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コラム

2020年4月 1日 水曜日

今あらためて血圧に関するお話 東洋医学研究所®グループ  伸誠鍼灸院 院長 加納 俊弘 令和2年4月1日号

昨年、「高血圧治療ガイドライン2019」が発表されました。
主だった変更点はリスクの高い糖尿病や腎障害のある方をより厳格な降圧目標とすることでした。

最近、いろんな立場の方々が、血圧に関して動画サイトなどを通じて、血圧は高くてもかまわない、むしろ血圧はある程度高い方が血流が良い、医療産業が降圧薬を売るために血圧を低く設定している、降圧薬を服用していると脳梗塞になるなどと発言をされています。
血圧の中身を考えずに血圧値だけで善し悪しを無責任に発信されることは決して有益なこととは思えません。また、このような発言をされた方々の中に鍼灸師がおられたことを大変残念に思っております。

今回、循環器の医師に紹介するにあたって患者さんにお伝えしていること、高血圧に関し臨床の現場で経験したことを、お話しさせていただきたいと思います。

血圧が高い方が血流が良いというのは誤った認識であります。
以前コラムでお話しさせていただいた中心血圧は心臓から出た大動脈基部の血圧です(平成21年9月1日号コラム:知って防ごう!動脈硬化Part3-手首の脈から得られる動脈硬化の新しい指標-)。
大動脈など太い動脈は弾性血管と呼ばれ、その先の末梢血管とともに、この弾性力が失われてくると中心血圧は高くなり、全身の血行動態も悪くなります。つまり、滑らかな血流が血管や脳や腎臓などの組織にダメージを与える血流に変わってしまいます。

残念なことに、降圧薬を服用しておられる患者さんもなかなか医師による血行動態の改善につながる生活習慣の指導や説明を受けている方が少なく、血圧値だけで一喜一憂されている方が多いように思われます。

患者さんに血圧の中身を説明させていただく時にいつもお話しすることは、この中心血圧の存在で、「80歳と20歳、身長、体重が同じで血圧120/80mmHg 脈拍80回/分という同じ数値のデータがあった場合どう思われますか」とお聞きします。ここで答えられる患者さんはおられませんが、「20歳の中心血圧はおそらく100mmHgない位でしょう。80歳の中心血圧は130mmHg位はある場合が多いと思います。」とお話しさせていただきます。

つまり、一般的に測られている上腕血圧では見えない血管リスクがあること、この中心血圧に影響する大動脈の弾性力の維持改善には食生活などの生活習慣の改善とともに有酸素運動が必要不可欠であること、有酸素運動はその他の基礎疾患がある場合は必ず医師の指導により行うこと、などがあります。年齢にもよりますが、有酸素運動は一般的には目標値40分以上、隔日行うことが理想であることなどを、お話しさせていただいております。

過去の臨床において血圧と症状がリンクした症例が数々ありました。

高血圧・糖尿病・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症の既往があり、足趾が黒く冷たい患者さんが1年ほど鍼灸治療に通われて、足趾の色の改善とともに血糖値と血圧の変動が安定してきました。

半年間も膝痛で理学療法の治療を受け改善が見られずに来院された患者さんは、降圧剤を服用されていたにも関わらず、午前中の血圧が180mmHg以上あり肥満と血糖値が高めでした。治療をさせていただき膝の痛みと熱感はある程度緩和してお帰りになったものの3日後に来院された時には、また痛みと熱感をぶり返し3回ほど治療させていただいた後に、循環器専門医を受診され原発性アルドステロン症が見つかり投薬の結果、血圧の正常化とともに膝の痛みと熱感も取れていきました。
 
また、同じく膝痛の患者さんで肥満と高血圧と心房細動の既往がありましたが、血圧と心機能が改善されてきたのと時を同じくして膝痛も改善していきまた。

また、残念な症例ではありますが、腰痛の患者さんでやはり上半身肥満があり、その方も午前中の血圧が高く肥満解消のための食生活などの生活習慣の改善と循環器専門医の受診を勧めたのですが、なかなか聞き入れられず鍼灸治療も離脱され、数か月後に脳卒中でお倒れになりました。

