のような働きをしています。細胞の中に入れるのは鍵穴に合う鍵を持っているものだけ。ところがウイルスは細胞の鍵穴に合う『偽の鍵』を持っていて、まんまと細胞を騙すことに成功し、侵入を果たします。細胞に侵入したウイルスは1000倍にも増殖し、再び外に飛び出して新たに感染する細胞を求めて散らばっていきます。このままだと肺の細胞が次々とウイルスにやられて肺炎が進行し、症状がどんどん悪化してしまいます。この危機的な状況を防ぐために立ち上がるのが、私たちの体を守る防衛隊、免疫細胞です。
ウイルスに感染した細胞が免疫細胞に危険を知らせる警報物質(インターフェロン)、いわば「敵が来たぞ」というメッセージは血流に乗って全身に広がっていきます。そして血管の中を転がっている丸い食細胞(好中球といわれる免疫細胞)は、そのメッセージを受け取ると、血管の外に出て感染が起きている現場へ急行し、異物を見つけると近づいて食らいついて丸飲みします。いち早く感染を察知し、丸飲み攻撃をしかけるこの防衛隊は『自然免疫』と呼ばれ、生まれつき私たちが誰でも持っている免疫システムです。
ウイルスに感染して無症状で済む人は、体の中で食細胞が大活躍していると考えられるのです。
ところが体調は思わしくなく症状がだんだん悪化していくことがあります。実はウイルスが『自然免疫』の攻撃をすり抜ける驚きの能力を持っていることが最新の研究で明らかになってきました。ウイルスが細胞に侵入すると、感染した細胞は「敵が来たぞ」という警報物質を大量に放出していましたが、ウイルスが持つ特別な遺伝子が働くと、作られる警報物質の量が10分の1まで抑え込まれてしまい、敵が侵入したという情報が伝わらないため、野放しとなったウイルスは大増殖してしまいます。
☆症状悪化の危機!命を守る 第2の防衛隊 『獲得免疫』
もはや『自然免疫』では抑えきれない程に大増殖したウイルス。その時体の中では第2の防衛隊が立ち上がります。先程までウイルスと戦っていた食細胞の仲間の伝令役の食細胞(樹状細胞)が走り始め、免疫細胞にたどりつき、戦いの時に飲み込んだウイルスの断片を手の様なものに乗せて差し出しています。免疫細胞がそれを敵の情報として受け取ると、翼の様なものが生えて出撃準備完了。ウイルスだけを狙い撃ちするキラーT細胞の登場です。キラーT細胞はウイルスに感染した細胞を巧みに見つけ出し、へばりつき、事前に学んだ情報とこの断片を照らし合わせ、一致すれば攻撃を開始します。実際にキラーT細胞の攻撃の様子を捉えた最新の顕微鏡映像では、キラーT細胞はターゲットの細胞にとりつくと、毒物質を注入し、感染した細胞ごとウイルスを消し去るのです。
しかし、ウイルスはこのキラーT細胞の攻撃をも退ける特殊能力を持っている可能性も見えてきました。狙うのは、感染した細胞がウイルスの断片を突き出す手が表面に出る前に分解してしまうのです。そうなるとキラーT細胞が、ウイルスが潜む感染した細胞を見つけることができないままウイルスがどんどん増殖してしまいます。そこで、さらなる免疫の部隊が導入されます。B細胞です。B細胞はウイルスの断片に触れて敵情報を入手。そして作り出すのが『抗体』といわれる物質です。顕微鏡で拡大するとYの字の様な形をしています。どんな攻撃をするかというと、B細胞が放出した抗体がウイルスに近づき、ウイルスが細胞に侵入するために使う『偽の鍵』に付着します。こうなるとウイルスは感染も増殖もできなくなり、行き場を失ったウイルスに食細胞が近づき、次々と食らいつきます。ここまでくればもう安心。私たちの体は徐々に回復していきます。
実はT細胞やB細胞は私たちの体の中でウイルスの記憶を保ったまま待機し続け、もし再びウイルスが体に侵入してきても、すぐに戦闘態勢がとれるように準備しているのです。敵の情報を学んで集中攻撃を仕掛け、撃退した後も体を守り続ける専門部隊、これが『獲得免疫』と呼ばれる第2の防衛システムなのです。
私たちの体(人体)の免疫細胞は40種類以上あって、それぞれが違う役割を担う『免疫ネットワーク』でウイルスと対峙しています。
新型コロナウイルスには免疫の力を利用して対応できるのではないかと世界中の研究者が治療薬(ワクチン、抗体)の開発に努力しています。

