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コラム

2019年7月 1日 月曜日

認知症を予防しましょう 東洋医学研究所®副院長 石神 龍代 令和元年7月1日号

はじめに
急速な超高齢化に直面している日本において、認知症(一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態を指すもの)の患者数は、団塊世代全員が75歳以上となる2025年には約700万人(高齢者の約20%、5人に1人)に上ると予測されています。
そこで、認知症の危険因子と防御因子についての研究内容を紹介させていただき、認知症発症予防にお役立ていただきたいと思います。

1.認知症予防に関する記事
5月17日の中日新聞で「認知症予防重視 認知症対策を強化するため、政府は16日の有識者会議で『予防』を重要な柱とした2025年までの新たな大綱の素案を示した。政府は6月の関係閣僚会議で大綱を決定する。『予防』は政府の従来方針である認知症の人が暮らしやすい社会を目指す『共生』とともに2本の柱に据える。素案には認知症の人数を抑制する初の数値目標を導入し、数値目標として『70代の発症を10年間で1歳遅らせる』認知症の人の割合について6年間で6%低下させることを目指す。10年間では約1割減少することになる。」と報じられました。
これは認知症患者増加による社会負担の増大、介護保険をはじめとする医療福祉財源に対する圧迫を緩和し、高齢者が健やかに長寿を享受できる豊かな長寿社会の実現を目指すためのものと思われます。

2.認知症の危険因子と防御因子
認知症の原因は様々でありますが、その成因がいまだ十分に解明されておらず、根本的な治療法も確立されていないのが実情のなかで、疫学研究によって認知症の危険因子、防御因子を明らかにする研究が行われています。
福岡県糟屋郡久山町における久山町研究は、1961年より50年以上にわたり継続中の生活習慣病の疫学調査であり、65歳以上の高齢住民を対象として、1985年、1992年、1998年、2005年、2012年に認知症の有病率調査が実施されました(受診率90%以上)。さらに、これらの有病率調査を受診した人を全員追跡し(追跡率99%以上)、認知症例は頭部CT/MRIおよび剖検(剖検率75%)によって脳を形態学的に調べてその病型診断を行っています。
この久山町研究の成績を中心に、日本の地域高齢住民における認知症の危険因子と防御因子が検討されています。
♢高血圧
高血圧は日本人が最も罹患しやすい生活習慣病であります。そこで、久山町の高齢住民の追跡調査において、中年期および老年期の高血圧の認知症発症に及ぼす影響が検討された結果、老年期のみならず、中年期の高血圧も老年期における血管性認知症発症の危険因子であることがわかり、中年期からの厳格な高血圧管理が将来の血管性認知症発症の予防にきわめて重要であると考えられます。
♢糖尿病
1988年の久山町検診で75g経口糖負荷試験を受けた65歳以上の住人1017人を15年間追跡した成績を用いて、糖代謝異常の認知症発症に及ぼす影響が検討された結果、正常耐糖能群と比べて糖尿病群ではアルツハイマー型認知症の発症リスクは2.1倍と有意に高く、血管性認知症の発症リスクも1.8倍と高い傾向が示されました。
さらに、糖尿病者、なかでも糖負荷後(食後)2時間血糖値の高値者において、認知症の発症リスクが直線的に上昇していました。
糖尿病は脳動脈硬化の進展、さらにはインスリン代謝障害など、さまざまな機序を介して脳の老化を促進させると考えられていますので、認知症を予防するうえで、糖代謝異常・糖尿病の予防と、その早期診断と適切な管理が重要であると言えます。
♢喫煙
久山町研究の成績を用いて、中年期から老年期の喫煙習慣が認知症発症に及ぼす影響を検討したところ、生涯にわたり、非喫煙であった群に対し、中年期から老年期までの持続喫煙者は、血管性認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクがそれぞれ2.8倍、2.0倍有意に上昇していました。しかし、禁煙をした群では、認知症の発症リスクは低下傾向が認められ、認知症発症のリスクを下げるうえで、禁煙は有効であると考えられます。
♢運動
海外の多くの疫学研究において定期的な運動習慣が認知症の有意な防御因子であることが報告されていますが、久山町研究においても、運動習慣を有する群では、運動習慣を有しない群に比べ、血管性認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクを38~45%有意に低下させることが示されています。
運動が脳に及ぼす効果は、脳血管疾患のリスクや炎症の抑制、脳の成長因子の増加に伴う脳構造の強化や損失の減少、アミロイド蓄積の減少、電気生理学的特性の強化や遺伝子転写の変化などが想定されています。
従来実施されてきた有酸素運動や筋力トレーニングのみでは、軽度認知障害高齢者の記憶等の認知機能を効果的に向上させることは困難でしたが、これらに、さらに記憶課題や計算課題をしながらの運動を組み合わせる、国立長寿医療研究センターが開発したコグニサイズ〈英語のcognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせた造語〉を加えて運動介入を行うことによって、全般的認知機能の保持効果や記憶の向上が確認されています。
♢食事性因子と栄養学的要因
久山町研究において、食事パターンと認知症発症の関係について検討された結果、大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品、果実、芋、魚、卵の摂取量が多く、米、酒の摂取が少ないという食事パターンを有する人は、有しない人に比べ、認知症発症リスクが有意に低下していました。
栄養学的な観点から、単一の食品ではなく、さまざまな食材を用いた栄養バランスの良い食事が、栄養摂取を介して脳の機能維持に貢献し、認知症発症予防に効果的であることが示唆されています。
♢社会参加や社会的交流の少なさと認知症発症リスク
社会的孤立は、孤独死や詐欺被害などの社会的問題に加えて、生活の質の低下、うつ、栄養状態の不良、要介護状態、認知症、死亡などのリスク増加など高齢者の健康状態に多面的に影響することが知られています。
社会参加や社会的交流と認知症発症リスクについて検討した報告によると、社会参加の少なさは1.4倍、社会的交流の少なさと社会的孤立は1.6倍認知症発症リスクを高めています。
まさに「きょういく(今日行くところがある)」「きょうよう(今日用事がある)」の大切さを示唆しています。