このように血圧は筋骨格系の炎症・疼痛症状にも少なからず影響を及ぼしており、その改善と管理が身体全体の健康に必要であると思います。

私は鍼灸治療の前にほぼ100%患者さんの血圧を測っております。そこで思うのは、自分の朝夕の血圧値を知るということ、血圧高値が頻繁の場合、食生活などの生活習慣の改善を行い、なお高い場合は血圧手帳(けんぽれんHP:血圧手帳)をつけた上で循環器専門医への受診をお勧めいたします。

今日、未熟ではありますが、鍼灸治療をさせていただくにあたり、知識の研鑽と鍼治療に対する姿勢を学ばせていただきました東洋医学研究所®黒野保三所長に深く感謝申し上げます。

参考資料
・血圧手帳:https://www.kenporen.com/health-column/ketsuatsu-techo/
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2020年3月 1日 日曜日

生活で感じる痛みの疑問 令和2年3月1日号 東洋医学研究所®グループ  二葉はり治療院 院長 甲田久士

はじめに
「なぜ痛いのか?」そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか?怪我をして組織が壊れると必ず痛みが起こります。しかし、同じ怪我でもその人の置かれている状態や怪我をした部位によって痛みの感じ方や大きさ、さらにその後の経過が大きく異なります。このように、単純に「痛み」といっても、その発現機序や経路は様々で、一言では説明できません。
そこで、今回は生活で感じる痛みの疑問について考えてみたいと思います。

感情がどのように痛みに影響するのか
怒ったりイライラしていると急に痛くなったり、普段何でもない痛みがとても強く感じられた経験はないでしょうか?痛みに伴うストレスが副腎髄質に影響を及ぼしカテコールアミンが分泌され、血糖値の上昇、血圧の上昇、免疫に関するリンパ組織の活動抑制、過剰な胃酸分泌など様々な反応を引き起こします。さらに怒りや悲しみ、イライラなどのストレスが痛みそのものの感受性を変えてしまうことも知られています。
ストレスを脳で感じると視床下部を介して下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンを分泌することで副腎皮質に働きかけ、ノルアドレナリンを分泌し血中に放出し、痛みを感じる神経や侵害受容器を刺激して痛みが生じます。
一方、不安が続いてうつ病などを発症すると、セロトニン含有神経の活動が低下し、セロトニン量が減ることが知られています。もともと、人間には痛みから逃れるための防御機構(自己鎮痛)が備わっています。セロトニンは、中枢では痛みに関係する神経の活動を抑制する働きがある物質です。ストレスが長期化すると、セロトニン含有神経も活性が阻害され、自己鎮痛が生じなくなって痛みが増強します。
以上のことから、怒りや不安などの感情的ストレスが加わると普段よりも痛みを強く感じることになるのです。感情を乱さないことが痛みの予防につながります。

生活習慣がどのように痛みに影響するのか
痛みが慢性化すればするほど、様々な要因が関与してきます。生活習慣を改善することで、痛みを予防することが可能ではないでしょうか?痛みとの関連性が深い、一番身近な生活習慣は「お酒とタバコ」です。適度なお酒は「百薬の長」といわれており、痛みに限らず様々な病気に効果があるように思われがちです。実際に、筋肉のコリなどで血液の流れが悪い患者さんは、お酒を飲むことで血液の流れがよくなれば、障害部位などにとどまっている発痛物質を洗い流すことになり、痛みを抑制する可能性があります。ただし、これは1つの例であり、痛風や関節痛のようにお酒により痛みが悪化する病気もあります。また、過度の飲酒は痛みを悪化させるとの報告もあります。お酒はその飲み方により、痛みの軽減にも悪化にも関与する難しい嗜好品です。
一方、タバコには血管を収縮させる作用があることが知られています。そのため、タバコを吸えば血流が阻害され、組織の修復を遅らせます。また、血管が収縮すれば発痛物質は局所にとどまり、痛みをさらに悪化させる可能性があります。そのため、タバコは「百害あって一利なし」といえるでしょう。
さらに、肥満も痛みの原因になります。特に筋骨格系の痛みでは、その傾向は著明です。体格指数(BMI)が30以上の人は、それ以下の人と比べて腰痛の発生率が高いことが知られています。これは腰痛に限ったことではなく、膝痛でも肩こりでも同じような傾向が見られます。そのため、痛みの種類によっては体重をコントロールすることも大切なことです。
このように、生活習慣を改善するだけでも痛みをコントロールすることは可能です。痛みのある人は生活を工夫してみましょう。