新型コロナウイルス感染予防策
私たちが日常生活でできる予防策として、先ずは「感染しない」、「人にうつさない」ことを第一に考え、「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の発表した「新しい生活様式」を着実に実行していくことが大切です。
新型コロナウイルスの感染経路は、主に飛沫感染と接触感染が考えられています。まず、飛沫感染の予防策として「密閉」「密集」「密接」、いわゆる「3密」の回避です。
「密閉」を避けるためには、空気の流れができるよう2方向の窓を全開することです。換気は1時間に2回、数分間程度が目安です。
「密集」は人の密集する場所を指し、大勢が集まるイベント会場などでは、お互いの距離を2メートル程度(最低でも1メートル)空けること「ソーシャルディスタンス(社会的距離などの意味)」が求められます。
「密接」は近距離で会話や発声をすることであり、会議などで対面での会話が避けられない場合は、十分な距離を保ち、互いの飛沫が飛ばないようマスクを着用しましょう。国からマスク着用が推奨される動きは、1918年(100年前)、世界中で大流行した「スペイン風邪」の時の対策でした。
スーパーコンピュータ―「富岳」を使った計算では、マスクによって飛沫の拡散を約8割防ぐことができるという結果が出ました(理化学研究所2020年8月24日公表)。
※ 新型コロナウイルスの特徴のひとつに『見せかけの無症状』といわれるものがあり、体の中でウイルスがどんどん増えていき、最初は無症状ですが、感染から5日経つとウイルスが一定の量を超えるので、咳や倦怠感、発熱といった風邪の様な症状が現れ、肺炎が進行します。
日本の最新報告によると、感染を広げた人の多くが無症状でありました。無症状だからといって感染していないわけではないので、他の人の命を守るためにマスクが大事な働きをすることを示しています。
次に接触感染の経路として、一番気をつけたいのは「手」です。ウイルスの体内への侵入経路は、鼻や口、目などの粘膜からです。ウイルスの付着した手で粘膜に触れると、そこから感染してしまう恐れがあります。そのため、手についたウイルスをきれいに洗い流すことが感染予防の基本となります。手の洗浄は、石けん液と流水で汚れや日常生活で皮膚の表面や爪に付着した菌の一部を除去します。手全体や手のしわ、指の間などもしっかりと石けん液を泡立てて行き渡らせるのがポイントです。短い時間では落としきれないので、30秒を目安に心がけましょう。それでも除去できなかったウイルスを消毒するのがアルコール消毒液(濃度が約70%以上のエタノール)です。

おわりに
新型コロナウイルス感染に打ち勝つためには、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動(ラジオ体操や自分にあった速度と時間の散歩など)による基本的な心身の健康作りによって免疫力をさげないことが大切です。
また、東洋医学研究所®黒野保三所長の長年の研究によって裏付けられている生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法の鍼治療(鍼と超音波の併用治療)を受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・いのちもお金も大事! 新型コロナウイルスから身を守る・家計を守る・くらしを守る:彩流社編集部、2020年10月12日発刊、彩流社
・https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/detail/detail08.html
・NHKスペシャル タモリ×山中伸弥 人体VSウイルス 驚異の免疫ネットワーク 11月9日放送
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008:94-6
・NHKスペシャル「謎の感染拡大~新型ウイルスの起源を追う~」12月27日放送
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2020年12月 1日 火曜日

子供の「疲労」を解決しよう 東洋医学研究所®グループ  にしだ鍼灸院 院長 西田 修 令和2年12月1日号 

子供たちは疲れています
子供の疲労には、様々な原因がありますが、その中でも「生活時間帯のずれ」が深刻な状況にあると考えられます。学校が終わった後も、習い事やクラブ活動に参加する子供が非常に多く、中学生になるとそれは一段と際立ってきます。それによって、就寝時刻がどんどん遅くなり、結果として睡眠不足の状態が続き、とれない疲労が蓄積してしまいます。3ヶ月以上続く疲労を慢性疲労といいます。このような背景から、疲れている子供が増えているといえます。
 
