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コラム

2021年4月 1日 木曜日

今、大切なのは免疫力を高めること 東洋医学研究所®グループ  井島鍼灸院 院長 井島 晴彦 令和3年4月1日号

はじめに
新型コロナウイルスの流行は、未だ収束する目処が立っていません。感染防止と経済対策のどちらを優先するかについては、専門家の間でも意見が分かれていますし、政府の対策も行ったり来たりが続いています。
そんな中、私達個人個人にできる対策の中で、特に必要なことは重症化を防ぐための行動をとることです。万が一、新型コロナウイルス感染症に罹ったとしても無症状や軽症で済ませるために大切なことは、日頃から免疫力を高めることを念頭において生活することです。
そこで今回は、免疫力を高めるための方法論が詰まった小林弘幸著「免疫力が10割」の中で、最も重要と思われる部分を紹介させて頂きます。

免疫力向上の基礎は腸内環境の改善にあり!
免疫力を高めるカギを握る最重要ポイントが「腸内環境」です。腸は食べ物から栄養を吸収し、血液に乗せて全身の細胞へ送り出す器官です。しかし腸には食べ物と一緒にたくさんのウイルスなどの病原菌も運ばれてきます。
腸を守らずにいたら、食べ物の栄養と一緒にウイルスも全身に送ってしまうため、免疫細胞が腸の守りをガチガチに固めているのです。
さらに、わたしたちの腸内には約1000種類、約100兆個もの腸内細菌が住みついています。もし、腸内細菌だけを取り出せたなら、その重さは約1キロにもなります。腸壁を顕微鏡で見ると、まるで一面の花畑のように腸内細菌が種類ごとに寄り集まって見えることから、その群生する様子を「腸内フローラ」とも呼びます。
この腸内細菌は、免疫細胞の分化を調節し、神経伝達ホルモンの生成に関与するなど、免疫力の活性化に影響を与えていると考えられています。
したがって、善玉菌を多く含む味噌や、納豆、漬物などの発酵食品を摂取し、さらに、善玉菌のエサになる大豆やゴボウなどに含まれるオリゴ糖や、食物繊維を摂取することにより腸内環境を整えることは、感染症のみならず、あらゆる生活習慣病や基礎疾患を予防することにつながります。

自律神経のバランスが腸内環境と脳の好循環を生み出す
腸内環境が健全であるためには、もう一つ、切っても切れないファクターがあります。
自律神経は身体中に張り巡らされている末梢神経の一種で、内臓の働きや、血管の収縮・拡張、温度調節、呼吸など、生命維持に必要なあらゆる体の働きをコントロールしています。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」がバランスを取って働いています。腸の働きでは、交感神経が優位のとき蠕動運動は停滞し、副交感神経が優位のときに活発になります。自律神経を本来のバランスに整えてあげることが、腸内環境の改善につながります。しかし、自律神経のバランスは睡眠不足や不健康な生活、ストレスなどによって簡単に乱れます。
したがって、朝はカーテンを開けて朝日を浴びる、コップ1杯の水で腸を目覚めさせ、昼は鏡の前でニッコリ笑顔を作る、深呼吸で交感神経にストップをかける、夜は眠る3時間前に食事を済ませる、眠る1時間前にはスマホを手放すなどの生活習慣を身に着けることが重要です。

おわりに
本書では、新型コロナウイルスに関わる免疫の仕組みから、重症化のメカニズム、免疫力を強化する生活習慣メソッドについて詳しく紹介されていました。腸内環境を改善し、自律神経を整えることが、新型コロナウイルス感染症をはじめ、あらゆる病気から身を守る免疫力を備えるための重要な手段であることがわかりました。
そして、自律神経の調整といえば、東洋医学研究所®黒野保三所長が長年の研究によって、鍼治療が有効であることを報告されています。さらに、黒野保三所長は鍼治療が免疫力そのものの強化に役立ち、心理的なストレスから生じる不定愁訴に対しても効果のあることを報告されています。
是非、生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法の鍼治療(鍼と超音波の併用治療)を受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・小林弘幸:免疫力が10割.プレジデント社.2020
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J.Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. AutonNeurosci. 2011; 161. 116-20.
・黒野保三、各務壽紀、皆川宗徳、石神龍代、山田 篤、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価―.自律神経. 2012; 49: 251-6.
・Minagawa M, Kurono Y,Ishigami T,Yamada A,Kakamu T, Hayano J.Site-specific organ-selective effect of epifacial acupuncture on cardiac and gastric autonomic function.AutonNeurosci.179(1-2).151-154:2013
・皆川宗徳、黒野保三、石神龍代、山田 篤、各務壽紀、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激の経穴特異性の検討―.自律神経. 2015; 52(2): 145-6151
・黒野保三:長生き健康「鍼」.現代書林.2008:94-6
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2021年3月 1日 月曜日