おわりに
久山町研究における成績により、加齢に基づく認知症発症リスクは生活習慣病の予防や生活習慣の是正によって軽減できることが示唆されました。
認知症の発症を予防するためには高齢期のみならず、生涯を通じた予防(健康)への取り組みが大切であることを痛感いたします。そのための基本となる心身の健全を保つために、東洋医学研究所®黒野保三所長の長年の研究でその効果が実証されている、個々人のもつ生命力を調整する生体制御療法の鍼治療を定期的に受療されることをお勧めいたします。


参考・引用文献
1)二宮利治、認知症危険因子と防御因子:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018. 280―282
2)島田裕之、運動と認知症予防:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018.288―290
3)水上勝義、社会参加、生涯教育と認知症予防:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018.293―294
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2019年6月 1日 土曜日

正しい靴を選ぼう 東洋医学研究所®グループ  にしだ鍼灸院 院長 西田 修 令和元年6月1日号 

はじめに
人の足の形は大きく3つのタイプに分かれており、それぞれの足に合った靴を選択することが重要です。デザインなどで靴を選ぶ方もいらっしゃいますが、足に合わない靴を履いていると、足に痛みを生じることがあります。
そこで、今回は正しい靴の選び方をお話します。

足の型は3つある
自分の足がどのような形をしているかを考えたことはありますか?実は、足の形は人それぞれ違います。足型は、エジプト型、ギリシャ型、スクウェア型の3つに分けられます。日本人は約8割がエジプト型、約2割弱がギリシャ型、残りがスクウェア型です。
エジプト型は、親指が一番長く、小指の方にいくにつれて徐々に短くなっていきます。ギリシャ型は、人差し指が一番長いことが特徴です。イメージとしては、ヒール靴のような足の形です。スクウェア型は、5本の指の長さがほぼ同じになっているタイプです。まずは、自分の足がこの3つのタイプの中のどれに当てはまるかを知ることがポイントです。

