• 膨大な臨床鍼灸の研究実績
  • 91.9%の効果を実証
  • 早い・短い痛くない治療

コラム

2019年11月 1日 金曜日

笑門来福11 東洋医学研究所®グループ水野鍼灸療院 院長 水野 高広 令和元年11月1日号

子どもの笑顔って、最高ですよね。

鍼治療の凄いところは、年齢を問わずに治療できる事でしょう。

子供に鍼?と思われる方も多いと思いますが、当院ではゼロ歳から治療を開始することも珍しくありません。

鍼は、大人と違って刺すようなことはしません。擦るように鍼をします。とても気持ちがよく、治療中に眠くなってしまう子もいます。

調子の悪い子供さんは見るに堪えられず、胸がつまされる思いになりますが、治療を続けていくうちに、だんだん元気になって笑うようになります。

その時の笑顔が毎回忘れられません。

その子が大きくなって、当院に遊びに来たり、進学、就職などの報告に来てくれることもあります。

アトピー性皮膚炎などは、見た目も痛々しく本人もさることながら、両親、おじいちゃん、おばあちゃんもとても悲しい気持ちになります。
それがだんだんきれいになっていくと、子供もよく眠れるようになることもあって、元気いっぱいになってきます。当然、お父さん、お母さんの笑顔も増え、子供の肌に触れられることの喜びを感じ、子供も触れられることが気持ちいいのでどんどん症状が改善していきます。

このNちゃんは、かなり重症でしたが、2年程の治療でとてもきれいになりました。


 

 

最初は、シャツも肌に引っ付いて脱がすのも大変で、ベッドにも滲出液と血がかなりついている状態でした。

治療を重ねるうちに元気に飛び跳ねるようになり、大きな声で歌うようになったり、とても上機嫌で治療を受け続けてくれました。
保育園でもとても元気で、プールに入れるようになったことも精神的にとてもよかったようです。
みんながプールに入っているのを横目に見ながら指をくわえてみているのは、とてもつらく悲しいことだったと思います。
お肌がきれいになってくるにつれ、お母さんとおばあちゃんはNちゃんにほおずりして喜んでいました。
この瞬間は治療家として至福の時です。

現在でも時々症状がひどく出ないように治療に来てますが、お肌もスベスベで触り心地がとてもいいです(笑)。
そして、幼稚園に上がったNちゃんは、園内でも一番元気で、楽しく過ごしているようです。
ほんとに子供の笑顔って周りの人を幸福にして世界を明るく照らします。
 
   
 
最後に、この様な重症のアトピー性皮膚炎をここまで回復させてくれる鍼治療を教えてくださった師匠の黒野保三先生には、とても感謝しております。
これからも、もっとたくさんの笑顔で世界を明るく照らす手助けがずっとできるように頑張っていきたいと思いました。
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2019年10月 1日 火曜日

第72回世界保健総会(WHO)において、国際疾病分類ICD-11に伝統医療(鍼灸や漢方薬など)を新たに導入することが採択されました 東洋医学研究所®グループ  井島鍼灸院 院長 井島 晴彦 令和元年10月1日号

はじめに
2018年1月9日の産経新聞は、「漢方薬や鍼灸など(伝統医療)をWHOが認定へ」という見出しで、漢方薬や鍼灸など日本や中国の伝統医療が、2018年の6月に開催される世界保健機関(WHO)の総会で認定される方針であることを報じました。具体的には、国際的に統一した基準で定められた疾病分類である「国際疾病分類」(ICD)に、伝統的な東洋医学の章が追加され、100年以上、西洋医学一辺倒だった世界の医療基準の転換点となるとともに、中国と異なり独自に発展してきた日本の伝統医療の再評価につながるというものでした。
関係者によると、WHOが伝統医療に注目したのは、同機関で扱う医療の統計が西洋に偏り、伝統医学での治療に依存しているアジアなどでほとんど統計が取られていないとされる「情報格差」を埋めることが目的であるということでした。
その後、2018年 6 月の世界保健総会でICD-11が公表され、2019年 5 月に採択されました。
今回はICDとは何か、そしてICD-11の開発経緯について紹介させて頂きます。