骨からはメッセージが出ている 東洋医学研究所®グループ  福田鍼灸院 院長 福田裕康 令和3年3月1日号

骨は体を支える屋台骨です。骨の量が減ってしまえば骨折をおこしやすくなりますが、本当に怖いのは骨からでているメッセージ(骨ホルモン)が減ってしまうことだということが指摘されるようになりました。
まずは、その中で骨自身を強く保つために働く骨ホルモン、そして全身に働く骨ホルモンの代表をみていきましょう。

骨を保つためのメッセージ
骨粗鬆症という病気を耳にしたことがあると思いますが、それを理解するために、骨の作り替えの仕組みを思い出してみましょう。骨は常に作り替えられていて、大人では3~5年で全身の骨が入れ替わります。新しく強い骨を維持することで、疲労骨折などを防ぐためです。この作り替えを行っているのが、骨の中にある細胞で、骨を壊す「破骨細胞」と骨を作る「骨芽細胞」です。この2種類の細胞の作り替えのバランスが崩れてしまうと骨が弱くなってしまいます。その代表的な病気が骨粗鬆症です。
では、この骨はどうやってバランスをとっているのかというと、その命令を出す役割をもつ「骨細胞」があります。この骨細胞はメッセージ物質といわれる特別な物質を放出して調整しますが、その放出する物質の中には「骨をつくるのをやめよ」と命令する少し変わった役割をする『スクレロスチン』があります。そして、骨細胞は骨の量が増えすぎないように、『スクレロスチン』によって、骨を作る「骨芽細胞」の数を減らします。ところが『スクレロスチン』が出過ぎてしまうと、骨量が減ってしまうのです。
なぜそんな異常事態が起きるのでしょうか。実は骨細胞には「骨にかかる衝撃を感知する」という働きもあり、衝撃があるかないかによって、新しい骨を作るペースを決めているのです。骨に衝撃がかからない生活を続けていると、骨細胞が『スクレロスチン』をたくさん出して、骨芽細胞の数を減らし、骨の建設を休憩させてしまうことがわかってきました。
骨粗鬆症にならないためや、骨粗鬆症を進行させないために運動がいいということをよく聞きます。その理由にはこんな骨ホルモンの働きがあったのです。ということは、骨粗鬆症はお年寄りだけの病気ではありません。運動をしないで一日の大半を座って生活している現代人は、『スクレロスチン』が大発生し、知らないうちに骨粗鬆症が進行している可能性があるのです。

全身に伝える骨からのメッセージ
アメリカのコロンビア大学のジェラール・カーセンティ博士は、骨芽細胞からでる『オステオカルシン』に注目しています。『オステオカルシン』は骨の中から血管を通じて全身に届けられ、「記憶力」「筋力」さらには「生殖力」まで若く保つ力があることがわかっています。
例えば『オステオカルシン』がないマウスでは、位置を記憶する能力が衰えたり、精子の数が半分近くまで減少してしまうことが実験で確認されています。また、骨芽細胞といえば、骨を作る細胞。その細胞が、若さを生み出す驚きのパワーを持っていることが、最新の研究で明らかになっているのです。
ドイツのウルム大学のハームット・ガイガー博士が注目しているのは、骨芽細胞が出す『オステオポンチン』です。年老いたマウスの骨髄内では『オステオポンチン』の数が少なくなっていることに着目し、老化現象との関わりについて研究しています。そして『オステオポンチン』が減少すると、骨髄内で生まれる免疫細胞の量が低下することをつきとめました。免疫細胞の量が減れば、免疫力が下がり、肺炎やがんといった病を引き起こすリスクがあります。

