• 膨大な臨床鍼灸の研究実績
  • 91.9%の効果を実証
  • 早い・短い痛くない治療

コラム

2021年9月 1日 水曜日

心不全について 東洋医学研究所®グループ伸誠鍼灸院 院長 加納 俊弘 令和3年9月1日号

「心不全」と聞くと亡くなられた方の多くの死因として医師が診断する病名で突然死を思い浮かべる方も多いと思います。
心不全とは「心臓の機能低下で全身の血の巡りが悪くなる状態」。病態により「左心不全と右心不全及び両心不全」、機能により「拡張不全と収縮不全」に分けられます。
現在、がんに次いで2番目に多い死亡原因にあげられ、高齢化に伴い毎年1万人ずつ増加していることがわかり、2030年には130万人ともいわれ、心不全パンデミックが起こるのではないかともいわれています。
心不全は進行度によってAからDまでの4段階のステージに分けられます。
初期段階では、約7割の人に自覚症状がなく、その病態が進行してしまうことも多いのです。
症状が現れた時には、重篤化していることも多く、この事を注意喚起するため、日本心不全学会では無症状の心不全に「隠れ心不全」と名付け、2010年に行われた日本心不全学会の市民公開講座で発表されました。

心不全の原因
心不全を起こすのは心臓への負荷であり、その原因は「心臓そのものに原因があるもの」と「心臓以外に原因があるもの」の大きく2つに分けられます。
心臓そのものに原因のあるもの:
虚血性心疾患(狭心症や心筋症)、心臓弁膜症(心臓の弁の異常)、心筋症(心臓の筋肉の異常)、心筋炎(心臓の筋肉が炎症)、先天性心疾患(生まれつきの心臓病)不整脈。
心臓以外に原因があるもの:
肺血栓塞栓症(肺の血管が詰まる病気)、COPD(慢性閉塞性肺疾患:肺機能が低下する病気)、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症、貧血、アルコールの過飲、抗がん剤の影響、敗血症。

心不全の症状
心不全の初期症状はあまり自覚症状がはっきりと現れにくく、息切れなどの症状があっても、「年のせいだから仕方ない」「体力が落ちただけ」と見過ごしてしまいがちで放置したまま重症化してしまい、突然急性症状を発症し救急搬送される方も多くみられます。
左心不全による症状:
初期の左心不全は、肺鬱血によって、倦怠感、動作時の息切れ、動悸、などが起こりますが、安静時には無症状であることも多いです。
しかし重症化すると、安静時にも動悸や息苦しさが強くなります。また、体を横にすると心臓に戻ってくる血液量が増えることで息苦しさを強く感じ、座ると息苦しさが軽減される起座呼吸が見られることもあります。
右心不全による症状:
右心不全では、右室のポンプ機能が低下することにより、右室や右房、全身にも血流が溜まり、体静脈がうっ血します。これにより、顔や足の浮腫、体重増加、胸水などの症状が見られます。そのほか、腹部膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、などの症状も見られることがあります。
心拍出量低下による症状:
心拍出量低下によって起こる症状としては、疲れやすさ、脱力感、乏尿、夜間多尿、チアノーゼ、四肢冷感、記憶力や集中力の低下、睡眠障害、意識障害などが挙げられます。これらの症状の現れ方には個人差があり、自覚のない方もいらっしゃいます。
心不全は、拡張障害が起きたあと、収縮障害も併発するという経過をたどることが多いですが、最近、とくに高齢者で、収縮機能が保たれた心不全(拡張不全)が多いことがわかってきました。血液を取り込む力が衰え、静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなってしまうもので、通常の検査では見つかりにくく、決め手となる治療法が限られるといった特徴があります。

心不全の予後
心不全という病気の特徴として、死亡率が高く、完治がとても難しいことが挙げられます。
癌全体の10年生存率は約58%であると言われていますが、心不全の場合、一番重篤であるステージDにおいては1年の死亡率が50~60%と非常に高く、ステージA~Bの比較的軽度でも5~10%が1年以内に死亡すると言われており、予後は癌と同等、あるいはそれ以上に悪いと考えることができます。
心不全末期の患者さんは大変な苦痛を伴い末期癌の患者さん同様に緩和ケアでも大変難しい対象疾患であります。