ICDとは
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき,世界保健機関(WHO)が作成した分類であり、WHO国際分類ファミリーにおける「中心分類」の一つです。
ICDは1900年(明治33年)に国際会議で初めて採択され、当初は死亡統計の分類として使用されていましたが、時代のニーズに応えて疾病統計等へ視野を拡大して改訂を重ねてきました。我が国でも1900年からICDを採用し運用を行っており、現在では、ICD-10に準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を作成し、統計法に基づく統計基準として告示改正を行い、2016年より人口動態統計や患者調査等の公的統計に使用しているほか、医療機関における診療録の管理等に活用されています。

ICD-11の開発経緯
ICD-10改訂から約30年経ち、時代が要請する様々なニーズに応えていくため、2007年からICD-11の開発が開始されました。2016年に東京で開催されたICD-11改訂会議において加盟国レビュー用のICD-11案が公表、多くの診療情報管理士の協力も得ながらフィールドテストを進め、2018年 6 月のICD-11公表を迎えました。この公表を受けて、加盟国は自国の適用へ向けた準備を開始し、2019年 5 月世界保健総会で採択されました。
ICD-11の特徴の1つとして、漢方薬や鍼灸など日本や中国の伝統医療が、新たに導入されました。日本の漢方は古代中国に起源があるものの、西洋医学と融合し、中国とは運用方法や処方の作り方も異なるなど独自の発展を遂げました。鍼灸も奈良時代に漢方とともに伝えられ、「日本の医療」として進化しました。
ICDの作成にも携わった千葉大学の並木隆雄診療教授(和漢診療学)は「WHOに公式に認められれば、日本の伝統医療の地位向上に役立つ。科学的な調査のもと、漢方の有効性も検討でき、成果は国民に大きく還元される。」と話されています。
 

おわりに
アメリカ・ドイツ・中国に代表される世界の国々では、鍼治療の研究が盛んに行われ、医療の現場に積極的に取り入れられるようになりました。そのような世界的な流れの中で、ICD-11に伝統医療を新たに導入することが採択されたと考えられます。そしてこの流れは、昨年からNHKの「ガッテン」などで鍼灸治療が何度か取り上げられたように日本にも押し寄せています。
東洋医学研究所®の黒野保三所長は、鍼灸の地位を高めたいという情熱を持ち続け、昭和35年から鍼灸医学の基礎研究・臨床研究によって鍼灸診療を行ない、多くの研究を積み重ねてこられました。そして、伝統ある鍼灸医学の真髄を基盤とし、東西両医学の提携により治療の完璧を期すると共に、学会などの組織の拡充、人材の育成にも努めてこられました。
東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループは、黒野保三所長の理想とする「東洋医学と西洋医学の長所を融合した長寿社会の全人的医療」を実践させて頂く好機を迎えたと感じます。
是非、この機会に健康に関するご相談を東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループにお寄せ下さい。

引用・参考文献
1)産経ニュース:漢方薬や鍼灸など「伝統医療」WHOが認定へ 日本の漢方、地位向上へ
https://www.sankei.com/life/news/180109/lif1801090004-n1.html
2)森桂:ICD-11国内適用の展望. 厚生労働省政策統括官(統計・情報政策、政策評価担当)付 参事官付国際分類情報管理室 日本WHO国際統計分類協力センター
http://www.who-fic-japan.jp/img/events_attended/report_who_japan_forum2018/03_04.pdf
3)ICD-11の概要:第7回社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会資料. 
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000342700.pdf
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2019年9月 1日 日曜日