靴の構造と役割を知る
靴は唯一地面と足部をつなぐ、いわば体の一部分です。靴の構造を理解することは重要です。
靴はアッパーと底で構成されます。アッパーとは、足部の上側を覆う部分です。外部からの衝撃や天候(雨や雪暑さなど)から足を守ります。アッパーがあることで、足部はしっかりと固定し安定します。底は、靴の底の部分であり、足部の土台となります。地面からの衝撃を吸収し、石や危険物(釘やガラスなど)から足部を守ります。靴は細かく名称がついており、多くのパーツが組み合わさってできています。

足型にあった靴の選び方
靴を選ぶときは、それぞれの足型に合わせた靴型を選びます。エジプト型は親指部分が長く広いオブリークトゥ(つま先が斜になっている靴)との相性が良いです。ギリシャ型は人差し指が最も長いため、ラウンドトゥ(つま先が丸くなっている形の靴)との相性が良いです。スクウェア型は長い指がなく曲線を描いているため、スクエアートゥ(つま先が鈍角にカットされた形の靴)との相性が良いでしょう。
例えば、エジプト型でラウンドトゥを履いたらどうでしょうか。ラウンドトゥは靴の真ん中が長く作られているのに対し、エジプト型は親指が最も長いです。このまま履くと、親指が内側へ締め付けられてしまうことがわかります。この状態は外反母趾の一因となります。

夕方に靴を買いましょう
皆さんは靴を買う時間帯を意識したことはありますか。実は靴を購入するにも、ゴールデンタイムがあります。それは夕方です。なぜ夕方に購入するのが良いのか、それはむくみと関係しています。
足がむくんでない状態で買うと、足がむくんだときにパンパンにきつくなってしまうからです。靴がきつい状態では、指が圧迫を受け、外反母趾など足指のトラブルへとつながります。
靴を選ぶときは、かかとの部分をしっかりと合わせます。靴の先には「捨て寸」という部分があるため、つま先と靴先の間に指が1本分ぐらい入る余裕をもたせましょう。つま先が靴の中で当たっていないかを確認しましょう。
靴のサイズは、足の縦の長さである足長(足のかかとから、もっとも長い足指の先端までの長さ)で選ばれやすいですが、横幅である足幅(足の親指と小指の付け根にある骨の出っ張り)も重要です。同じ足の長さであっても、足幅が広いこともあれば、狭いこともあります。靴のサイズをみるときは、足長と足幅をみることがポイントです。
この他にも甲の部分がきつくないか(靴紐がある靴を選ぶ)、かかとの部分が柔らかすぎずフィットしているかなどを確認します。
またもう1つ、つま先の部分がしっかりと動き、指の関節である中足趾節関節(足の指の付け根の関節)と靴の曲がる部分があっているかどうかも確認します。歩行時につま先で地面を蹴るとき、中足趾節関節と靴の曲がる部分が合っていないと、うまく地面を蹴ることができません。この部分もしっかりと確認し、足にフィットした靴を選びましょう。

おわりに
今回、正しい靴の選び方についてお話しをさせて頂きました。足は体で唯一地面と接している部分です。家で例えるなら土台と同じです。土台がしっかりしていないと、いくら建物が良くても不安定になります。無理して合わない靴を履いてしまうと、体にさまざまな影響を与えます。
また、鍼治療も健康管理には欠かせないものです。鍼治療は、血行を良くする効果があります。鍼治療を受けられた方の中には鍼治療中から身体がポカポカとし、むくみがすっきりとすることを感じられる方がおられます。
ぜひこの機会に、自分の足に目を向けてみてはいかがでしょうか。正しい靴を履くことと、定期的に生体制御療法(東洋医学研究所®HP参照)の鍼治療をして、体調を整えていくことをおすすめします。