おわりに
疼痛に効くNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を鎮痛薬として服用している場合は、鎮痛効果はありますが、胃腸障害や腎機能障害、内出血などの副作用を起こすことがあります。
鍼治療は鎮痛効果があり、その鎮痛効果が自律神経系、免疫系、内分泌系にフィードバックされ、生体のホメオスターシス(恒常性)の歪みを元に戻そうとします。
東洋医学研究所®黒野保三所長は、各種疼痛疾患に対する鍼治療と超音波の併用治療の臨床研究において、約92%の有効性を報告されています(黒野保三所長の研究業績参照)。
鍼治療は副作用もありません。黒野保三所長の統合的制御機構の活性化を目的とした鍼治療(生体制御療法)は神経生理学・解剖学の基礎実験から実証医学的に証明された裏付けのある治療方法です。痛みを感じたら我慢せずに鍼治療を受けられることをお勧めします。

引用文献
・伊藤和憲著:よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ.秀和システム.2011
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2020年2月 1日 土曜日

太らないようにするには -食欲を調整しよう- 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 令和2年2月1日号院長 河瀬 美之 

はじめに
ダイエット・・、永遠のテーマですね。これは健康管理、維持には大変重要な課題です。適度に運動して、食生活を見直し、規則正しい生活(食事時間や睡眠時間を一定にするなど)をすることがダイエットの基本だということは、誰しもおわかりのことと思います。
好きな物を好きなだけ食べることを繰り返すと簡単に太ってしまう人は、食欲をぐっとこらえて自粛されることと思いますが、この余分な食欲をコントロールできれば悲しい思いをしなくてもいいのではないでしょうか?今回はこのことについてちょっとした行動で抑えることができることについて述べてみたいと思います。

「早寝早起き朝ごはん」が基本
食欲をコントロールする部分は脳の深部にある視床下部という場所で、ここは自律神経やホルモンを分泌する生命維持には欠かせない重要な場所です。
人間の生体内時計は24時間よりもやや長めに設定されていますので、これをリセットするには、朝起きて目の網膜に太陽の光を届けてあげることです。ある程度一定時間に起きて太陽の光をみることで生体内時計がリセットされると、自律神経やホルモンに1日の始まりを伝え、身体の活動が始まります。
したがいまして、生体内時計機能が狂うと脳の視床下部も混乱し、食欲にも悪影響を及ぼして暴飲暴食の原因となってきます。
もう一つリセットに欠かせないものは朝食です。食事を摂ることで胃腸や肝臓、膵臓、腎臓といった末梢の体内時計が調整されるという報告がされています。朝と昼は血糖値を下げるインスリンというホルモンがたくさん出ますので、朝食をしっかり食べても問題ありません。ところが、夜はインスリン分泌量は少なくなるので、1日の中で夕食が主体の献立ですと生活習慣病のリスクが高まりますし、夜は動かないのでエネルギーが使われないので太りやすくなります。
朝の起床時に光を浴びて体内時計をリセットし、2時間以内に朝食を摂り、末梢時計をリセットしてあげて下さい。