睡眠時間を確保しましょう
理想の睡眠時間は国際的にも議論がなされており、小学生は9時間以上、中学生は8時間以上といわれています。
1日は24時間ですが、そこから理想の睡眠時間である9時間を引いた15時間が生活時間となります。大切なのは、1日24時間の中で何をするのかを決めて、残った時間を睡眠に充てるのではなく、生活時間の中で何をするのか考えることです。
これを1日単位ではなく1週間単位で考える方が理想的です。子供達の習い事やクラブ活動は、実に多様ですから、日々どのようにしてコンディションを整えていくか、負荷の大きな日があるならば、翌日はそれを緩和させるような時間管理も必要です。毎日8~9時間の睡眠を確保することが理想ではありますが、子供たちの現状を踏まえると、現実的ではありません。だからこそ、1週間というスケールで物事を考えた方が良いと考えます。
子供と大人の疲労は、よく似ています。大人の場合は「ノー残業デー」が設けられて、水曜日に設定されるケースが多いと思います。それは、週の真ん中で労働時間をコントロールすることにより、週の後半を頑張ることが出来るためです。
これは、大人と同じような時間の使い方をしている子供にも、置き換えることが出来ます。子供たちは夜の21時~22時頃まで習い事やクラブ活動をしていると考えれば、大人の残業と変わりません。例えば水曜日の放課後には習い事やクラブ活動を入れないとか、水曜日の部活動は終了時間を早くするといったことを考えるとよいと思います。
また、テレビの視聴時間やSNSの利用時間が長いほど、スマートフォンの利用時間、さらには夜のコンビニエンスストア利用頻度が高いほど、睡眠時間が短いというデータもあります。

睡眠の質を高めましょう
睡眠を高める手段としては、まずは「道具=寝具」の改善が考えられます。枕の高さを変える、体圧分散機能が付いたマットレスを使う等が挙げられます。次に「睡眠環境」を整えることです。暑すぎたり寒すぎたりすると、体温調節にエネルギーを使ってしまうだけでなく、交感神経を優位にしてしまう恐れがあるためです。そして、テレビの視聴やスマートフォンの利用は控えましょう。
一方、起床時については、目覚まし時計のアラームで目覚めるよりも、自然光を少しずつ浴びながら目覚めるのが理想とされています。
そして、子供の疲労を解決するもう一つの糸口が「家族」です。家族とコミュニケーションをよくとっているかどうかが、寝る前の情動の安定に関係します。学校であった出来事や、習い事やクラブ活動で取り組んだことを家族に話し、それに対して褒められたり、受容されたりするような心地よい時間があると寝る前の心の落ち着きが生まれると考察できます。
不安な状態では、寝ようと思って布団に入っても、ネガティブなことを考えてしまうものです。そうすると、睡眠は本来ならば脳の温度を1~2度下げる作用があるにもかかわらず、脳が活動してしまうことで温度が下がらず、なかなか寝付けません。
 
東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは睡眠に対する鍼治療の臨床研究を行っています。 
第27回生体制御学会学術集会シンポジウム「医療の水際での鍼灸診療」において、「鍼灸院における睡眠に対する鍼治療の実態調査」と題して、初回鍼治療日に主訴の内容に関わらず1回の鍼治療で63%の人が「いつもよりよく眠れた」と回答していると報告しました。
また、鍼治療を行った日と、行わなかった日の2日間の睡眠の評価についてOSA睡眠調査票MA版を使用して検討した結果、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復において点数の増加が認められ、鍼治療により自覚的な睡眠の質が改善したことが客観的に評価されました。
また「睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討」と題した報告では、6症例の不定愁訴指数の推移は有意に減少し、不定愁訴カルテによる効果は、著効1例、有効5例でありました。また、睡眠障害も全症例において改善され、睡眠障害および睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性が示されました。
鍼治療が睡眠の質を高めていることは、鍼刺激が自律神経の副交感神経機能を亢進しているということが基礎研究から明らかであります。