どうすれば活かせるか?血管の機能がポイントか?
骨の血流は他の臓器と同様に骨を維持するために必要であることに疑問はありませんが、骨ホルモンが血管を通って体のすみずみまで運ばれるとなると、血管の機能がより重要になります。
我々の研究において、まだ動物実験の段階ですが、骨にある血管は自動的に縮んだり緩んだりして、血のめぐりをよくすることに寄与する機構をもっていることがわかりました1)2)。また、運動させることによって血管をコントロールしている神経の機能が変わり、血管を拡げやすくすることがわかりました3)。
鍼治療は、血流をよくすることが知られています。さらに、全身を調整することも知られています。例えば足三里といわれる有名な経穴(ツボ)がありますが、この足にある経穴の下には骨に入る血管があります。この経穴への刺激によって体全体が調節されるメカニズムの一つに骨ホルモンがあるかもしれません。より一層の研究が明らかにしてくれると思います。

[文献]
1: Fukuta H, Mitsui R, Takano H, Hashitani H. Neural regulation of the contractility of nutrient artery in the guinea pig tibia. Pflugers Arch. 2020 Apr;472(4):481-494.
2: Fukuta H, Mitsui R, Takano H, Hashitani H. Contractile properties of periosteal arterioles in the guinea-pig tibia. Pflugers Arch. 2017 Sep;469(9):1203-1213.
3: Fukuta H, Mitsui R, Takano H, Hashitani H. Exercise-induced sympathetic dilatation in arterioles of the guinea pig tibial periosteum. Auton Neurosci. 2019 Mar;217:7-17.
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2021年2月 1日 月曜日

睡眠の質はノンレム睡眠がカギ 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 院長 皆川 宗德 令和3年2月1日号

はじめに
日本人の睡眠時間は、2018年OECD(経済協力開発機構)の調査によると7時間22分で世界ワースト1の短さでした(図1)。24時間社会を背景に近年さらに睡眠時間が短くなり、6時間未満の睡眠時間の日本人が全人口の4割を占めると報告されています。2019年の調査結果では日本人の睡眠時間の平均が6時間27分と、世界で一番悪いと言われた時と比べて、さらに55分短いことがわかりました(図2)。今の日本は「睡眠負債」の蓄積に留まらず、さらに破綻に向かっている傾向にあります。

 
図2.日本の平均睡眠時間の推移(2018年~2019年)
睡眠は単なる休息や眠気の解放ではなく、自律神経やホルモンバランスの調整、記憶の定着や免疫機能の増強、脳の老廃物の除去等の重要な役割をはたすことが明らかになっています。適切な睡眠をとらないと、肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病をはじめ、精神疾患、感染症やがん、認知症の発症リスクも高まります。
今一度、睡眠の重要性について考えてみたいと思います。

ノンレム睡眠とレム睡眠
人の睡眠サイクルは、脳が休んでいるノンレム睡眠と、脳が覚醒して記憶を整理するレム睡眠で構成されています。深い眠りと言われる「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」のサイクルを一晩で4〜5回繰り返しています(図3)。この中で、最も深く眠っているのが1周期目の「ノンレム睡眠」。この最初の90分を「黄金の90分」と呼び、最初の深い眠りで脳下垂体から「成長ホルモン」が分泌されます。成長ホルモンは骨格形成を促し、身長を伸ばしたり、疲労の回復やホルモンバランスの調整を行ったりするホルモンです。深い睡眠をとり、成長ホルモンの分泌が適切に行われることで、人は寝ている間に脳や身体の疲労回復や、あらゆる細胞の修復がされ、免疫機能の向上などの効果があります。しっかり成長ホルモンの分泌が行われれば、子供は育ち、大人は衰えにくい身体を維持できるというわけです。