普通にできていた動作ができなくなった、浮腫、冷えるようになった、急に体重が増えた、倦怠感、動悸や息切れが増えたと感じたら、心不全を疑い循環器科を受診されることをお勧めします。

心不全の管理と予防
心不全の治療は循環器専門医による正確な診断と治療が大切なことはいうまでもなく、初期症状がない段階から、心不全の原因となり得る生活習慣病の治療及び管理、減塩、禁煙、節酒、心臓リハビリテーションも治療及び予防に重要です。
心不全の予防法として、効果があるのは運動です。
スウェーデンのウプサラ大学研究チームによると心不全の既往歴を持たない20~90代の男女約4万人を対象に、調査した結果、運動をする習慣のある人は、心不全の発症リスクが少ないことが明らかとなりました。中でも、ウォーキングなどの中強度の運動を1時間、もしくは水泳やジョギングなど強度が高めの運動を30分ほど毎日続ける人たちは特にリスクが低くなっており、通常に比べて心不全の発症が46%低下していたそうです。
また米国の心臓学会では、週3~4回、40分の運動を適度な強度で行うことを推奨しています。
今年1月心臓弁膜症の手術をされた高血圧、糖尿病を既往とする77歳の男性が手術後調子が良かったのですが、暑くなってきてから急に、めまいと倦怠感を伴い鍼治療を受けに来ましたが、やはり下肢の浮腫が目立っていました。3日間連続で鍼治療を行ったところ浮腫がとれてくるのと同時に、めまいや倦怠感も改善していきました。
心不全という病名こそついていませんが、下肢の浮腫と手術前安静時心拍数58/minが施術後85/minと上がっていたため、次回受診時に担当医師に相談するように助言いたしました。
鍼治療が心不全にどのような効果があるのかなどの明確なエビデンスは有りませんが、本Web Siteの東洋医学研究所Ⓡ黒野保三所長は日本自律神経学会雑誌の自律神経49巻4号に鍼刺激(筋膜上圧刺激)を行うことによって心臓迷走神経の亢進を証明した世界で初めての研究が原著論文として掲載されました。
生活習慣病や将来の心不全の罹患予防のためにも鍼灸治療をお勧め致します。

資料
・国立循環器病センター・循環器病情報サービス
・http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/
・日本自律神経学会
・http://www.jsnr-net.jp/
このエントリーをはてなブックマークに追加

記事URL

2021年8月 1日 日曜日

コロナフレイルについて 東洋医学研究所®グループ 二葉はり治療院 院長 甲田 久士 令和3年8月1日号 

はじめに
新型コロナウイルス感染症で世の中が重い雰囲気になっています。東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授が、1年間のデータを全国の自治体から集めて調査したところ、高齢者の自粛生活長期化による生活不活発を基盤とする、心身機能の低下、いわゆる「コロナフレイル」ともいえる状態に陥っている科学的根拠が分かってきました。具体的には最初の半年間だけでも、40%強の高齢者に外出頻度の著明な低下を認め、さらに食の乱れ、人とのつながりや地域交流の低下もみられました。全身の筋肉量減少も前後比較で確認ができ、特に体幹部の減少が著明でした。握力の低下、ふくらはぎ周囲長の減少、活舌の低下なども認められていることがわかりました。
私たちは、いつまでも生き生きと元気に暮らし、介護に頼らず健康で過ごせる期間(健康寿命)を延ばすためには、病気を防ぐだけでなく、体や頭の老化も防ぐことが大切です。
今回は、コロナ禍におけるコロナフレイルについて、お話をさせて頂きます。