引用文献
・桜井亮輔:図解入門よくわかる足部・足関節の動きとしくみ 2018.10 秀和システム
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2019年5月 1日 水曜日

認知症の基礎知識 東洋医学研究所®グループ  ことぶき鍼灸院 院長 秋田 壽紀 令和元年5月1日号

はじめに
超高齢社会となっている現在の日本ですが、総人口に占める高齢者人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降一貫して上昇が続いており、1985年に10%、2005年に20%を超え、2018年には28.1%となりました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。
このように急速な超高齢化に直面している日本において、認知症患者の人数も増加しており、2012年には462万人でしたが、2025年には700万人を超えると予測されています。
治療院で、高齢の患者様と接する機会が良くありますが、自分が認知症になるのではないか、最近物忘れをするようになったから認知症になっているのではないかという心配の声をよく聞きます。加齢による物忘れと認知症による初期の記憶障害は区別が難しいので、心配になってしまうのは仕方がないでしょう。しかし、認知症に対する知識を身につけることである程度、区別することができ、認知症の早期発見にもつながります。また、早めに対処することで、認知症の進行を遅くすることもできるため、知識を身につけておくことは大切です。
そこで今回は、認知症の基礎知識、特に認知症の症状について説明していきます。

認知症とは
「認知症」は、病名ではなく、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたために、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことを示す言葉です。認知症と言えば記憶障害のイメージが強いと思いますが、認知症では記憶だけでなく、認知機能全体が障害されるため社会生活に支障をきたしてしまいます。
認知症の原因となる病気には様々なものがありますが、もっとも割合の高い病気は、脳の神経細胞が通常よりも速いスピードで減少し、脳が委縮してしまうアルツハイマー型認知症で、全体の67%を占めるとされています。次いで、脳の血管が詰まったり、出血したりすることで脳が障害される脳血管型認知症が19%、レビー小体という異常なたんぱく質が脳に現れ、神経細胞が減少するレビー小体型認知症が5%という割合になっています。原因となる疾患によって認知症の症状は変わってきますが、認知機能が低下するという点は共通しています。

認知機能とは
認知機能とは、理解、判断、論理などの知的機能のことを言い、五感(視る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう)を通じて外部から入ってきた情報から、
・物事や自分の置かれている状況を認識する
・言葉を自由にあやつる
・計算する、学習する
・何かを記憶する
・問題解決のために深く考える
などといった、人の知的機能を総称した概念です。 
認知症ではなくても加齢によって認知機能は変化します。加齢の影響は認知機能を構成するそれぞれの要素によっても異なります。教育や学習などの社会文化的経験によって発達した能力は、高齢になっても比較的良く保たれます。高齢になっても活躍をする芸術家、文芸家、政治家、組織や企業の指導者などは、世の中にたくさんいます。それに対し、新しい環境に適応するために問題を解決していく能力は、加齢に伴ってその機能が低下することが知られています。また、脳内での処理速度が加齢に伴って遅くなっていくため、課題を遂行するのが総じて遅くなっていき、瞬時の反応や判断というものは苦手になっていきます。
 
認知症の症状
このような認知機能が生活に支障が出るレベルまで低下した状態が認知症と言われますが、主な症状として「記憶障害」「見当識障害」「失語」「失行」「失認」「遂行機能障害」の6つがあります。

