コラム
2021年12月 1日 水曜日
今、改めて東洋医学研究所®の話 東洋医学研究所® 所長 橋本 髙史 令和3年12月1日号
東洋医学研究所Ⓡとは
東洋医学研究所Ⓡは黒野保三先生が、伝統ある鍼灸医学の真髄を基盤とし、鍼灸医学の発展と鍼灸医療を通じて社会に貢献することを目的として、昭和42年9月15日に設立されました。
そして、鍼灸医学の基礎研究・臨床試験によって鍼灸診療を行ない、多くの研究を積み重ねておられます。
そして、黒野保三所長に師事して集まった先生方が鍼灸治療に対する技術・学術の向上を目指し、それぞれが黒野先生の教えを受けて開業され、東洋医学研究所Ⓡグループの一員として、地域医療の貢献のため努力されております。
東洋医学研究所Ⓡの治療理念
疾病に対する予防のアプローチには、以下の三つがあります。
① 一次予防
病気になる前の健康者に対して、生活習慣の改善や健康の増進を図って病気かからないように治療や指導を行うこと
② 二次予防
病気の早期発見や病気になった人にできるだけ早期治療を行い、病気の進行を抑え、病気が重症化しないよう努めること
③ 三次予防
病気が進行した後の後遺症の治療、病気の再発防止、残存機能の回復・維持をはかること、治療過程においての指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促すこと
このことは、鍼治療が第一次予防である「健康管理」につながり、病気になりにくい体作りそのものであると考えます。
そして、黒野先生が行われてきた多くの基礎研究・臨床研究の結果から黒野式全身調整基本穴を使用した生体制御療法による治療が疾病の予防につながっているということであり、私は黒野先生のもと、臨床の現場で多く見てまいりました。
病気の治療はもちろんですが、健康管理こそが重要であり、皆様の健康維持のお手伝いをさせて頂くことが東洋医学研究所Ⓡの治療でもあると考えます。
黒野保三先生の教え
私は黒野先生から治療家としての柱は「学・術・道」であることを教わりました。
正しい医療知識、確かな鍼治療の技術、そして「道」とは人間性であります。鍼治療の際、患者さんと話をし、悩みを理解して適切なアドバイスができる。そして精度の高い鍼治療を行うことによって今後も安心して治療を受けていただく。この安らぎは鍼治療の効果をより高めることになり、患者さんに信頼されることにつながると考えます。
そのために学会に参加し、正しい知識を吸収し、鍼治療の技術の錬磨に努め、そして病んだ患者さんに寄りそえる人間性を豊かにすることこそが治療家として何よりも重要であると考えます。
黒野保三先生との思い出
平成23年8月9日中日新聞朝刊掲載の「医人伝」にて黒野先生のご紹介を頂きました。
その日の朝から問い合わせが殺到し大勢の新患さんがお見えになられました。我々スタッフも問診や電話の応対で手いっぱいの中、黒野先生は普段通り淡々と鍼治療をされておられました。
そんなある日、黒野先生とある患者さんの入院先にお見舞いに行く道中のことです。
「橋本君、どうだ、治療室は忙しいか?」
私は何となしに「はい、大勢の患者さんがお見えになられて目の回る思いです」と答えました。
その後すぐさま「忙しい?大勢の方がお見えになられて治療しているのは私だぞ。せっかくの機会を忙しいではなく、勉強させてもらっているという心持ちでなければ、この機会の意味が分からないままだぞ。私の前で忙しいと言ってはいけないよ。こんな経験ができる事はめったにないのだから」とご指導いただきました。
今思うとお恥ずかしい限りで、なんとも身をわきまえない話ですが、何が大事なのか、治療家としての心の在り方はどうあるべきかを学んだ思いで、感謝の気持ちでいっぱいです。
思い出となると数多くありまして話は尽きませんが、黒野先生からは鍼治療のことだけではなく、ゴルフや囲碁を通じて考え方や人間性について教えて頂きました。本当に感謝しております。
黒野保三先生の教えを胸に
上記のお話は東洋医学研究所Ⓡホームページでも詳しく掲載されております。今回は改めて自分の再確認のためにお話しさせて頂きました。
黒野保三先生からは、鍼治療のことだけではなく多くのことを学ばせて頂きました。その教えを還元するためにこれからも治療に精進していきたいと思います。そしてその教えを次代に伝えていく事も大事なことだと思います。黒野先生の業績につきましては、今後当ホームページで動画にて順に紹介させて頂きますので、ぜひご期待ください。
東洋医学研究所Ⓡの鍼治療は痛くなく、副作用もありません。長く治療に通われている患者さんは健康を保ちながら毎日を楽しく過ごされていると思います。週1~2回の健康管理の鍼治療を受けられて、病気にならない体を、長生きできる体を作りましょう。