フレイルとは
年をとって心身が老い衰えて、心身の活力が低下した状態を「フレイル」といいます。
「フレイル」は「虚弱」(英語でfrailty)が語源です。多くの人が「フレイル」を経て、要介護状態に陥ると考えられています。
「健康な時期」から「プレフレイル(前虚弱)」、「フレイル(虚弱)」、「要介護(身体機能障害)」と順を追って老衰していくことを防ぐためにも、早めに気づいて対処することで、「フレイル」の進行を遅らせ、回復させることが可能です。

フレイルの兆候を早期に見つけよう
身体的-「活動的じゃなくなった」サルコペニア(筋肉減弱)、骨粗鬆症など。特に加齢で筋肉が衰えるサルコペニアは、「フレイル」の最も大きな原因の一つです。
両手足の筋肉量、握力、歩行速度の3つの指標で判断します。筋肉が衰えると、転倒、骨折、認知症のリスクを高めます。
精神・心理的-「外出の機会が減った」意欲・判断力低下、うつなど。
社会的-「おいしいものが食べられなくなった」閉じこもり、孤食(一人ひとり別々に食べる)、困窮など
先に述べた兆候に対し何も対処しないと、
① 外出しなくなる→人とのかかわりが減る→認知症のリスクが高まる
② 体のバランスが悪くなる→転びやすくなる→骨折しやすくなる
③ 噛めなくなる→食欲がなくなる→栄養が不足する
するなどに繋がります。

コロナフレイルとは
新型コロナウイルスによる感染拡大に伴う外出自粛で、心身が老い衰える「フレイル」は、気づかないうちに加速しているといえます。心身の衰えは加齢変化によるものだけではありません。まず、社会とのつながりが希薄になるところから始まります。衰えをドミノ倒しと考えると理解しやすいです。
ひとつが欠けると負の連鎖により機能が低下していきます。

外出自粛による社会とのつながりがなくなる

生活範囲の狭まり、孤立・生きがい喪失

こころが沈み、うつ、認知機能の低下

会話をする機会が減り、歯の健康を失う、咀嚼・発音の衰え

食欲不振による栄養障害

身体的機能の低下、やがて死につながる

「老い」を見える化する
東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授は、『「フレイル」をチェックすることで、いま自分は「老い」の坂道の何合目にいるか、それを見える化することができます。栄養と運動、社会参加は三位一体。歩く習慣がない人が無理やり歩くことを始めても、続かず、効果がありません。好きなことや日常生活で活動量を補うのと同時に、オンラインなどを使って家族や友人とつながることが大切です。老いを防ぐ対策は十人十色です。』と言われています。
「イレブンチェック」というフレイルの検査を紹介します。計11項目の質問に「はい」か「いいえ」で答えていきます。最終的に、「いいえ」の回答欄に5個以上のチェックがあればフレイルの可能性が高く、少ないほどリスクは低くなります(表)。



コロナフレイルにならない予防にための3つの柱
第1に栄養(バランスの良い食事)。
第2に運動(日用品などの買い物、ウォーキング:65歳以上は男性7000/歩、女性6000/歩、家庭菜園や園芸作業)。
第3に社会参加(地域での習い事やスポーツ教室に参加:密をさければよい)。
加齢とともに、体力や筋力が低下し、日常の買い物が面倒だと感じるようになります。人と接する機会が減ったり、食生活のバランスが崩れたりすることで体が衰え、判断力や認知機能といった頭の働きも低下する悪循環が起きます。
この3つの柱を心がけることによって、フレイルの進行を遅らせることが可能です。