食欲をコントロールするには
1)ごはん食は腹持ちが良い
朝食にごはん食(和食)とパン食(洋食)を摂らせて満腹感を比較するとごはん食の方が満腹感が得られました。昼食も同様でありました。満腹感が持続するということは、次の食事での食べ過ぎが減るということにつながります。
2)適度な運動をしている日の方が食欲が少ない
仕事がお休みの日、家でゴロゴロしていてもお腹が減ってくるという経験があると思います。野生動物は敵がいなくて安全な場所に食べ物を持って行った時に食欲を強く感じ、ゆっくり食事をするという習慣があります。人間も同じです。
したがいまして、ゆったりする時間があってもいいのですが、適度に身体を動かした方が食欲がコントロールされるのです。
3)運動によって食欲がコントロールされる程度が男女で違う
運動によって食欲が低下する報告がありますが、女性は男性よりも食欲の低下が少ない傾向にあります。これは、妊娠・出産のためにエネルギー確保をすると考えられています。
4)糖質によって満腹感が得られる
糖質を摂取後、食欲を上げるグレリンというホルモンが約1時間後に最低レベルに低下し、それから2時間持続するという結果が報告されています。
脂質よりもたんぱく質、たんぱく質よりも糖質の方が満腹感が得られので、糖質を必要以上に抜かない方がいいということになります。
5)ベジタブルファーストが食欲に影響するのか?
野菜を先に食べると糖質の吸収が抑えられてインスリン分泌量が緩やかになるので、糖尿病コントロールの一助になることが知られています。しかし、糖質の吸収が抑えられると食欲は旺盛のままです。
そこで、たんぱく質を先にとって食欲を抑え、そして糖質、野菜を摂っていく方が食べ過ぎにならないという理屈です。ただし、糖尿病の人には糖質は最後にした方が無難です。
6)朝食にたんぱく質を摂った方が子供には効果的
朝食からたんぱく質を摂っているグループの子供は摂らないグループの子供より総じて成績が良く、体力も高かった。特に和食でたんぱく質を摂っている子供達は成績、体力、メンタルのいくつかの項目が特に優れていたという結果が得られたことから、和食の重要性が確認されました。
7)思い込みによって食欲が変化する
中身が同じミルクシェイクであっても、一つは「高カロリー」、もう一つは「低カロリー」と書いてあるミルクシェイクをそれぞれの人に飲んでもらったところ、高カロリーと書いてあるものを見ていた時に食欲を上げるグレリンというホルモンが上昇し、飲んだ後はグレリンの分泌が低下して満腹感が得られました。
一方、低カロリーと書いてあるものの方は見ても飲んでもグレリン分泌量は変わりませんでした。低カロリーと書いてあると満足感が得られないという結果となりました。
好きなものを食べた方が満足感が得られるのかもしれません。量を加減すればダイエットにつながるのではないかと思われます。
8)1日3度の食事を12時間以内に摂る
1日3度の食事は12時間以内、できれば10時間以内がベストです。朝の7時に朝食を摂り、夕方5時に夕食を摂るというのがベストです。
つまり、昼食から夕食までの時間が長ければ長いほど過食になるということです。昼の12時くらいに昼食を摂り、帰宅後10時から夕食を摂る人は要注意です。
9)朝に運動、朝食が太りにくい身体を作る
朝に運動するグループと夕方に運動するグループでは朝に運動するグループの方が筋力が優れているという結果が出ています。また、朝食にたんぱく質を摂取するグループとたんぱく質を少なくするグループでは、たんぱく質をたくさん摂っている人の方が平均筋肉量、握力、歩行数が多くなったという結果が出ています。
このことから、朝にウォーキングをして、納豆、卵、牛乳などのたんぱく質を摂ることで活動的な身体作りができ、ひいてはダイエットにつながります。

おわりに
ダイエットには脂肪を燃焼させて体重を減らす方法と、食事を減らして体重を減らす方法の2種類があると思います。後者はまちがって行うと、リバウンドをしてかえって太ってしまう恐れがありますし、健康を害する場合も考えられます。
 食欲をコントロールすることで、自然体で食事を制限することができます。具体的には早寝早起き、太陽の光を浴びてウォーキング、朝食を和食でたんぱく質や糖質を摂り、12時間以内に控えめな夕食を摂ることです。
 人それぞれの生活パターンがありますので、無理にこれに合わせようとすると長続きしませんし、ストレスで過剰な食欲になってしまう恐れがあります。ご自分でできることから始めていただけたらと思います。
 様々な環境によって歪(ひずみ)ができた身体を鍼治療によってリセットできる生体制御療法を東洋医学研究所®やそのグループが実践しております。是非、お受けになり、健康維持にお役立て下さい。

参考文献
 柴田重信:時間栄養学とは.Tarzan.776.10-21.2019
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2020年1月 1日 水曜日