・記憶障害
記憶には、記銘(まず何かを覚えること)、保持(覚えた記憶を情報として維持すること)、想起(維持している情報を思い出すこと)の3つの流れがあります。誰でも、若い時から物忘れをすることがありますが、通常の物忘れでは「想起」が問題となっている場合が多いと考えられています。加齢による物忘れも同様です。ですから、思い出すきっかけやヒントがあれば思い出すことができます。また、買い物や外出した時に、何を買ったか、何があったかという出来事の一部を忘れてしまうことはありますが、出かけたこと自体を忘れてしまうことはありません。
一方、認知症の記憶障害では、はじめの「記銘」が問題となります。ですから、ヒントなどを出しても、記憶の記銘自体ができていないので、思い出すことはできません。また、出来事自体を忘れてしまったり、忘れているということを自覚できていない場合があります。そのため、話をしていてもつじつまが合わないことや、何度も同じ話を繰り返す、話の脈絡をすぐ失うということが多くなってきます。また、物を無くしやすくなり、盗まれたと勘違いしてしまうこともあります。新しいことは覚えられませんが、昔から覚えていることや、楽器や裁縫、家事などの手続き記憶といわれるものは比較的保たれるのも特徴です。
加齢による物忘れと、認知症の記憶障害とを区別するポイントは、物忘れをしている自覚があるかどうか、日常生活に支障があるかどうか、ヒントやきっかけがあれば思い出せるかどうかという点になります。認知症であると気が付くきっかけはこの記憶障害であることが多いので、注意するポイントになります。

・見当識障害
見当識とは、自分が置かれている状況、例えば年月日、時間、季節、場所、人物などの状況を正しく認識する能力です。見当識に障害が起きると、今日は何月何日か、今が何時か、今自分がどこにいるのか、誰と話をしているかなどが正確に認識出来なくなります。
そのため、遅刻をする、外出の準備ができない、慣れている道でも道順がわからなくなる、トイレの場所が分からなくなるなどの症状があらわれます。

・失語
失語とは話をできる機能は保たれていても、会話ができない状態のことです。失語には運動性失語という「聞いた言葉は理解できるが話せない」ものと、感覚性失語という「話はできるが言い間違いが多かったり話の内容が理解できていない」というものの、2種類があります。

・失行
失行とは、運動障害が見られないにもかかわらず、日常生活で普通に行っている行動ができなくなることです。例えば、ネクタイが結べなくなる、着替えができなくなる、うがいができなくなると言った日常動作ができなくなります。

・失認
失認とは、目や耳などの異常はみられないが、物体を認識できない、周りの状況を理解することができなくなることです。例えば、普段歩き慣れている道が分からなくなる、道具の使い方が分からなくなる、赤信号を見ても止まらない、などの症状があらわれます。

・遂行機能障害
遂行機能障害とは、計画を立てて物事を行うことができなくなることです。例えば、料理をするときには、まず、作る料理を決めて、同時進行で野菜を切ったり、お湯を沸かしたり、調味料を適量で使ったりと様々な作業を計画的に行う必要があります。それができなくなるので、料理を作れても時間がかかるようになってしまったり、味が変わってしまったりします。また、何か問題が起きたときにはうまく対処できなくなってしまいます。

このような、認知機能の低下による症状を認知症の「中核症状」と言います。
一方、中核症状によって引き起こされる二次的な症状を「行動・心理症状」や「周辺症状」と言います。中核症状が元となって、行動や心理症状に現れるもので、本人の性格や環境、心理状態によって出現するため、人それぞれ個人差があります。
例えば、認知症になり、様々な認知機能が落ちてくると、日常生活に支障が出てきます。できないことが増えることから、気分が落ち込む(抑うつ)状態が見られることがあります。この抑うつや不安が行動・心理症状の一つで、比較的初期から多くの人に見られる症状です。意欲の低下や不眠、食欲が落ちたり何事にも興味を示さなくなるなどの症状もあらわれるので、うつ病とも誤解されがちですが、認知症の行動・心理症状としてのうつ状態です。うつ病が悲観的なのに対し、認知症によるうつ状態は無関心が多いと言われています。
行動・心理症状の行動症状として睡眠障害や徘徊、介助への拒絶、異食・過食、徘徊、暴力、不潔行為などがあり、精神症状として不安、抑うつ、怒りっぽくなる、意欲の低下、妄想、妄言、幻覚などがあります。多岐にわたる症状で、介護者にとっても大きな負担になります。しかし、行動・心理症状は本人の心の表現であり、このような症状があらわれるのはそれだけストレスがかかっているという証拠でもあります。環境や対応を変え、本人の負担を軽減することで、行動・心理症状が改善するということもあります。