おわりに
今回、コロナフレイルのお話をさせていただきました。老いることにより様々な現象が引き起こされます。特に現在はコロナ禍における行動自粛が加わり、生活不活発による筋肉減弱が思っている以上にかなり進行していると思います。筋肉を大きく失うということは、単に移動問題だけでなく、免疫力も大きく失ってしまいます。感染予防の励行に加え、十分な栄養摂取、三密回避を意識した上での運動や身体活動、十分な睡眠時間などで日常生活の質を落とさず、免疫力を維持する必要があります。
東洋医学研究所Ⓡ所長の黒野保三先生の生体制御療法(筋膜上圧刺激)は、マウスを用いた基礎実験で、鍼刺激が老化防止に関与していることを細胞レベルで証明され、学会発表もされています。免疫機能も鍼刺激により活性化されること、鍼刺激により自律神経の副交感神経を優位に亢進させ睡眠の質の向上などにも影響を及ぼすなどの研究報告をされています。まさに、この生体制御療法はコロナフレイルに適した治療法であると思います。
現在、鍼治療を受けている患者さんはさらなる継続治療をして頂き、また家族の方、友人の方、職場の方など、健康な方でも今後を見据えて、健康管理のための鍼治療(生体制御療法)を受けられることを、是非お勧めします。

引用文献
・介護予防:中日新聞サンデー版2021年4月11日
・コロナフレイル:中日新聞サンデー版2021年4月18日
このエントリーをはてなブックマークに追加

記事URL

2021年7月 1日 木曜日

ストレッチの効果 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長 河瀬 美之 令和3年7月1日号

はじめに
腰痛患者さんの腰痛原因を知るために、患者さんの足を挙げたり、股関節を動かしたりして徒手検査を行います。この時、動きが硬く、挙げれないことから「体が硬いですね。」と言うと「運動不足なんです。」といった会話をさせていただくことがあります。
柔軟体操とストレッチがおおむね同じような言葉で解釈されています。これらには筋肉や腱、靭帯を柔らかくするという目的があります。
最近のストレッチには筋肉や腱、靭帯の他に関節の可動域を広げることで全体的に可動性をアップさせる考え方が主流になってきています。
今回は「痛い」ことによる悪循環に対し、鍼治療にストレッチなどの運動療法を取り入れて良い循環へ改善させる方法についてお話をさせていただきます。

関節を柔らかくする
足首を捻挫した時にテーピングをしますが、足関節の動きを制限すると膝関節に違和感が生じる場合があります。また、膝痛のためにサポーターを巻いて膝関節の動きを制限すると股関節や足関節に違和感が生じる場合もあります。可動域が大きい関節が何かの原因で動きにくくなると様々なところに波及していくことがよくあります。
このような観点から肩こりや腰痛発症を説明することができます。
【肩こり】
長時間坐位での作業を続けると、疲労のせいで徐々に背中が丸く猫背になってきます。腕を上に挙げたり歩行の時に腕を振るとその動きに合わせて肩甲骨が上下左右に動きます。肩甲骨は可動域が大きい関節がいくつもありますが、猫背のような不良姿勢を長時間続けると肩甲骨の動きが制限され周囲の筋肉が緊張して血行が悪くなり、肩こりを発症してきます。
【腰痛】
腰部は骨盤、腰椎、股関節から構成されますが、運動不足が慢性化してくると、まずはじめに股関節の動きが悪くなってきます。股関節の可動域が制限されると骨盤や腰椎などが動きをカバーしようと負担が多くなって最終的に腰痛や臀部痛が生じてきます。歩くスピードが遅くなったなどの自覚が出てきたら要注意です。

ストレッチの効果
筋肉や腱、靭帯、関節を含めて全体的に可動性を高めることを意識してストレッチを行っていただくと以下のような効果があります。
1. 歩幅が広くなり歩くスピードが速くなる
2. 日常動作がスムーズに早くできるようになる
3. 身体が動かしやすくなる(運動神経が良くなる・運動成績が上がる)
4. 血行が良くなるので代謝が上がり太りにくくなる
5. 筋肉トレーニングの効率が上がる
6. けがをしにくくなる
7. 肩こりや腰痛、運動器疾患が改善される

スポーツを仕事とするアスリートがストレッチをする姿が報道されているところを一度は見られたことがあると思いますが、入念に行っている姿を見るとストレッチがいかに大切かがわかると思います。