おわりに
今回、子供の「疲労」の大きな原因である「睡眠不足」についてお話しさせていただきました。大人も子供も多忙を極める昨今「睡眠」がとれない「疲労」がとれないと感じる方は生活習慣の改善とともに心身の健全を保つために鍼治療を定期的に受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・特集 上手な「疲労」との付き合い方:コーチング・クリニック. 2020. 5
・皆川宗徳,黒野保三:鍼灸院における睡眠に対する鍼治療の実態調査 第27回生体制御学会学術集会抄録集 11.2009
・石神龍代,皆川宗徳,福田裕康,井島晴彦,近藤利夫,黒野保三. 睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討. 全日本鍼灸会誌. 2006: 56(5); 793-801.
・石神龍代,黒野保三,皆川宗徳,山田 篤,各務壽紀,早野順一郎:黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による睡眠の質の改善効果―OSA睡眠調査票MA版を用いた自覚的な睡眠の質の評価―.全日本鍼灸学会雑誌.2016;66(1):24-32.
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J.Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. AutonNeurosci. 2011; 161. 116-20.
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2020年11月 1日 日曜日

認知症の基礎知識2 東洋医学研究所®グループ  ことぶき鍼灸院 院長 秋田 壽紀 令和2年11月1日号

はじめに
超高齢社会となっている現在の日本ですが、総人口に占める高齢者人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降一貫して上昇が続いており、1985年に10%、2005年に20%を超え、2018年は28.1%となりました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。
このように急速な超高齢化に直面している日本において、認知症患者の人数も増加しており、2012年には462万人でしたが、2025年には700万人を超えると予測されています。このような状況の中、認知症についての基本的な知識を身につけて、予防、早期発見してくことはとても重要なことです。
前回は、認知症の基礎知識、特に認知症の症状について説明しましたが、今回は認知症の原因疾患とその特徴について説明していきます。

認知症を引き起こす病気
認知症の原因となる病気には様々なものがあります。認知症を引き起こす病気を大きく分けると、脳の神経細胞がゆっくりと死んでゆく「神経変性疾患」、脳の血管の病気が原因である「脳血管性認知症」、「その他の原因」の3つに分類されます。
神経変性疾患による認知症の中では、アルツハイマー型認知症がその代表疾患で、認知症の中で最も割合の多い疾患です。また、3番目に多いレビー小体型認知症も神経変性疾患になります。2番目に多いのが「脳血管性認知症」で、脳梗塞や脳出血が原因です。「その他の原因」の中には、適切な治療で認知症が治る可能性のある精神疾患や脳外科疾患あるいは内科疾患、特定の栄養の不足なども含まれます。

認知症の原因疾患の割合


認知症の特徴と違いについて
「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」は3大認知症と呼ばれています。この3大認知症に関して、それぞれの特徴と違いについてみていきましょう。

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症はβたんぱくやタウたんぱくという異常なたんぱく質が脳にたまって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮してしまうのが原因の認知症です。タンパク質のかたまりは加齢によって増えますが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、体をぶつけ合うコンタクトスポーツなどによる頭部外傷がリスクとなり、さらに増加します。そのため「第3の生活習慣病」と言われることもあります。記憶を担っている海馬という部分から萎縮が始まり、だんだんと脳全体に広がります。
そのため、物忘れから始まることが多く、徐々に今まで日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。新しいことが記憶できない、思い出せない、時間や場所がわからなくなるなどが特徴的です。また、物盗られ妄想や徘徊などの症状が出ることがあります。
症状の経過は、比較的ゆっくりと進行していき、数年をかけて徐々に記憶能力から全般的な認知機能が悪化していきます。

レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、70代以降に見られることが多い認知症で、脳の様々な部位に、タンパク質のかたまりであるレビー小体ができることで発症します。レビー小体はその蓄積する脳の中の部位によってレビー小体型認知症を発症したり、転びやすさや手の震え、動きの緩慢さ、筋肉の固さなどが特徴のパーキンソン病を発症したりします。
レビー小体型認知症の最も特徴的な症状は、「ないものが見える」、あるいは「影や衣服がほかの物や人に見える」といった幻視です。幻視に伴った妄想を発症するケースもあります。また、先述したパーキンソン病のような症状も現れます。記憶障害はアルツハイマー型と比べて軽い傾向にあります。 その他にも、意識のレベルが著しく変化したり、睡眠中に夢を見て声を出す、夢の内容と同じ行動をとる症状(レム睡眠行動異常)が出ることもあります。また便秘や急に起きたときの血圧低下などの症状も多く見られます。抑うつ傾向も見られるため、初期にはうつ病と勘違いしがちな病気です。
発症してからの平均生存期間は10年未満と言われますが、発症から1~2年で急速に進行して死亡する場合もあり、個人差が大きいとされています。
 