図3.ヒトの睡眠サイクル
 
睡眠の質を高めるには、睡眠の最初の90分で、身体が熟睡モードになる「ノンレム睡眠」をしっかりとることが、睡眠全体の質を向上させるためには重要です。また、ノンレム睡眠時には、副交感神経が優位になっており、副交感神経の働きを高めることで、正しい睡眠周期を実践でき質の良い睡眠を得る事ができると考えられます。

睡眠に対する鍼治療の検討―鍼治療は副交感神経を優位にする―
鍼治療により睡眠の改善効果があることは臨床鍼灸の現場でよく経験されています。
東洋医学研究所®所長黒野保三先生と名古屋市立大学大学院医学研究科教授の早野順一郎先生との共同研究により、睡眠に対する鍼治療の基礎・臨床研究を行い、
・鍼刺激(筋膜上圧刺激)は、副交感神経活動を亢進する。
・鍼治療は睡眠障害とそれに伴う不定愁訴を改善する。
・鍼治療は、自覚的な睡眠の質を向上させる。
・鍼治療は、睡眠中の副交感神経活動を亢進する。
という研究結果を国内外に報告してまいりました(表1)。
鍼治療が、睡眠の質を高めていることは、自律神経の副交感神経機能を亢進しているという研究結果からも明らかであります。
2020年、早野順一郎先生は、心拍変動の変化から、睡眠中の特にノンレム睡眠を高精度、且つ高い信頼性で検出する手段を開発されました。
鍼治療は、睡眠中の副交感神経活動を亢進することは明らかになっていますが、睡眠中の「ノンレム睡眠」「レム睡眠」に対して、どのような影響を及ぼしているのかは明らかになっていません。早野順一郎先生が開発された新しい睡眠指標により、特に最初の深い眠り「ノンレム睡眠」への効果が明らかとなれば大発見になります。
今後の睡眠に対する鍼治療の基礎研究の進展が楽しみでなりません。この研究結果が、皆様に還元される日を祈るばかりです。

おわりに
睡眠障害でお悩みの方は、是非、東洋医学研究所Ⓡ黒野保三所長の長年の研究によって裏付けられている生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法の鍼治療(鍼と超音波の併用治療)を受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・ソサンスタイルHP:https://sosan-style.jp/20200628-2/
・SleepediA HP:https://sleepedia.jp/rem-nonrem/
・BRAIN SLEEP HP:https://brain-sleep.com/sleep-deviation/research2/
・櫻井 武:睡眠の科学 : なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか 改訂新版. 講談社, 2017.
・石神龍代,皆川宗徳,福田裕康,井島晴彦,近藤利夫,黒野保三. 睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討. 全日鍼灸会誌. 2006: 56(5); 793-801.
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J.Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. AutonNeurosci. 2011; 161. 116-20.
・黒野保三、各務壽紀、皆川宗徳、石神龍代、山田 篤、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価―.自律神経. 2012; 49: 251-6.
・Minagawa M, Kurono Y,Ishigami T,Yamada A,Kakamu T, Hayano J.Site-specific organ-selective effect of epifacial acupuncture on cardiac and gastric autonomic function.AutonNeurosci.179(1-2).151-154:2013
・皆川宗徳、黒野保三、石神龍代、山田 篤、各務壽紀、早野順一郎:心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激の経穴特異性の検討―.自律神経. 2015; 52(2): 145-6151
・石神龍代, 黒野保三,皆川宗德,山田 篤,各務壽紀,早野順一郎. 黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による睡眠の質の改善効果 ―OSA睡眠調査票MA版を用いた自覚的な睡眠の質の評価―.全日本鍼灸学会誌.2016:66(1);24‐32
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008:94-6
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2021年1月 1日 金曜日