東洋医学研究所Ⓡは黒野保三先生が、伝統ある鍼灸医学の真髄を基盤とし、鍼灸医学の発展と鍼灸医療を通じて社会に貢献することを目的として、昭和42年9月15日に設立されました。
そして、鍼灸医学の基礎研究・臨床試験によって鍼灸診療を行ない、多くの研究を積み重ねておられます。
そして、黒野保三所長に師事して集まった先生方が鍼灸治療に対する技術・学術の向上を目指し、それぞれが黒野先生の教えを受けて開業され、東洋医学研究所Ⓡグループの一員として、地域医療の貢献のため努力されております。
東洋医学研究所Ⓡの治療理念
疾病に対する予防のアプローチには、以下の三つがあります。
① 一次予防
病気になる前の健康者に対して、生活習慣の改善や健康の増進を図って病気かからないように治療や指導を行うこと
② 二次予防
病気の早期発見や病気になった人にできるだけ早期治療を行い、病気の進行を抑え、病気が重症化しないよう努めること
③ 三次予防
病気が進行した後の後遺症の治療、病気の再発防止、残存機能の回復・維持をはかること、治療過程においての指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促すこと
このことは、鍼治療が第一次予防である「健康管理」につながり、病気になりにくい体作りそのものであると考えます。
そして、黒野先生が行われてきた多くの基礎研究・臨床研究の結果から黒野式全身調整基本穴を使用した生体制御療法による治療が疾病の予防につながっているということであり、私は黒野先生のもと、臨床の現場で多く見てまいりました。
病気の治療はもちろんですが、健康管理こそが重要であり、皆様の健康維持のお手伝いをさせて頂くことが東洋医学研究所Ⓡの治療でもあると考えます。
黒野保三先生の教え
私は黒野先生から治療家としての柱は「学・術・道」であることを教わりました。
正しい医療知識、確かな鍼治療の技術、そして「道」とは人間性であります。鍼治療の際、患者さんと話をし、悩みを理解して適切なアドバイスができる。そして精度の高い鍼治療を行うことによって今後も安心して治療を受けていただく。この安らぎは鍼治療の効果をより高めることになり、患者さんに信頼されることにつながると考えます。
そのために学会に参加し、正しい知識を吸収し、鍼治療の技術の錬磨に努め、そして病んだ患者さんに寄りそえる人間性を豊かにすることこそが治療家として何よりも重要であると考えます。
黒野保三先生との思い出
平成23年8月9日中日新聞朝刊掲載の「医人伝」にて黒野先生のご紹介を頂きました。
その日の朝から問い合わせが殺到し大勢の新患さんがお見えになられました。我々スタッフも問診や電話の応対で手いっぱいの中、黒野先生は普段通り淡々と鍼治療をされておられました。
そんなある日、黒野先生とある患者さんの入院先にお見舞いに行く道中のことです。
「橋本君、どうだ、治療室は忙しいか?」
私は何となしに「はい、大勢の患者さんがお見えになられて目の回る思いです」と答えました。
その後すぐさま「忙しい?大勢の方がお見えになられて治療しているのは私だぞ。せっかくの機会を忙しいではなく、勉強させてもらっているという心持ちでなければ、この機会の意味が分からないままだぞ。私の前で忙しいと言ってはいけないよ。こんな経験ができる事はめったにないのだから」とご指導いただきました。
今思うとお恥ずかしい限りで、なんとも身をわきまえない話ですが、何が大事なのか、治療家としての心の在り方はどうあるべきかを学んだ思いで、感謝の気持ちでいっぱいです。
思い出となると数多くありまして話は尽きませんが、黒野先生からは鍼治療のことだけではなく、ゴルフや囲碁を通じて考え方や人間性について教えて頂きました。本当に感謝しております。
黒野保三先生の教えを胸に
上記のお話は東洋医学研究所Ⓡホームページでも詳しく掲載されております。今回は改めて自分の再確認のためにお話しさせて頂きました。
黒野保三先生からは、鍼治療のことだけではなく多くのことを学ばせて頂きました。その教えを還元するためにこれからも治療に精進していきたいと思います。そしてその教えを次代に伝えていく事も大事なことだと思います。黒野先生の業績につきましては、今後当ホームページで動画にて順に紹介させて頂きますので、ぜひご期待ください。
東洋医学研究所Ⓡの鍼治療は痛くなく、副作用もありません。長く治療に通われている患者さんは健康を保ちながら毎日を楽しく過ごされていると思います。週1~2回の健康管理の鍼治療を受けられて、病気にならない体を、長生きできる体を作りましょう。
2021年11月 1日 月曜日