腰痛や膝痛の悪循環を断つ鍼治療とストレッチ


 
痛いから動かさないので筋力が低下して骨や関節に負担がかかり、さらに痛くなるという悪循環を、鍼治療とストレッチで痛みを軽減し、動かしやすくするとことで筋力アップを図り、骨に負担をかけない体づくりをしていきましょう。
足腰のストレッチの実際は平成30年5月1日号のコラム、「「からだが硬い」を改善しよう」を参考にしてください。
 
おわりに
ストレッチは単純に筋肉を伸ばし筋肉の緊張をほぐすという目的だけでなく、関節の靭帯、関節包も伸ばし、身体全体の可動性を高め、身体に良い効果をもたらします。ゆったりした気持ちで行えば、コロナ禍での不安などのストレスも解消できると思います。
しつこい肩こりや腰痛、膝痛など運動器疾患には鍼と超音波の併用治療が有効です。東洋医学研究所®の黒野保三所長は疼痛疾患に対して鍼と超音波の併用治療で92.7%の患者さんに有効であったことを報告されています2)。
この治療法に、患者さん自身も携わるストレッチを組み合わせて、より高い効果を体験してみてください。

文献
1) 八木貴史監修:加齢のトリセツ;Tarzan 793;106-107.(2020.8)
2) 黒野保三:超音波と鍼の併用治療の考察;月刊新医療8(5);33-35 .(1981)
このエントリーをはてなブックマークに追加

記事URL

2021年6月 1日 火曜日

黄砂アレルギーについて 東洋医学研究所® 外部主任 中村 覚 令和3年6月1日号

はじめに
近年、花粉症の方の数が爆発的に増え続けています。2019年の調査報告によると、花粉症有病率は42.5%となり、国民の半数近くが罹患しているという結果となりました。ここ10年で10%以上も増加をしています。何故、このようなことになったのでしょうか?
花粉症は一度発症すると根治することが難しく、発症を予防する方法はまだ確立されていません。したがって、数は増え続ける一方になりますが、その一つの要因に大気汚染物質が関係しています。花粉症の有症率はスギの木が多い山間部と少ない都会部で比較すると、明らかに都会部で高くなります。このことは、自動車の排気ガスなどの大気汚染物質と花粉がくっつくことによって発症率が高くなることが報告されています。
今回は、症状が花粉症とよく似ており、大気汚染物質との関連が深い黄砂アレルギーについてお話をしたいと思います。

黄砂とは
黄砂とは、中国内陸部やモンゴルの砂漠や乾燥地帯(タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原など)で、強い風や嵐で巻き上げられた砂が、偏西風にのって日本まで飛来するものです。年間を通して日本列島に飛来していますが、2月から増加し始め、4月にピークを迎えます。夏にはほとんど飛来していません。黄砂が発生すると48時間ほどかけて日本に届きますが、その間に工業地帯や都市部の上空を通る過程で有害物質が付着することがあります。黄砂には、微生物やその死骸、金属、化学物質(土壌由来ではない人為起源の大気汚染物質:アンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオン)などが含まれていることが分かっています。また、最近では、黄砂とともに飛来するPM2.5も問題視されるようになってきました。

PM2.5とは
PM2.5とは微小粒子状物質をいい、大気中に浮遊している2.5μm以下の小さな粒子のことをいいます。環境基準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子状物質よりも小さいことが特徴です。粒子が非常に小さいため、肺の奥にまで入りやすく、呼吸器系や循環器系の病気の原因となる可能性が高いと考えられています。PM2.5には物の燃焼によって出る煙や、ガス状の大気汚染物質が環境大気中での化学反応により粒子化したものがあり、自動車の排気ガスや工場の排気ガス、ごみ焼却施設からの煙など人為起源なものから、山ガスといった自然由来のものにまで及びます。