女性に多い骨粗鬆症を何とかしたい 東洋医学研究所®グループ  福田鍼灸院 院長 福田 裕康 令和元年9月1日号

はじめに
骨粗鬆症の患者数は推計1280万人に及び、高齢化の進行により更なる増加が見込まれています。
骨粗鬆症の怖さは、圧迫骨折を起こしやすくなるところにあります。圧迫骨折とは、骨がもろくなってしまったことが原因で背骨が押しつぶされるように変形してしまう骨折のことです。さらに怖いことに、骨折したまま放置しておくと、数週間から数カ月かけて徐々に押しつぶされた背骨が脊髄を圧迫して、麻痺症状が出ることがあります。たとえば足が動かなかったり、また、お腹が圧迫されて逆流性食道炎や心肺機能の低下などにつながることや、関係がないと思われるかもしれませんが、トイレがちかくなったり、逆に排尿の感覚がなくなることがあります。重症化すると寝たきりの原因にもなり、認知障害への第一歩を踏み出してしまうこともあります。
それでは、この骨粗鬆症はなぜ女性に多いのか、探ってみましょう。

なぜ女性に骨粗鬆症は多いのか?
患者における女性の比率は男性の3倍以上であります。骨粗鬆症の発症リスクは成長期に獲得できる骨量(骨密度)ピーク値に依存しますが、その値は女性は男性よりも低いことが知られています。骨量ピーク値が男性の方が高いのは、骨自体の性差に加えて、男性は女性に比べて体格がいいので骨格筋量および運動量に依存した骨循環の活性化が高く、結果として骨代謝が促進されているからです。
年齢を重ねるとともに男女に共通する骨量減少があります。これだけであれば男性も女性と同様に骨粗鬆症を発症するはずです。しかし、女性では閉経後の女性ホルモン低下により骨の新陳代謝バランスが崩れ、骨量の減少が加速すると考えられているため、より多くの骨粗鬆症が発症します(図1)。
骨粗鬆症の原因は骨形成と骨吸収の不均衡にありますが、骨代謝維持のためには、他の臓器・組織と同様に代謝需要に見合う血流の維持が不可欠です。女性ホルモンは血管を広げる作用や抗動脈硬化作用をもっているので、閉経後の骨粗鬆症を悪化させる原因として骨循環障害の存在が示唆されます。他にも、性差以外の危険因子である加齢、メタボリック症候群、生活習慣病が血管機能障害を伴うことから、骨粗鬆症は全身の血のめぐりが悪いことの一面として現れている可能性が大きいことが考えられます。

動物実験からわかった骨の血流
骨密度を増やすには運動がいいことはわかっています。では、運動をさせると骨の血流はどうなるでしょう。骨密度を増やす方法として推奨されるレジスタンストレーニングを足に10週間施したモルモットにおいては、足を曲げる力が増え筋肉が疲労しにくくなったことに伴って骨の一番外側にある血管が広がりやすくなり、多くの血流を送ることができました。これは、運動による骨血流増加を示唆しており骨代謝が促進される可能性を示しました。この骨膜動脈は骨の外側の血流であるため、特に成長期の骨形成や骨修復において重要な役割をしていると考えられます。
一方、骨代謝を促進して骨密度を維持する上では、骨の深いところまで入っていく栄養血管といわれる血管が重要な役割を担っています。そこで、骨膜血管と栄養血管が縮まる力を比較検討したところ、栄養血管では、普通の血管ではない特別な伝達物質であるセロトニンが関与している可能性がでてきました。少し話が飛びますが、セロトニンが関与する病気としてうつ病があり、これが女性の方の罹患率が多いことや、治療薬であるセロトニンを阻害する薬は女性の方が効きやすいという報告があります。
これらのことを考えると、まだ推測の域ではありますが、女性の骨粗鬆症には骨に送られてきている栄養血管の血流が大事であり、まだ解明されていない男性とは違った制御が存在する可能性があります。 