新型コロナウイルスについて 東洋医学研究所® 副所長 石神 龍代 令和3年1月1日号

はじめに  
2020年元旦、国民が期待に胸膨らませ待ちに待ったスポーツの祭典『東京オリンピック』開催の輝かしき年が明けました。
ところが1月6日、厚生労働省は「中国内陸部の湖北省武漢市で前年12月より原因となる病原菌が特定されていない肺炎の発生が複数報告されている。」という内容のプレスリリースを発表し、14日には世界保健機関(WHO)は中国当局からの情報提供を受け、『新型コロナウイルス』確認を発表し、15日には初めて日本人の感染例が確認されました。
そして、2月3日に横浜港に帰港した大型クルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス」集団感染、13日には国内初の死者が報じられ、16日には「新型コロナウイルス感染症専門家会議」が発足し、3月11日、WHOのテドロス事務局長が「新型コロナウイルスはパンデミック(世界的な大流行)と言える」と表明し、ついに日本政府は4月7日に「緊急事態宣言」を発令しました。
昨年より世界中が新型コロナウイルス感染の拡大による未曾有のコロナ禍に見舞われており、今なお収束の目途がたっていない状況です。
この難局を健康で心穏やかに乗りきっていきたいものです。

新型コロナウイルス感染との闘いの鍵 『免疫』
世界を脅かす未知なる強敵新型コロナウイルスは、現在、世界中で9700万人以上が感染し、170万人以上が命を落としています。
私たちの体の中に侵入した新型コロナウイルスと果敢に戦うミクロの戦士が免疫細胞であり、その数2兆といわれます。その免疫力を司る神秘のメカニズムが最近の科学の力で次々に解明され始めています。
「NHKスペシャル『人体 VS ウイルス』 ~驚異の免疫ネットワーク~」で紹介された、誰も見たこともないミクロの攻防を、貴重な最新顕微鏡映像と精緻なコンピューターグラフィックスで完全映像化した、私たちの体の中に広がる知られざる世界を覗いてみましょう。
☆新型コロナウイルス 体内ミクロの攻防 『自然免疫』
新型コロナウイルス(以下ウイルス)は感染した口から飛び散るごく小さな飛沫などに潜んでやってきます。直径1㎜程度の飛沫の中に700万個のウイルスが含まれていることもあります。ウイルスが鼻や口に飛び込んでいきます。最初の関門は空気を肺に吸い込む気道。その表面を電子顕微鏡で1万倍以上に拡大すると毛のような線毛がたくさん生えているのが見えてきました。ウイルスはこの線毛を巧みに通り抜けて、遂に肺の奥深くまで到達し、いよいよ感染が始まります。ウイルスが肺の細胞に近づき、その表面にある不思議な形の突起に自分の周りのトゲをピッタリ合わせると細胞の中に潜り込んでいく。これが感染です。細胞の表面にあった突起は、本来細胞がコレステロールなど必要な物質を取り込む際、扉を開ける鍵穴のような働きをしています。細胞の中に入れるのは鍵穴に合う鍵を持っているものだけ。ところがウイルスは細胞の鍵穴に合う『偽の鍵』を持っていて、まんまと細胞を騙すことに成功し、侵入を果たします。細胞に侵入したウイルスは1000倍にも増殖し、再び外に飛び出して新たに感染する細胞を求めて散らばっていきます。このままだと肺の細胞が次々とウイルスにやられて肺炎が進行し、症状がどんどん悪化してしまいます。この危機的な状況を防ぐために立ち上がるのが、私たちの体を守る防衛隊、免疫細胞です。
ウイルスに感染した細胞が免疫細胞に危険を知らせる警報物質(インターフェロン)、いわば「敵が来たぞ」というメッセージは血流に乗って全身に広がっていきます。そして血管の中を転がっている丸い食細胞(好中球といわれる免疫細胞)は、そのメッセージを受け取ると、血管の外に出て感染が起きている現場へ急行し、異物を見つけると近づいて食らいついて丸飲みします。いち早く感染を察知し、丸飲み攻撃をしかけるこの防衛隊は『自然免疫』と呼ばれ、生まれつき私たちが誰でも持っている免疫システムです。
ウイルスに感染して無症状で済む人は、体の中で食細胞が大活躍していると考えられるのです。
ところが体調は思わしくなく症状がだんだん悪化していくことがあります。実はウイルスが『自然免疫』の攻撃をすり抜ける驚きの能力を持っていることが最新の研究で明らかになってきました。ウイルスが細胞に侵入すると、感染した細胞は「敵が来たぞ」という警報物質を大量に放出していましたが、ウイルスが持つ特別な遺伝子が働くと、作られる警報物質の量が10分の1まで抑え込まれてしまい、敵が侵入したという情報が伝わらないため、野放しとなったウイルスは大増殖してしまいます。
☆症状悪化の危機!命を守る 第2の防衛隊 『獲得免疫』
もはや『自然免疫』では抑えきれない程に大増殖したウイルス。その時体の中では第2の防衛隊が立ち上がります。先程までウイルスと戦っていた食細胞の仲間の伝令役の食細胞(樹状細胞)が走り始め、免疫細胞にたどりつき、戦いの時に飲み込んだウイルスの断片を手の様なものに乗せて差し出しています。免疫細胞がそれを敵の情報として受け取ると、翼の様なものが生えて出撃準備完了。ウイルスだけを狙い撃ちするキラーT細胞の登場です。キラーT細胞はウイルスに感染した細胞を巧みに見つけ出し、へばりつき、事前に学んだ情報とこの断片を照らし合わせ、一致すれば攻撃を開始します。実際にキラーT細胞の攻撃の様子を捉えた最新の顕微鏡映像では、キラーT細胞はターゲットの細胞にとりつくと、毒物質を注入し、感染した細胞ごとウイルスを消し去るのです。
しかし、ウイルスはこのキラーT細胞の攻撃をも退ける特殊能力を持っている可能性も見えてきました。狙うのは、感染した細胞がウイルスの断片を突き出す手が表面に出る前に分解してしまうのです。そうなるとキラーT細胞が、ウイルスが潜む感染した細胞を見つけることができないままウイルスがどんどん増殖してしまいます。そこで、さらなる免疫の部隊が導入されます。B細胞です。B細胞はウイルスの断片に触れて敵情報を入手。そして作り出すのが『抗体』といわれる物質です。顕微鏡で拡大するとYの字の様な形をしています。どんな攻撃をするかというと、B細胞が放出した抗体がウイルスに近づき、ウイルスが細胞に侵入するために使う『偽の鍵』に付着します。こうなるとウイルスは感染も増殖もできなくなり、行き場を失ったウイルスに食細胞が近づき、次々と食らいつきます。ここまでくればもう安心。私たちの体は徐々に回復していきます。
実はT細胞やB細胞は私たちの体の中でウイルスの記憶を保ったまま待機し続け、もし再びウイルスが体に侵入してきても、すぐに戦闘態勢がとれるように準備しているのです。敵の情報を学んで集中攻撃を仕掛け、撃退した後も体を守り続ける専門部隊、これが『獲得免疫』と呼ばれる第2の防衛システムなのです。
私たちの体(人体)の免疫細胞は40種類以上あって、それぞれが違う役割を担う『免疫ネットワーク』でウイルスと対峙しています。
新型コロナウイルスには免疫の力を利用して対応できるのではないかと世界中の研究者が治療薬(ワクチン、抗体)の開発に努力しています。