黄砂アレルギーとは
黄砂アレルギーは、黄砂(PM2.5を含む)を吸い込むことによって、花粉症の様に目、鼻、喉、肌にアレルギー症状が出現し、目のかゆみ、結膜炎、鼻水やくしゃみや頭痛を引き起こします。ただ、黄砂そのものがアレルギーの原因ではなく、黄砂にくっついた物質によってアレルギー症状が出るといわれています。黄砂は花粉よりも粒子が小さい(花粉は直径30~40μm>黄砂は約4μm>PM2.5は2.5μm以下)ため、肺の奥まで侵入しやすく、花粉症などのアレルギー症状を悪化させることもわかっています。

黄砂による健康被害
黄砂による健康被害はアレルギー症状のみではなく、呼吸器疾患や循環器疾患への悪影響も指摘されています。
気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患においては、黄砂飛来時に受診数、救急搬送数、症状悪化による入院数が増加し、小児では呼吸機能低下が報告されています。また、肺炎による死亡の増加との関連も指摘されています。
循環器疾患においては、黄砂飛来と救急搬送数増加、脳梗塞や心筋梗塞での入院、発症増加との関連が報告され、特に高齢者や糖尿病、慢性腎臓病等の既往歴がある方は、リスクが高くなることが分かっています。

黄砂アレルギーの対策
黄砂やPM2.5の対策は吸い込まない、持ち込まないことが重要となってきます。家では窓の開け閉めをあまり行わず、空気清浄機などを活用すると良いでしょう。部屋の中は掃除機だけでなく水拭きをすると効果的です。
環境省ではホームページで黄砂やPM2.5の飛散量を公開し、PM2.5においては濃度のレベルに応じた注意喚起を行っています。飛散量が多い時は、特に高齢者や乳幼児、呼吸器系に病気のある方は外出を控えましょう。
外出をする際には一般用マスク(不織布マスク等)を着用することで、黄砂に対するある程度の吸入予防効果が期待できます。また、医療用や産業用のマスクは、微粒子の捕集効率の高いフィルターを使っており、黄砂や PM2.5 等の微粒子の吸入を大幅に減らすことができます。しかし、着用すると少し息苦しい感じがあるので、長時間の使用には向いていません。
帰宅後はうがい手洗いだけでなく、顔も行い、肌に付着したPM2.5や黄砂を洗い流すようにしましょう。

おわりに
私自身はイネ科の花粉症があり、また、黄砂の飛散する時期と一致してアレルギー症状が強くなるため、抗アレルギー薬を服用することがあります。黄砂の時期には鼻水、くしゃみなどの花粉症症状よりも目の乾燥や頭痛の症状が強くなることが多く、黄砂の影響を肌で感じていました。
2020年11月頃に突然白い車が黒い粉を振りかけた様になり、頭痛が出現し、天気予報では中国からの偏西風が日本に吹いていると報じられたため、黄砂アレルギーによるものと考えました。黄砂の飛散ピークは4月頃になりますが、その時期は量が多く、風の勢いも強いため、黄砂に付着する大気汚染物質が少なくなり、逆に黄砂の飛散量が少ないときは大気汚染物質が多く付着するため、人体への影響が大きくなることも報告されています。黄砂の飛散量のみで対策をするかどうかの判断をすることは難しいと感じました。
現在は、新型コロナウイルス対策のため、屋外でもマスクを着用する方が多くなっています。結果的に黄砂対策にもなっているため、良いことだと思っています。
アレルギー症状が原因物質に触れてしまうたびに炎症反応を起こしますが、鍼治療による抗炎症作用によってアレルギー症状を緩和することができます。東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは、花粉症の患者に生体制御療法(鍼と超音波の併用療法)を行い、日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ)を用いて検討したところ、鼻・眼の症状の改善に加え、QOLの改善が認められたことを報告しております。
黄砂アレルギーや花粉症などのアレルギー症状にお悩みの方は、是非、副作用のない鍼治療をされることをお勧めします。