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中や心停止や極度の血圧低下による脳損傷、脳の血管炎などが原因で起こります。60歳以上の男性に多く見られます。 気づかないうちに進行が進んでいるアルツハイマー型と比べ、脳血管性認知症は脳梗塞などの発作を機に発症しますが、実際は大きな発作よりも気づかない程度の小さな発作の積み重ねによって発症する場合も多く、診断には専門的な診察が必要です。 脳血管障害の多くは、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因で起こります。特に高血圧は脳血管性を引き起こしやすい脳梗塞を誘発します。
脳血管性認知症は、障害を受ける機能と健全な機能が混在していることから、「まだら認知症」とも呼ばれます。これは、脳のどの血管が詰まったかによって障害を受ける機能が異なるためです。そのため「一見しっかりしているように見えるが新しいことを覚えられない」というケースがあります。 脳の損傷を受けている場所によって症状は千差万別ですが、脳の前頭葉白質が障害されているケースが多く、その場合には記憶障害よりも遂行機能障害や精神運動の遅延、意欲の低下があらわれます。また、感情面での変化も特徴的で、急に笑ったり泣いたりする「感情失禁」や、反対に抑うつ状態になったりします。その他、歩行障害を中心としたパーキンソン症状が合併する場合もあります
進行は、梗塞が起きる度に悪化するため、比較的急速に発症し、段階的に悪化していきます。

3大認知症の特徴
 
 
おわりに
今回は、認知症の基礎知識として、認知症の原因となる3大認知症について説明してきました。これらの疾患の治療は、進行を抑えたり、一時的に症状を緩和したりする治療しかまだありませんが、それぞれの原因疾患によって対応の方法が変わっていきます。適切に対応することで、患者本人やその介護にかかわる人の負担を軽減することにもつながります。
認知症で最も大切なことは発症しないように予防することです。3大認知症は、睡眠や運動、食生活などの生活習慣が大きく影響しています。また、糖尿病や、高血圧などの生活習慣病もリスクになることが分かっています。
鍼治療は、これらの生活習慣病に対して効果があることが実証されています。また、鍼治療は認知症の認知機能の低下に対して効果があるという研究も報告されています。ですから、生活習慣の改善とともに是非、鍼治療を取り入れて、認知症を予防していきましょう。

引用・参考文献
・総務省統計局 統計トピックスNo.113 統計からみた我が国の高齢者
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1130.html
・認知症施策の現状 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000...Soumuka/0000069443.pdf
・デール・プレデセン:アルツハイマー病 真実と終焉. ソシム.2018 
・池上晴之:NHK今日の健康大百科NHK出版.2010
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008
・Bai-Yun Zeng.Effect and Mechanism ofAcupuncture on Alzheimer'sDisease. International Review of Neurobiology;Volume 111.181-93.2013
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2020年10月 1日 木曜日

楽しく体を動かしましょう 東洋医学研究所®グループ  たかやま鍼灸院 院長 高山 加奈子 令和2年10月1日号 

はじめに
令和2年は新型コロナウイルスとの闘いの一年となりました。
患者さんの多くが自律神経の失調症状を訴えられ、女性患者さんの大多数が月経周期に乱れがあると答えています。しかし、体調不良を感じても以前のようには、病院受診をする気になれないという声も聞かれます。そこで、必要となるのがセルフケアです。今回は、運動不足を訴える女性が多くみえましたので、自宅でできる運動について提案させて頂きます。

ホルモンバランスの乱れが自律神経の不調を招く
女性ホルモンの分泌は脳や神経からの指令でコントロールされているため、ストレス・不規則な生活・睡眠不足といったちょっとしたことでもバランスが乱れてしまいます。ホルモンの分泌量が変わったり、サイクルが変化したり、また加齢のために分泌量が減ったりすると、さまざまな不調の原因となります。めまいやふらつき、動悸、倦怠感、頭痛、不眠......といった多種多様な症状を引き起こす「自律神経失調症」には、ホルモンバランスの変化が深く関わっています。ホルモンの分泌と自律神経をコントロールする脳の部位が近いため、ホルモンバランスの乱れが自律神経の不調を招き、またその逆も起こり得ます。