新型コロナウイルス感染予防策
私たちが日常生活でできる予防策として、先ずは「感染しない」、「人にうつさない」ことを第一に考え、「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の発表した「新しい生活様式」を着実に実行していくことが大切です。
新型コロナウイルスの感染経路は、主に飛沫感染と接触感染が考えられています。まず、飛沫感染の予防策として「密閉」「密集」「密接」、いわゆる「3密」の回避です。
「密閉」を避けるためには、空気の流れができるよう2方向の窓を全開することです。換気は1時間に2回、数分間程度が目安です。
「密集」は人の密集する場所を指し、大勢が集まるイベント会場などでは、お互いの距離を2メートル程度(最低でも1メートル)空けること「ソーシャルディスタンス(社会的距離などの意味)」が求められます。
「密接」は近距離で会話や発声をすることであり、会議などで対面での会話が避けられない場合は、十分な距離を保ち、互いの飛沫が飛ばないようマスクを着用しましょう。国からマスク着用が推奨される動きは、1918年(100年前)、世界中で大流行した「スペイン風邪」の時の対策でした。
スーパーコンピュータ―「富岳」を使った計算では、マスクによって飛沫の拡散を約8割防ぐことができるという結果が出ました(理化学研究所2020年8月24日公表)。
※ 新型コロナウイルスの特徴のひとつに『見せかけの無症状』といわれるものがあり、体の中でウイルスがどんどん増えていき、最初は無症状ですが、感染から5日経つとウイルスが一定の量を超えるので、咳や倦怠感、発熱といった風邪の様な症状が現れ、肺炎が進行します。
日本の最新報告によると、感染を広げた人の多くが無症状でありました。無症状だからといって感染していないわけではないので、他の人の命を守るためにマスクが大事な働きをすることを示しています。
次に接触感染の経路として、一番気をつけたいのは「手」です。ウイルスの体内への侵入経路は、鼻や口、目などの粘膜からです。ウイルスの付着した手で粘膜に触れると、そこから感染してしまう恐れがあります。そのため、手についたウイルスをきれいに洗い流すことが感染予防の基本となります。手の洗浄は、石けん液と流水で汚れや日常生活で皮膚の表面や爪に付着した菌の一部を除去します。手全体や手のしわ、指の間などもしっかりと石けん液を泡立てて行き渡らせるのがポイントです。短い時間では落としきれないので、30秒を目安に心がけましょう。それでも除去できなかったウイルスを消毒するのがアルコール消毒液(濃度が約70%以上のエタノール)です。