引用・参考文献
・松原 篤ほか:鼻アレルギーの全国疫学調査2019 (1998年, 2008年との比較) : 速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として.日本耳鼻咽喉科学会会報.123巻6号. 485-490. 2020.
・一般社団法人環境情報科学センター編集:黄砂とその健康影響について.環境省環境保健部環境安全課小冊子. 2019.
・環境省:平成 15 年度大気汚染と花粉症の相互作用に関する調査研究(疫学研究)研究報告書.2004.
・福岡市ホームページ:福岡市PM2.5・黄砂影響検討委員会
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/k-hozen/hp/fukuokashiPM25kousakentouiinkai.html
・井島晴彦ほか:黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による花粉症症状・QOLの改善効果 : 日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用いた5年間の症例集積.全日本鍼灸学会雑誌.66巻4号.2016
このエントリーをはてなブックマークに追加

記事URL

2021年5月 1日 土曜日

鍼治療は睡眠中の血糖値に影響を与えるか? 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸院 院長 山田 篤 令和3年5月1日号

〇糖尿病の血糖コントロールは難しい
人間の主なエネルギーはブドウ糖で、血液中の糖の量を示すのが血糖値です。血糖値が変動する要因は、血糖値を下げるインスリンや血糖値を上げるグルカゴンなどのホルモン、自律神経機能、食事や運動などの生活習慣など様々なものがあります。血糖値の変動は健常人なら正常範囲(70-110mg/dl 食後上限140mg/dlが目安)に維持されますが、糖尿病になると血糖値を安定して維持することは困難になります。
糖尿病の方は、睡眠中に高血糖や低血糖を起こしたりします。高血糖が続けば糖尿病は悪化し、低血糖は命に危険を及ぼすこともある重症低血糖になることもあります。また、血糖コントロールが不良になると睡眠状態が悪くなるという報告1)もあり、睡眠中の血糖値を安定して維持することが重要になります。

〇血糖コントロールが良好でも睡眠中の血糖値が安定するとは限らない?
睡眠中の血糖値(当院に通院している1型糖尿病の患者様)のデータを図1(縦軸:血糖値 横軸:時間)に示します。この患者様のHbA1c(過去1~2か月間の平均血糖値を反映します)は8.0%前後で血糖コントロールが比較的良好な状態であるにも関わらず、血糖値は正常範囲に収まらず、高い値を示したり低い値を示したりしてばらつきがあります。


〇鍼治療が睡眠中の血糖値の変動に影響を与える?
鍼治療が睡眠中の血糖値の変動に対して影響を与えているのかどうかを確認しました。この患者様のデータから鍼治療を受療した日の睡眠中の血糖値と、他の日の睡眠中の血糖値を1時間ごとに平均して比較した結果を図2に示します。

 

鍼治療を受療した日の睡眠中の血糖値は他の日と比べて低下していますが、下がり過ぎてはいません。また、睡眠中の血糖値は他の日と比べてばらつきが小さくなっている(グラフのマーカーから上下に伸びている線がばらつきを示す。ばらつきが小さいほど平均値付近に集まっている)ことがわかります。
つまり、鍼治療を受療した日の睡眠中の血糖値が、他の日と比べて高くもなく低くもなく安定して推移していることがわかります。

〇鍼治療が血糖コントロールを改善する
今回は1症例のみですので根拠としては弱いですが、鍼治療が睡眠中の血糖値に良い影響を与えている可能性があります。また、東洋医学研究所®・東洋医学研究所®グループでは鍼治療を継続すると血糖コントロールは良好になることを報告していますので、その裏付けの一つになるかと思います。
糖尿病で苦労されている方、血糖コントロールなどもう少し改善したい方、もちろん糖尿病以外でも苦労されている方、是非、東洋医学研究所®黒野保三所長の研究された生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法の鍼治療(鍼と超音波の併用治療)を受療され、皆様のより良い健康管理にお役立てください。

文献
1)Yoda K, Inaba M, Hamamoto K, Yoda M, Tsuda A, et al. (2015) Association between Poor Glycemic Control, Impaired Sleep Quality, and Increased Arterial Thickening in Type 2 Diabetic Patients. PLOS ONE 10(4): e0122521. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0122521
このエントリーをはてなブックマークに追加

記事URL

カレンダー

2021年9月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

月別アーカイブ