痒み十人十色 東洋医学研究所® 外部主任 中村 覚 令和2年1月1日号

はじめに
東洋医学研究所®ホームページが2003年に開設されてから続いておりますコラムですが、私が初めて担当したのが2005年12月号の「かゆみ」でした。それから、「スキンケア」「ストレスと掻破行動」「ストレスと掻破行動2」「人工透析患者さんのかゆみ」「抗ヒスタミン薬の効かないかゆみ」「ドライテクニック」「虫刺されのかゆみ」「ステロイド外用が誘発するかゆみ」と、かゆみに関するお話をさせて頂きました。今回のコラムは10回目となります。
すでに月日は10数年経過していますが、かゆみのメカニズムや治療の研究については、まだまだ不明な点が多く、かゆみには複雑な機構があることがわかります。
今回は、アトピー性皮膚炎などの痒みのある患者さんが日常的に感じる痒みに関して、下記の内容についてお話をさせて頂きます。
1.温もると痒くなるのはなぜ?
2.夜間に痒みが出やすいのはなぜ?
3.汗をかくと痒い?汗をかかないと痒い?
4.お酒を飲むと痒くなる?
5.熱をこもらせない肌着とは?
6.痒みって伝染する?

1.温もると痒くなるのはなぜ?
温熱刺激はアトピー性皮膚炎の痒み誘起因子として知られていますが、そのメカニズムは不明な点が多く、温熱で誘発される痒みは治療に反応しにくいといわれています。
温度と痒みの関係については、痒いところに熱いシャワーをかける、あるいは氷等で冷やすと痒みが止まることが多く、熱および冷刺激いずれも健常な皮膚においてヒスタミンの痒みを抑制します。
ところがアトピー性皮膚炎の痒みは、冷刺激によって抑制できますが熱刺激によっては逆に増強されます。つまり、アトピー性皮膚炎では熱刺激を痒みに感じる異常が生じているということになります。この現象は、アトピー性皮膚炎病変部の真皮に神経栄養因子アーテミンが蓄積し、皮膚過敏となり温感によって痒みが生じていると考えられています。

2.夜間に痒みが出やすいのはなぜ?
アトピー性皮膚炎等の患者の痒みは、日中よりも夜間に増加し、その結果睡眠障害を来すことが知られています。その原因としては、皮膚バリア機能の低下、痒みを引き起こすインターロイキン2の産生増加、抗炎症作用をもつ副腎皮質ステロイドの産生低下、深部体温低下をもたらすメラトニンの分泌低下などが考えられています。
また、夜間は自律神経のうち副交感神経が優位となり、健常人においては体温が低下して痒みが軽減することになりますが、アトピー性皮膚炎等の掻痒性皮膚疾患患者では、ストレス等の影響で夜間でも交感神経活動が優位となり、体温が低下しにくく、夜間の痒みの増強に繋がっていると考えられています。

3.汗をかくと痒い?汗をかかないと痒い?
汗には、天然保湿因子や、感染防御に役立つ抗菌ペプチドおよび分泌型IgAが含まれ、成熟した角層を形成することにも寄与します。また、発汗によって放熱し、体温を低下させることは痒みの抑制につながります。逆に、発汗量の減少は、皮膚温の上昇、皮膚乾燥を招き、痒みの誘導と増強を導くことになります。つまり、汗をかくことで痒みを抑制できることになります。しかし、健常人と比べアトピー性皮膚炎患者は、発汗しにくく、痒み刺激が発汗量自体を低下させることが分かっています。適切に汗をかくことができなければ、体温が上昇し、かゆみが増強することになります。
 適切に汗をかけることは良いことですが、汗のメリットは時間の経過とともに損なわれ、皮膚表面に汗と汚れが放置されてしまうと痒みをひきおこしたり、皮膚症状を悪化させてしまいます。汗をかいたら、表面に残った汗は洗い流すか、おしぼりでやさしく拭うといった対策も併せて必要となります。