おわりに
今回は、認知症の基礎知識として、認知症の症状について説明してきました。通常の加齢による変化と認知症による変化を見極め、早めに対処することで認知症の進行を遅くすることもできます。しかし、最も大切なのは、認知症にならないように予防をするということです。認知症には、睡眠や運動、食生活などの生活習慣が大きく影響を与えます。また、糖尿病や、高血圧などの生活習慣病も認知症のリスクになることが分かっています。
鍼治療は、これらの生活習慣病に対して効果があることを示しています。また、鍼治療は認知症の認知機能の低下に対して効果があるという研究も報告されています。ですから、生活習慣の改善とともに是非、鍼治療を取り入れて、認知症の予防をしていきましょう。

引用・参考文献
・総務省統計局 統計トピックスNo.113 統計からみた我が国の高齢者
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1130.html
・認知症施策の現状 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000...Soumuka/0000069443.pdf
・デール・プレデセン:アルツハイマー病 真実と終焉. ソシム.2018 
・池上晴之:NHK今日の健康大百科NHK出版.2010
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008
・Bai-Yun Zeng.Effect and Mechanism ofAcupuncture on Alzheimer'sDisease. International Review of Neurobiology;Volume 111.181-93.2013
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2019年4月 1日 月曜日

女性の美と健康に関わる女性ホルモン 東洋医学研究所®グループ  たかやま鍼灸院 院長 高山 加奈子 平成31年4月1日号

40代以降の女性が感じる心身の変化には、女性ホルモンが大きく関係しています。女性の健康に大きく関わる重要なホルモンですが、実はよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は女性ホルモンの役割について確認したいと思います。

女性のリズムに関係する女性ホルモン
ホルモンは体内で分泌される物質で様々な器官や組織をコントロールしています。その中で、女性特有の体つきや体のリズムに大きな影響を与えるのが女性ホルモンです。女性ホルモンは脳の中心部にある脳下垂体の命令で分泌されています。命令を受けた卵巣が女性ホルモンを作り、分泌します。分泌されたホルモンは血管から血液に入り、全身を巡り、からだを調整します。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。

女性らしさに関わるエストロゲン(卵胞ホルモン) 
妊娠に不可欠な卵胞を受精卵へと成長させるために必要なホルモンです。また、骨の密度を保つ作用や、血管を強くして動脈硬化を防ぐ役割があります。その他に、血圧やコレステロールをコントロールする作用もあります。女性の健康はエストロゲンによって守られていると言えます。また、エストロゲンは女性特有の丸みを帯びた体をつくり、肌や髪の潤いを守ってくれます。女性らしさを引き出すホルモンなのです。

妊娠をつかさどるプロゲステロン(黄体ホルモン)
プロゲステロンは受精卵の着床のために子宮内膜を整えたり、基礎体温を上昇させたりする働きがあり、妊娠を維持するために働きます。体内に水分を保つ作用があるため、体がむくんだりします。腰痛や腹痛、イライラなど、生理前に体に変化が現れるのは、プロゲステロンの影響だと言われています。
※2つの女性ホルモンは、月経と連動し、約28日の周期でそれぞれの分泌量のバランスを変化させます。女性の体と心の変化は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量バランスが変化したときに現れます。