おわりに
鍼治療は血流を良くすることは良く知られています。また、骨粗鬆症をもちながらも骨折もなく健康を保てる患者さんもたくさんおられます。骨の血管動態の解明と東洋医学研究所®に積み上げられた研究業績から、高齢化に伴う鍼治療の有効性がはっきりとしてくると思います。今後に期待してください。
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2019年8月 1日 木曜日

睡眠教育のスペシャリスト 「睡眠育成士」誕生 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長 皆川 宗徳 令和元年8月1日号

〇睡眠育成士について
平成30年3月に、名古屋市立大学睡眠医療センター長の中山明峰先生は「現在、子供に限らず、全国民の睡眠動態が悪化しており、睡眠障害は社会的に大きな損失となっている現状を鑑み、これからは、睡眠教育の普及が非常に重要であり、小中学校、企業などで、睡眠教育を実践するためには、睡眠育成士の養成が急務である。」と睡眠教育の重要性を訴えられました。
公益社団法人 生体制御学会は従来の研究活動の中で生体制御学会不定愁訴班が行ってきた睡眠研究において、鍼治療が有効であったことをふまえて、睡眠教育の重要性を広く一般市民の方々にも普及できるのではないかと考え、平成30年6月から生体制御学会定例講習会において、名古屋市立大学睡眠医療センター認定睡眠育成士認定講座を開講しました。
この睡眠育成士認定講座は年間で5回実施され、全4単位を取得し、最後に認定試験を受け合格した54名に、令和元年6月2日、名古屋市立大学睡眠医療センターより第一回の睡眠育成士認定証書が授与されました。
睡眠育成士は、睡眠衛生について学んだことを非営利的に情報を拡げることを目的としており、本講座で認定された睡眠育成士は、学校などの教育施設より睡眠教育の要請があった際には積極的に応じていき、学校などで睡眠の大切さを伝え、児童生徒の生活習慣を改善させる活動をしていきます。


〇発達期の子どもの睡眠の現状と問題点
文部科学省では、2014年に「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」として、全国的な実態を把握することと、生活習慣と小中高生の心身の状態との関連を明らかにすることを目的として2万人規模による全国的な調査を実施しました。
まず、調査は全国の小学5年生から高校3年生までの(学年ごと100校)計800校を対象に行われました。有効回答数は2万3139名でした。「次の日学校がある日」の就床時刻を見ると、小学生でも午後11時以降が15%近くいることがわかりました。また学年が上がるごとに夜更かしは増え、高校生では50%弱が夜12時以降に寝ています。
調査結果から、就寝時刻・起床時刻・さらに朝食欠食が「午前中調子が悪い」と関連していることがわかりました。また朝食を食べない小学生ほど「なんでもないのにイライラする」と答え、就寝時刻が早い子ども、朝食時、家の人と会話している小学生は「自分のことが好き」と答えています。体は気持ちを代弁し、気持ちは体が発する本音のメッセージでもあります。十分な睡眠がとれて、朝、機嫌よく家族と朝食をとる子どもは、登校時、元気で前向きな気持ちでいるに違いありません。 学びに向かう姿勢は、実は子どもの生活習慣が支えているといえます。

もうひとつ、今回の調査でも重要性が確認されたことがあります。それは生活リズムの問題であります。「次の日に学校がある日とない日」とで起床・就床時刻が2時間以上ずれることを尋ねると、「よくある」「ときどきある」をあわせ、3〜4割いることがわかりました。ずれることが多い子どもは「午前中、授業中にもかかわらず眠くてしかたがない」が多く、平日と休日のズレが2時間以上ある子どもたちは、午前中の眠気 やイライラなどを強く感じていました。規則正しい生活の継続が必要であります。
今後、良好な睡眠を確保するためにも、子どもたちへの正しい睡眠教育が益々重要になってきます。睡眠育成士の今後の活動が期待されます。
引き続き(公社)生体制御学会では、2019年度も睡眠育成士認定講座を開講しています。