おわりに
新型コロナウイルス感染に打ち勝つためには、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動(ラジオ体操や自分にあった速度と時間の散歩など)による基本的な心身の健康作りによって免疫力をさげないことが大切です。
また、東洋医学研究所®黒野保三所長の長年の研究によって裏付けられている生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法の鍼治療(鍼と超音波の併用治療)を受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・いのちもお金も大事! 新型コロナウイルスから身を守る・家計を守る・くらしを守る:彩流社編集部、2020年10月12日発刊、彩流社
・https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/detail/detail08.html
・NHKスペシャル タモリ×山中伸弥 人体VSウイルス 驚異の免疫ネットワーク 11月9日放送
・黒野保三.長生き健康「鍼」.現代書林.2008:94-6
・NHKスペシャル「謎の感染拡大~新型ウイルスの起源を追う~」12月27日放送
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2020年12月 1日 火曜日

子供の「疲労」を解決しよう 東洋医学研究所®グループ  にしだ鍼灸院 院長 西田 修 令和2年12月1日号 

子供たちは疲れています
子供の疲労には、様々な原因がありますが、その中でも「生活時間帯のずれ」が深刻な状況にあると考えられます。学校が終わった後も、習い事やクラブ活動に参加する子供が非常に多く、中学生になるとそれは一段と際立ってきます。それによって、就寝時刻がどんどん遅くなり、結果として睡眠不足の状態が続き、とれない疲労が蓄積してしまいます。3ヶ月以上続く疲労を慢性疲労といいます。このような背景から、疲れている子供が増えているといえます。
 
睡眠時間を確保しましょう
理想の睡眠時間は国際的にも議論がなされており、小学生は9時間以上、中学生は8時間以上といわれています。
1日は24時間ですが、そこから理想の睡眠時間である9時間を引いた15時間が生活時間となります。大切なのは、1日24時間の中で何をするのかを決めて、残った時間を睡眠に充てるのではなく、生活時間の中で何をするのか考えることです。
これを1日単位ではなく1週間単位で考える方が理想的です。子供達の習い事やクラブ活動は、実に多様ですから、日々どのようにしてコンディションを整えていくか、負荷の大きな日があるならば、翌日はそれを緩和させるような時間管理も必要です。毎日8~9時間の睡眠を確保することが理想ではありますが、子供たちの現状を踏まえると、現実的ではありません。だからこそ、1週間というスケールで物事を考えた方が良いと考えます。
子供と大人の疲労は、よく似ています。大人の場合は「ノー残業デー」が設けられて、水曜日に設定されるケースが多いと思います。それは、週の真ん中で労働時間をコントロールすることにより、週の後半を頑張ることが出来るためです。
これは、大人と同じような時間の使い方をしている子供にも、置き換えることが出来ます。子供たちは夜の21時~22時頃まで習い事やクラブ活動をしていると考えれば、大人の残業と変わりません。例えば水曜日の放課後には習い事やクラブ活動を入れないとか、水曜日の部活動は終了時間を早くするといったことを考えるとよいと思います。
また、テレビの視聴時間やSNSの利用時間が長いほど、スマートフォンの利用時間、さらには夜のコンビニエンスストア利用頻度が高いほど、睡眠時間が短いというデータもあります。