年齢と共に減少する女性ホルモン
女性が一生のうちに分泌する女性ホルモンの量は、なんとティースプーン1杯ほどです。
このわずかな量によって、女性の美と健康は保たれているのです。
しかし、女性ホルモンは年齢と共に減少していきます。女性ホルモンの分泌量のピークは20代後半から30代前半。30代後半になるとその分泌量は徐々に低下を始めます。閉経前後の45~55歳には激減していきます。50代後半になると、卵巣はわずかな女性ホルモンしか分泌しません。卵巣の働きが止まったら、女性ホルモンは分泌されないのです。(図1)


図1

女性ホルモンが分泌される目的は、妊娠して胎児を体内で育てるためですから、年齢とともに減ってくるのは仕方のないことです。しかし、女性ホルモンのサポートを受けられなくなった時に自分の体に何が起きてくるのかということについて考え、対処していくことが必要です。これから先の健康についても考えてみましょう。 

卵巣を元気にしよう!
卵巣が元気に長く働いてくれれば、その間は女性ホルモンは分泌されます。腰痛や冷え性がある人は血液の循環が滞り、卵巣の働きが弱くなっている可能性があります。卵巣に十分な栄養が行き届くように血液の巡りをよくすることを始めましょう。
・バランスの良い食事をしましょう:血液は毎日の食事からつくられます。食事を見直して質の良い血液を作りましょう。
・体を積極的に動かしましょう:血液の循環がよくなり、卵巣をはじめ内臓や、筋肉に酸素や栄養を十分に届けることができます。無理なく続けて、体を動かすことを習慣化しましょう。
・鍼をすることで血液循環がよくなります:自律神経を介して卵巣血流の改善が認められることが分かっています。
定期的に生体制御療法(東洋医学研究所®HP参照)の鍼治療をして、血流改善をすることで、体調を整えていくことをおすすめします。

参考引用文献
・新野博子:女性ホルモンの増やし方.株式会社宝島社.2012
・武谷雄二:エストロゲンと女性のヘルスケア.メジカルビュー社.2015
・中村一徳:ninニン~妊活情報サイト~ http://www.nin.club/
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2019年3月 1日 金曜日

汗腺の発達について 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 院長 角田 洋平 平成31年3月1日号

はじめに
思い起こすこと数か月前、昨年は様々な異常気象に見舞われた一年でした。中でも私自身初めての経験で、記憶に残っているのが新潟県で観測史上初の気温40℃超えのニュースでした。テレビなどでたまに目にしますが、いざ自分の住んでいる所が摂氏40℃を超えた世界になると危機的なものを感じます。大人の私ですらそうなのですから、小さいお子さんのいる家庭では尚更の事だと思います。真夏の日中、外から聞こえる市役所の熱中症の注意勧告の放送。昔は夏休みといえば昼ご飯も食べるのを忘れて夕方暗くなるまで虫取りだの何だのと遊んだものですが、このような気候ですと真夏の昼間に冷房の効いた部屋から出づらいといった状況が出来上がっていると言えます。
昨年の9月1日の朝日新聞デジタル版では、「夏場に冷房の効いた部屋から出ないのは暑い環境における汗腺発達の機会が奪われているのではないか」と懸念していました。そう、危険な程の暑さが故に元々体に備わってる"汗をかいて体を冷やす"という機能の発達を阻害している可能性があるのです。