運動は自律神経を活性化し、ホルモンバランスを整える
有酸素運動と言えば「ジョギング」や「ウォーキング」「水泳」などのイメージがありますが、室内でできる有酸素運動を3つご紹介します。
<踏み台昇降運動>
片足ずつ上って下りてを繰り返します。
エクササイズ用のものでなくても、高いものをとるときの踏み台などを活用してもOKです。階段を利用するのも手です。
<フラフープ>
広いスペースを確保できるなら、楽しみながらできるので続けやすいです。
とくにウエストが気になるかたにおすすめです。
<エア縄跳び>
実際に縄がなくても縄跳びをしているように手首を回しながらジャンプします。たまに、身体をひねってみたり、バリエーションを加えてやると飽きずに続けられるはずです。子供の頃を思い出してやってみましょう。
1日を通して20分以上
以前は一度の有酸素運動で20分以上続けるように言われましたが、現在では1日を通して20分以上であれば、同じ効果があるといわれています。 まとまった時間を取れない場合は、10分の運動を2回以上など、分けて行うようにしましょう。
筋肉量は落とさずに脂肪量を落としたい時は、有酸素運動の前に筋トレを行いましょう。『筋トレ(無酸素運動)→有酸素運動』の順番で行うことで、効率的に体脂肪を燃やすことができます。
一人で運動するのはどうもという人は、テレビ体操やラジオ体操、動画を見ながらヨガをするというのはどうでしょうか。無理なく続けられる運動のしかたをみつけていきましょう。

こまめに体を動かしましょう
そうは言っても、運動となるとハードルが高いという人は、生活の中で身体を動かすことを心がけましょう。洗い物をする時には、つま先立ち。歯を磨く時はスクワット。今まで以上に窓ふきや雑巾がけを行うのもいいでしょう。リュックサックをしょって、歩いて買い物に行けば、ハイキング気分にもなります。夜寝る前のストレッチは、腹式呼吸と合わせて行いましょう。リラックスできて、良い眠りにつながりますので、習慣化できるといいですね。自分なりのやり方を工夫してみてください。

おわりに
東洋医学研究所®所長 黒野保三先生の長年の研究により、生体制御療法(東洋医学研究所®HP参照)の鍼治療により自律神経が整うこと、免疫力が高まることがわかっています。鍼治療をして新型コロナウイルスに対抗できる身体をつくっていきましょう。

参考引用文献
・新野博子:女性ホルモンの増やし方.株式会社宝島社.2012
・青空レディースクリニック:不調の原因、自律神経失調症は生活習慣の見直しから改善をめざす https://doctorsfile.jp/h/37570/mt/1
・松葉子:自宅で簡単にできる運動ダイエット https://lulucos.jp/by- s/article/576417101949241059
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2020年9月 1日 火曜日

触覚について 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 院長 角田 洋平 令和2年9月1日号

はじめに
今年の春、新型コロナウイルスの蔓延により世界的な行動制限が敷かれる緊急事態となりました。コロナウイルスの影響で外に出掛ける機会もめっきり減ったものと思います。
外出の機会が減ったことにより、例えば買い物や旅行などで何か真新しい、外部のモノに触れるという機会も同時に失いました。インターネットは便利で、そんな中でも観光地や欲しい洋服などの写真を見ることはできますが、何か物足りなさを感じるのは実体を伴わないからです。通販で良いなと思って買ったものが、届いてみたらイマイチだったということはよくある話で、「錯覚」という言葉があるように視覚は騙されることの多い感覚です。それに対し触覚は、触れたモノがそこに実在することを確信させてくれる感覚で、触れる事で安心を得ることが出来ます。「肌に合う」とか「肌で感じる」とはよく言ったものだと思います。
しかし世の中は、コロナ以前からなるべく触れない方向に突き進んでいました。私達が日常で触れるモノの多くは、ツルツルスベスベした工業製品ばかりです。それに、「危険だから」「汚いから」という理由で、母親は子供が好奇心でいじろうとする手をさえぎります。また、各種ハラスメントの認識が一般的となり、触覚に関しての寛容さがどんどん失われてスキンシップも減り、人間関係は昔に比べてはるかに緊張感が増してきているように思えます。
そこに拍車をかけるように今回の大規模感染が起きて、皮肉にも殆どの接触が遮断されました。そんなこともあってか、外出自粛中にネットショッピングで購入した新しいものに触れたり、園芸などの土いじりに多くの人が精を出したのは、三密を避けてきた我々の触覚に対する飢餓感からの行動なのではと思ってしまいます。