睡眠の質を高めましょう
睡眠を高める手段としては、まずは「道具=寝具」の改善が考えられます。枕の高さを変える、体圧分散機能が付いたマットレスを使う等が挙げられます。次に「睡眠環境」を整えることです。暑すぎたり寒すぎたりすると、体温調節にエネルギーを使ってしまうだけでなく、交感神経を優位にしてしまう恐れがあるためです。そして、テレビの視聴やスマートフォンの利用は控えましょう。
一方、起床時については、目覚まし時計のアラームで目覚めるよりも、自然光を少しずつ浴びながら目覚めるのが理想とされています。
そして、子供の疲労を解決するもう一つの糸口が「家族」です。家族とコミュニケーションをよくとっているかどうかが、寝る前の情動の安定に関係します。学校であった出来事や、習い事やクラブ活動で取り組んだことを家族に話し、それに対して褒められたり、受容されたりするような心地よい時間があると寝る前の心の落ち着きが生まれると考察できます。
不安な状態では、寝ようと思って布団に入っても、ネガティブなことを考えてしまうものです。そうすると、睡眠は本来ならば脳の温度を1~2度下げる作用があるにもかかわらず、脳が活動してしまうことで温度が下がらず、なかなか寝付けません。
 
東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは睡眠に対する鍼治療の臨床研究を行っています。 
第27回生体制御学会学術集会シンポジウム「医療の水際での鍼灸診療」において、「鍼灸院における睡眠に対する鍼治療の実態調査」と題して、初回鍼治療日に主訴の内容に関わらず1回の鍼治療で63%の人が「いつもよりよく眠れた」と回答していると報告しました。
また、鍼治療を行った日と、行わなかった日の2日間の睡眠の評価についてOSA睡眠調査票MA版を使用して検討した結果、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復において点数の増加が認められ、鍼治療により自覚的な睡眠の質が改善したことが客観的に評価されました。
また「睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討」と題した報告では、6症例の不定愁訴指数の推移は有意に減少し、不定愁訴カルテによる効果は、著効1例、有効5例でありました。また、睡眠障害も全症例において改善され、睡眠障害および睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性が示されました。
鍼治療が睡眠の質を高めていることは、鍼刺激が自律神経の副交感神経機能を亢進しているということが基礎研究から明らかであります。

おわりに
今回、子供の「疲労」の大きな原因である「睡眠不足」についてお話しさせていただきました。大人も子供も多忙を極める昨今「睡眠」がとれない「疲労」がとれないと感じる方は生活習慣の改善とともに心身の健全を保つために鍼治療を定期的に受療されることをお勧めいたします。

引用・参考文献
・特集 上手な「疲労」との付き合い方:コーチング・クリニック. 2020. 5
・皆川宗徳,黒野保三:鍼灸院における睡眠に対する鍼治療の実態調査 第27回生体制御学会学術集会抄録集 11.2009
・石神龍代,皆川宗徳,福田裕康,井島晴彦,近藤利夫,黒野保三. 睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討. 全日本鍼灸会誌. 2006: 56(5); 793-801.
・石神龍代,黒野保三,皆川宗徳,山田 篤,各務壽紀,早野順一郎:黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による睡眠の質の改善効果―OSA睡眠調査票MA版を用いた自覚的な睡眠の質の評価―.全日本鍼灸学会雑誌.2016;66(1):24-32.
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J.Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. AutonNeurosci. 2011; 161. 116-20.
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