文献
1) 文部科学省:睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査結果:http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/1357460.htm
2)Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J.Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. AutonNeurosci.161. 116-120:2011
3)黒野保三、各務壽紀、皆川宗徳、石神龍代、山田 篤、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価―.自律神経,49(1):251-256.2012
4)Minagawa M, Kurono Y, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Akai R, Hayano J.Site-specific organ-selective effect of epifascial acupuncture on cardiac and gastric autonomic functions.AutonNeurosci.179(1-2).151-154:2013
5) 皆川宗徳、黒野保三、石神龍代、山田 篤、各務壽紀、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激の経穴特異性の検討―.自律神経,52(2):145-151.2015.
6) 石神龍代、黒野保三、皆川宗徳、山田 篤、各務壽紀、早野順一郎:黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による睡眠の質の改善効果―OSA睡眠調査票MA版を用いた自覚的な睡眠の質の評価―.全日本鍼灸雑誌.66(1):24-32.2016
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2019年7月 1日 月曜日

認知症を予防しましょう 東洋医学研究所®副院長 石神 龍代 令和元年7月1日号

はじめに
急速な超高齢化に直面している日本において、認知症(一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態を指すもの)の患者数は、団塊世代全員が75歳以上となる2025年には約700万人(高齢者の約20%、5人に1人)に上ると予測されています。
そこで、認知症の危険因子と防御因子についての研究内容を紹介させていただき、認知症発症予防にお役立ていただきたいと思います。

1.認知症予防に関する記事
5月17日の中日新聞で「認知症予防重視 認知症対策を強化するため、政府は16日の有識者会議で『予防』を重要な柱とした2025年までの新たな大綱の素案を示した。政府は6月の関係閣僚会議で大綱を決定する。『予防』は政府の従来方針である認知症の人が暮らしやすい社会を目指す『共生』とともに2本の柱に据える。素案には認知症の人数を抑制する初の数値目標を導入し、数値目標として『70代の発症を10年間で1歳遅らせる』認知症の人の割合について6年間で6%低下させることを目指す。10年間では約1割減少することになる。」と報じられました。
これは認知症患者増加による社会負担の増大、介護保険をはじめとする医療福祉財源に対する圧迫を緩和し、高齢者が健やかに長寿を享受できる豊かな長寿社会の実現を目指すためのものと思われます。