汗は優秀な放熱装置
昨年インターネットで見かけた記事で『キッチンペーパーだけで約10分で常温のビールをキンキンに冷やすことができる方法』というのがありました。濡れたキッチンペーパーをビール缶にぐるぐる巻き付け乾燥している冷蔵庫に入れておくことで、ペーパーに含まれている水分が蒸発すると一緒にビール缶の熱も奪われるといった、汗が乾く際に熱を奪う気化熱の作用を利用したものです。記事によると缶ビール1本冷やすのに4時間くらいかかっていたのが、10分程で飲み頃の美味しく冷えたビールになるようです。それと同様に人間の汗の気化熱による身体の冷却機能も暑熱環境適応という面で大変優れているのです。
こうして全身に汗をかくのは実は人間くらいのもので、他の動物は犬を見てるとよく分かるように、ハッハッと小刻みに浅い呼吸を繰り返して(浅速呼吸)上がった体温を下げます。この呼吸とわずかばかりの汗腺が体の一部に備わっているのみです。多くの動物はケガや直射日光、寒冷による体温低下を防ぐために体毛を発達させた一方で、ヒトの体毛は退化しほとんどが非常に細いうぶ毛になり、代わりに汗腺が発達しました。その結果、体温の上昇を発汗で効率よく緩和出来た事によって長時間の歩行・走行が可能になりました。歩行や走る事で42・195㎞も一度に移動出来るのは人間くらいのもので、元気な人は喜んでお金を払ってそれをこなします。他の動物がいくら真似しようとしても、あっという間に熱処理できず熱中症で倒れてしまいます。実際昔の人間の狩りは獲物を追い込んで追い込んで熱中症で動けなくさせてから仕留めていたようで、そのおかげで危険な目に遭う事なく大型の獲物も仕留める事が出来たようです。こうした長距離の移動能力は人類がアフリカ大陸で誕生し、瞬く間に各地に散らばり繁栄できた要因の一つともいえます。

働く汗線の数が増えるのは2歳半まで
人間が進化の中で獲得した叡智ともいえる発汗機能ですが、温熱刺激により汗腺能力は起動し、当然ながら涼しい・寒いといった環境では放熱は命取りになるためあまり機能しません。汗腺の機能が出来上がるのが2歳半ごろといわれています。気温の高い地域の住民ほど分泌能力を持つ汗腺(能動汗腺)が多いのですが、成長してから熱帯に移住しても能動汗腺の数は増えません。暑い環境で乳幼児期を過ごせば、働く汗腺の数は増加することになります。その能動化は2歳半までに完了するので、暑い環境に適応する意味で夏に汗をかくことが大事なのです。 しかし昨今の猛暑はそういった意味で汗腺発達の機会を奪っていると言えます。 

汗腺の能力をあげていく
しかし気温が40度近い中に乳幼児を放り出せともいえません。もはや命に関わりますので、真夏は冷房をしっかり使って熱中症対策をしなければなりません。ただ地球の温暖化が進む中で、ある程度は暑さに耐えれる身体を作っていきたいものです。ちょうどこれから寒さもほころび、外出しやすくなってきます。まだ暑さが厳しくならないうちにお子さんと外出したり外で運動させてたっぷり汗をかかせるのも一つの手です。先ほど汗腺の数の増加は2歳半までに完了するといいましたが、汗腺一つ一つの能力は成長と共に発達していきます。学校での登下校や運動、帰ってからしっかりお風呂につかる事でその機能は伸びていき、汗をかく夏の準備はされていきます。

おわりに
熱中症という言葉が定着して久しいです。稀有な能力として得た発汗機能を保持すると共に、まだちょっと先ですがこれから来る夏には汗で排出される水分・塩分補給等に気を付けて下さい。また熱中症予防という観点から言えば睡眠・疲労をためないようにするなど普段の体調管理も重要です。
これからの極端な気候を乗り切るために是非とも鍼灸治療をお薦め致します。

参考文献
・ダニエル・E・リーバーマン.人体六〇〇万年史─科学が明かす進化・健康・疾病(上).ハヤカワノンフィクション文庫.2017.
・塩原哲夫.アトピー性皮膚炎と発汗.別冊医学のあゆみ アトピー性皮膚炎.2009.
・汗をかく力は25歳までに? エアコンは子どもに悪いのか
https://www.asahi.com/articles/ASL8Y42N0L8YUBQU00F.html?iref=com_apitop
・キッチンペーパーだけで!約10分で常温のビールをキンキンに冷やすことができる方法  https://togetter.com/li/1300297
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