自己防衛から社会生活へ
では、触れるということは我々にどんな感情をもたらすのでしょうか?
まず体表の皮膚は、体の広範囲で外界のモノに触れて確認や防御の役割を果たしています。体外と体内を隔てる境界といえる膜で、体温が上がりすぎれば感知して汗をかくし、下がりすぎれば鳥肌を立てて熱の放散を防いでくれます。こういった防御機能や感覚機能の他に、進化の中でもう一つ目的が出来ました。それが"スキンシップ"です。人間に限らず集団で社会生活や家庭生活を営む動物は、積極的に仲間と触れあい、親密の度合いを示すそうです。最初は自己防衛の為に使われていた皮膚感覚は社会生活を維持するための感覚としても発展していったのです。 

無意識に受け取る情報が心に影響を及ぼす
新しいシャツに袖を通して気持ちがシャキッとしたり、料理に使おうとしていた食材が傷んでいたのを知らずにつかんでしまった時の不快感など、モノに触れた時、何らかの感情が沸き起こるということを私達は日常的に経験しています。しかし、受け取っている皮膚からの情報が、無意識下で心に影響を与えていることもあるようなのです。
アメリカの行動経済学者ローレンス・ウィリアムズらは、実験で対象者にホットコーヒーかアイスコーヒーのいずれかを持って、存在しない架空の人物の特徴が記載された文章を読んでもらい、その人物の印象を訊ねました。するとホットコーヒーを持った方は人物の人格を"親切""寛容"と判断したそうです。さらに実験のお礼として「友人へのギフト」と「自分用の品」のどちらかを選んでもらうと、手を温めた人は前者を選ぶことが多かったといいます。その後の実験では、皮膚を温めることで人との対人距離が近くなる・人を信頼しやすくなるなどの結果も出ました。
そのほかにも「硬い」「柔らかい」や「ザラザラ」「ツルツル」などの手触りも知らず知らずのうちに心理的な影響を与えているということも分かってきています。

触覚が心理に与える影響を利用する
触れる事で安心感を得るなどゼロからプラスに働く作用もあれば、うまく利用するとマイナスからゼロに引き戻してくれる作用もあることが分かっています。
ミシガン大学の心理学者スパイク・リーは次のような実験を行いました。まず実験参加者全員に次の物語を読んでもらいました。 
「あなたは法律事務所で同僚と能力を競い合っています。あなたは同僚が失くしたとても大事な資料を発見したとします。あなたがその資料を同僚に返した場合、それは同僚の活動に大きく貢献しますが、逆にあなたの行動に傷をつけます。」
ここで参加者を2つのグループに分け、同僚に「書類は見つからなかった(不道徳な行為)」と、「書類が見つかった(道徳的行為)」とそれぞれ伝える群に分けて、さらに伝える際に口頭で伝える群と、手で文章を打ってメールで伝える群とに分けました。
それを伝えた後、「口内洗浄剤」や「手の除菌ローション」を使いたいという欲求を測定した結果、不道徳なメッセージを「口で」伝えた被験者は、「口内洗浄剤」への欲求が高まり、それを「手で」伝えた人は「手の除菌ローション」への欲求が高まったのです。一方、道徳的なメッセージを伝えた参加者はそのような傾向はみられませんでした。
人は不道徳な行為をすると、罪を犯した体の部分をキレイにしたいという潜在的な欲求がかきたてられるのがわかります。その後の研究で、これは特に道徳的な純粋さに限られた話ではなく一般的に感じる嫌悪感(仕事の失敗や失恋など)についても同じことが言えることが分かっています。
一日の終わりにお風呂で全身を洗うことはそのような意味でもリフレッシュ効果があると言えます。また、神社でも参拝する際は柄杓で手を洗い、口をゆすぎます。嫌悪感を払ってまっさらな心持ちで前向きに願掛けするというのは、先人が培った理にかなった行為なのかもしれません。

おわりに
触覚は感覚器として非常に広範囲に外部から情報を受け取ります。受け取る情報の中には無意識からのものも多く含まれており、それは心に影響して無自覚的にストレスをためてしまっているかもしれません。
一方で皮膚への刺激を利用した治療の最たるものの一つとして鍼灸があります。現代社会で不足している触覚刺激を補うツールとして、鍼灸治療を利用されることをお薦めします。

引用文献
・岩堀修明:図解 感覚器の進化.講談社:2011
・山口創著:手の治癒力.草思社.2012
・山口創著:からだの無意識の治癒力.さくら舎:2019
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