4.お酒を飲むと痒くなる?
アトピー性皮膚炎患者のなかには「お酒を飲むと痒くなる」ということがあります。私自身はアトピー性皮膚炎ではありませんが、「お酒を飲むと痒くなる」ことはよくあります。アトピー性皮膚炎では、健常人と比べてさまざまな要因(発汗、ウールとの接触や情動ストレス)により痒みが増悪することが臨床的に知られています。飲食物では熱いもしくはスパイシーな食べ物とともに、アルコールの摂取も痒みの増悪因子となることが報告されています。これらの食べ物やアルコールの摂取は共通して血流増加(末梢血管拡張)をおこすことから、本作用が痒みの惹起・増強に関与していると推測されています。
アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた研究では、アルコール(エタノール)摂取によって掻破様行動が顕著に増加し、エタノールが上位中枢(脳)に作用した結果生じるものと報告されています。

5.熱をこもらせない肌着とは?
上述したように、痒みは血流増加や体温上昇によって増強することから、肌着においても熱を放散できるものが良いと考えられます。熱放散には、①外気との温度差を利用して皮膚から熱を放射・伝導・対流させる「乾性熱放散」と②汗腺から汗を分泌させ蒸発させる「湿性熱放散」があります。肌着の着用はこれらに影響するため、熱放散をできるだけ促進し、体温の上昇を低く抑えて皮膚に熱をこもらせない肌着を選ぶことが重要になってきます。
綿100%とポリエステル100%を含む繊維組成の異なる種々の市販肌着についての調査では、綿の割合が多いものほど吸湿性は高いが、逆に速乾性は低くなることが示されています。
綿100%とポリエステル(PE)100%の実験衣(ゆとりタイプと密着タイプ)を用いて、90分間の下肢温浴実験における体温上昇の研究では、PE密着タイプ→PEゆとりタイプ→綿ゆとりタイプ→綿密着タイプの順で体温が上昇しました(図)。

図.熱負荷中の体温変化に及ぼすポリエステル製と
綿製衣服の「ゆとり」と「密着」条件の影響
 
つまり、PE密着タイプが最も熱をこもらせない肌着となり、痒みを抑制できると思われます。また、綿密着タイプは最も熱をこもらせる肌着となるため、冷え性など人にとっては、良い肌着となります。では、アトピー性皮膚炎で冷え性の人はどの肌着が良いのかという問題が出てきますが、その場合は素材特性を理解して、個々人の目的に応じた適切な肌着を選択することになると思います。

6.痒みって伝染する?
「誰かがあくびをすると、つられてあくびをしてしまう」「会話している相手が笑ったら、自分も笑ってしまう」「食事中に相手が注文したものと同じものを自分も食べたく感じてしまう」など、無意識のうちに相手と同じ行動をしてしまうことがあります。このように他人の感情は、伝染することがわかっています。
そのメカニズムのひとつとして、私たちの脳に相手の意図や感情を自動的に察知するミラーニューロンシステムが備わっていることがあげられます。最近の研究では、痒みも伝染することが証明されており、この現象は「伝染性の痒み」と呼ばれ、健常人が掻破しているビデオや、昆虫の写真をみると痒みが誘発される、というものです。この傾向は、不安の強い、とくに神経症的傾向のある人に、より強く伝わりやすく、視覚的な刺激だけでなく、掻破している音を聴いただけでも、痒みが誘発されてしまうことがわかっています。
この伝染性の痒みは脳機能画像検査において、痒みを感じているときに活動する部位(島皮質、補足運動野、前頭前皮質、第一次体性感覚野)と同じ場所が、実際に活動が高まっていることが報告されています。また、アトピー性皮膚炎患者は健常人と比べて、さらに強い伝染性の痒みが伝達されることがわかっています。


この画像を見ていると痒くなりませんか?
おわりに
痒みは非常に不快な感覚で、増悪緩解因子は人それぞれに違いがあります。アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚掻痒症の方は、複雑な要因によって日常的に強い痒みを感じています。ちょっとした工夫で痒みが少しでも楽にできれば良いと思います。
東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは、全身調整を目的とした生体制御療法としての鍼治療を行っております。鍼治療を受けると、皮膚の色艶が良くなり、肌が潤ってきます。
是非、痒みを含めた皮膚にお悩みの方に鍼治療を受療されることをお勧めします。

引用・参考文献
・Visual Dermatology:痒み十人十色-がんこな痒みの仕組みと対処法-.第16巻11号.秀潤社.2017
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2019年12月 1日 日曜日