2.認知症の危険因子と防御因子
認知症の原因は様々でありますが、その成因がいまだ十分に解明されておらず、根本的な治療法も確立されていないのが実情のなかで、疫学研究によって認知症の危険因子、防御因子を明らかにする研究が行われています。
福岡県糟屋郡久山町における久山町研究は、1961年より50年以上にわたり継続中の生活習慣病の疫学調査であり、65歳以上の高齢住民を対象として、1985年、1992年、1998年、2005年、2012年に認知症の有病率調査が実施されました(受診率90%以上)。さらに、これらの有病率調査を受診した人を全員追跡し(追跡率99%以上)、認知症例は頭部CT/MRIおよび剖検(剖検率75%)によって脳を形態学的に調べてその病型診断を行っています。
この久山町研究の成績を中心に、日本の地域高齢住民における認知症の危険因子と防御因子が検討されています。
♢高血圧
高血圧は日本人が最も罹患しやすい生活習慣病であります。そこで、久山町の高齢住民の追跡調査において、中年期および老年期の高血圧の認知症発症に及ぼす影響が検討された結果、老年期のみならず、中年期の高血圧も老年期における血管性認知症発症の危険因子であることがわかり、中年期からの厳格な高血圧管理が将来の血管性認知症発症の予防にきわめて重要であると考えられます。
♢糖尿病
1988年の久山町検診で75g経口糖負荷試験を受けた65歳以上の住人1017人を15年間追跡した成績を用いて、糖代謝異常の認知症発症に及ぼす影響が検討された結果、正常耐糖能群と比べて糖尿病群ではアルツハイマー型認知症の発症リスクは2.1倍と有意に高く、血管性認知症の発症リスクも1.8倍と高い傾向が示されました。
さらに、糖尿病者、なかでも糖負荷後(食後)2時間血糖値の高値者において、認知症の発症リスクが直線的に上昇していました。
糖尿病は脳動脈硬化の進展、さらにはインスリン代謝障害など、さまざまな機序を介して脳の老化を促進させると考えられていますので、認知症を予防するうえで、糖代謝異常・糖尿病の予防と、その早期診断と適切な管理が重要であると言えます。
♢喫煙
久山町研究の成績を用いて、中年期から老年期の喫煙習慣が認知症発症に及ぼす影響を検討したところ、生涯にわたり、非喫煙であった群に対し、中年期から老年期までの持続喫煙者は、血管性認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクがそれぞれ2.8倍、2.0倍有意に上昇していました。しかし、禁煙をした群では、認知症の発症リスクは低下傾向が認められ、認知症発症のリスクを下げるうえで、禁煙は有効であると考えられます。
♢運動
海外の多くの疫学研究において定期的な運動習慣が認知症の有意な防御因子であることが報告されていますが、久山町研究においても、運動習慣を有する群では、運動習慣を有しない群に比べ、血管性認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクを38~45%有意に低下させることが示されています。
運動が脳に及ぼす効果は、脳血管疾患のリスクや炎症の抑制、脳の成長因子の増加に伴う脳構造の強化や損失の減少、アミロイド蓄積の減少、電気生理学的特性の強化や遺伝子転写の変化などが想定されています。
従来実施されてきた有酸素運動や筋力トレーニングのみでは、軽度認知障害高齢者の記憶等の認知機能を効果的に向上させることは困難でしたが、これらに、さらに記憶課題や計算課題をしながらの運動を組み合わせる、国立長寿医療研究センターが開発したコグニサイズ〈英語のcognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせた造語〉を加えて運動介入を行うことによって、全般的認知機能の保持効果や記憶の向上が確認されています。
♢食事性因子と栄養学的要因
久山町研究において、食事パターンと認知症発症の関係について検討された結果、大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品、果実、芋、魚、卵の摂取量が多く、米、酒の摂取が少ないという食事パターンを有する人は、有しない人に比べ、認知症発症リスクが有意に低下していました。
栄養学的な観点から、単一の食品ではなく、さまざまな食材を用いた栄養バランスの良い食事が、栄養摂取を介して脳の機能維持に貢献し、認知症発症予防に効果的であることが示唆されています。
♢社会参加や社会的交流の少なさと認知症発症リスク
社会的孤立は、孤独死や詐欺被害などの社会的問題に加えて、生活の質の低下、うつ、栄養状態の不良、要介護状態、認知症、死亡などのリスク増加など高齢者の健康状態に多面的に影響することが知られています。
社会参加や社会的交流と認知症発症リスクについて検討した報告によると、社会参加の少なさは1.4倍、社会的交流の少なさと社会的孤立は1.6倍認知症発症リスクを高めています。
まさに「きょういく(今日行くところがある)」「きょうよう(今日用事がある)」の大切さを示唆しています。

おわりに
久山町研究における成績により、加齢に基づく認知症発症リスクは生活習慣病の予防や生活習慣の是正によって軽減できることが示唆されました。
認知症の発症を予防するためには高齢期のみならず、生涯を通じた予防(健康)への取り組みが大切であることを痛感いたします。そのための基本となる心身の健全を保つために、東洋医学研究所®黒野保三所長の長年の研究でその効果が実証されている、個々人のもつ生命力を調整する生体制御療法の鍼治療を定期的に受療されることをお勧めいたします。


参考・引用文献
1)二宮利治、認知症危険因子と防御因子:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018. 280―282
2)島田裕之、運動と認知症予防:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018.288―290
3)水上勝義、社会参加、生涯教育と認知症予防:認知症トータルケア、日本医師会雑誌 第147巻・特別号(2)、2018.293―294
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