食べる順番は野菜からQ&A 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸院 院長 山田 篤 令和元年12月1日号

〇よくある質問にお答えします
「食べる順番は野菜から(ベジタブルファースト)」という食べ方が浸透してきています(過去のコラムでも紹介しています)。この食べ方により、食後の急激な血糖値の上昇(血糖スパイク)を穏やかにすることで、良好な血糖コントロールが期待でき、効果を実感されている方も多いと思われます。
今回は「食べる順番は野菜から」についてよくある質問にお答えします。

〇どれだけ野菜を食べればいいのか?
「野菜を最初から食べるのはわかるけれど、どれだけの量を食べたら効果が出るの?」というご質問をよく頂きます。どれだけの量、という明確な答えはありませんが、ヒントはあります。
2016年の長崎女子短期大学紀要「食事の摂取順序による血糖値の影響(古賀克彦先生)」の報告1)の一つに、「白飯を摂取する前に摂取するサラダの量を変更した場合の血糖値の影響」があります。健常な女子大生(19~20歳)4名にレタス・トマト・キュウリ・キャベツにドレッシングを加えたサラダを、 ①サラダ150g→白飯150g 、②サラダ50g→白飯150g、 ③白飯150gのみの3パターンにおける食事摂取の順番についての血糖値の推移の調査を実施した結果はグラフAの通りになりました。
グラフA:白飯を摂取する前に摂取するサラダの量を変更した場合の血糖値推移
(長崎女子短期大学紀要 食事の摂取順序による血糖値の影響より改変)

ポイントは②のサラダ50gを摂取した場合は、③のサラダを摂取しない場合と同様に血糖値上昇は抑制されなかったことです。このことから、ある程度の食物繊維を摂取しないと食後の血糖値上昇抑制効果を得ることはできないことがわかります。
参考に、コンビニやスーパーでの袋入り千切キャベツが約100~150g、もやし1袋が約200gです。野菜の種類にもよりますが、なるべく沢山食べましょう。

〇野菜だけの料理はまずないのです
「大概の料理は肉など混ざっていて、野菜から食べることが難しい。一緒に食べてはいけないのでしょうか?」この質問もよくあります。
私自身も疑問に思っていたので持続血糖測定器を装着して試してみました。スーパーで売っている袋に入った野菜炒め用の野菜と豚肉小間切れMサイズを2つずつ買ってきて、野菜と肉を別々に炒めた①野菜炒め→肉→玄米、野菜と肉を一緒に炒めた②肉野菜炒め→玄米 の2パターンにおける食べる順番による血糖値の推移を調査しました。結果はグラフBです。

グラフB:野菜炒め→肉 vs 肉野菜炒め 血糖値推移

①の野菜と肉別々に炒めた方よりも、②の肉野菜炒めの方が血糖値上昇抑制効果は強いことがわかります。海外の似たような文献2)にも同様の結果になった報告があります。
このことから読み取れるのは、確かに食物繊維による血糖値上昇抑制効果はあります。しかし、肉や魚などの脂質やたんぱく質摂取による胃内滞留時間による血糖値上昇抑制効果の方が食物繊維よりも高いことを示しています。

〇食べる順番は最後に炭水化物!
2つの質問から食べる順番による血糖値上昇抑制効果を得るためには、野菜をたくさん食べること、肉や野菜も野菜と同様に最初から食べても可、ということになりますので、炭水化物を最後に食べること以外は食べる順番を気にしなくてもよいと考えています。
ただし、このことは食後の血糖値上昇抑制効果のお話です。大量の脂質や高カロリーの食事を続けていると生活習慣病や心不全、脳血管障害を引き起こす確率が上がりますのでご注意下さい。
運動や睡眠などの生活習慣と併せて、バランスの良い食事で楽しく生活していきましょう。

文献
1)古賀克彦.食事の摂取順序による血糖値への影響.長崎女子短期大学紀要.第40号.2016.70-4.
2)Shukla AP, Andono J, Touhamy SH, et alCarbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetesBMJ Open Diabetes Research and Care 2017;5:e000440. doi: 10.1136/ bmjdrc-2017-000440.
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