強く、元気な骨をつくろう ~骨は生まれ変わる~ 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長 田中 良和 令和3年11月1日号
はじめに
私は施術の際、立つ姿勢についてのアドバイスすることが多くあります。その方法の最初は、まず足の裏を意識していただくことです。踵(かかと)の中央と母趾球(足の親指の付け根)、小趾球(足の小指の付け根)を認識しながら、踵を中心に立つ姿勢です。いわゆる"骨で立つ"ことを意識していただきます。その理由は、スムーズな身体の重心移動(歩行)を行うため、下肢等の筋肉や腱に余分な力を加重しないことが理由です。
大切な骨について
人の身体は使わないと衰えていきます。これは皆様よく理解されていることと思います。「最近、筋肉が落ちた」「歩くと息があがる」など、目に見えたり、感覚として自覚できる部分は、身体の衰えを実感できます。
では骨の衰えは自覚できるかといいますと、見ることができませんし、骨密度の検査等を行わないと捉えることができません。ですが骨も筋肉などと同様、身体を動かすこと(運動)により適度な刺激を与えないと衰えが加速していきます。もちろん骨の構成成分となる栄養の吸収(食事)も重要になることは論を待たないところです。
骨の主成分は、リン酸カルシウムとタンパク質です。骨の中の無機質(主にカルシウムとリン)の量を「骨量(骨塩量)」といい、単位面積内の骨量を「骨密度」といいます。
骨は身体を支える柱の役割をしています。骨あっての脊椎動物であり、骨があるから人間は多彩なメリハリのある動きが可能となります。人体にある約200個の骨は身体の成長とともに、大きく、強くなり、骨折をしても再生します。成長期が終了しても、骨は他の細胞と同様に活発に新陳代謝(骨リモデリング)を繰り返し、質と量を維持しています。骨は約10年~20年で生まれ変わる組織なのです。このバランスが崩れると骨粗鬆症などの骨の疾患を起こします。
骨の新陳代謝(骨リモデリング)は緻密に行われている
骨には大きく分けると「骨細胞」と老化や壊れた骨細胞を吸収に導く「破骨細胞」、その後、新しい骨細胞形成に働く「骨芽細胞」の三つがあります。この三つの細胞と、その機能を結びつけているタンパク質がシグナルとなり、その人の生活習慣に応じた骨の新陳代謝が行われていることが分かってきています。
骨の代謝は、骨細胞から放出されたタンパク質がシグナルとなって、破骨前駆細胞へ働きかけて成熟した破骨細胞へと変身させ、骨細胞吸収が始まります。破骨細胞からは骨芽細胞の働きを抑えるタンパク質が放出される一方で、骨吸収を進めながら骨芽細胞の表面にシグナルを送るタンパク質が放出され、骨吸収から骨形成(増殖)へスムーズに移行するように促されます。骨吸収が終了し骨形成のフェーズに入ると、骨芽細胞からも骨形成を行いながらタンパク質が放出されます。このタンパク質は骨吸収と骨形成の両者を調整する働きを担っています。
このように骨の代謝が行われ、皆様が知らないうちに古い骨から新しい骨へと造りかえられています。
近年、骨は、中心部の骨髄での血液や免疫細胞の造成、カルシウムやリン酸の蓄積、身体の屋台骨としての機械的作用の他に、骨細胞から分泌されるタンパク質が腎臓の制御に重要な役割を果たすこと、免疫系の制御とも密接に関わっていることなど、身体全身の制御に関わっていることが明らかになってきています。
おわりに
人の身体の機能や構造は緻密に精巧にできています。新陳代謝は、自然に自律的に粛々と行われ、現在の自分の身体を維持しています。
骨の機能をみてもそう感じます。その自然に修復・調整される身体の機能の中で、私たちができることは、運動や食事などの生活習慣を整えること「養生」です。
鍼灸治療で動きやすい身体づくりを行うと共に、健康管理のお手伝いをさせていただきながら、積極的に運動を生活の中に取入れ、強く、元気な骨をつくっていきましょう!
参考文献
・高柳 広:特集1「骨と免疫の新しい夜明け」 JSTnews June2012
・本間 雅ほか:骨リモデリングにおけるLANKLの役割(ミニレビュー).生化学.第91巻4号.2019
私は施術の際、立つ姿勢についてのアドバイスすることが多くあります。その方法の最初は、まず足の裏を意識していただくことです。踵(かかと)の中央と母趾球(足の親指の付け根)、小趾球(足の小指の付け根)を認識しながら、踵を中心に立つ姿勢です。いわゆる"骨で立つ"ことを意識していただきます。その理由は、スムーズな身体の重心移動(歩行)を行うため、下肢等の筋肉や腱に余分な力を加重しないことが理由です。
大切な骨について
人の身体は使わないと衰えていきます。これは皆様よく理解されていることと思います。「最近、筋肉が落ちた」「歩くと息があがる」など、目に見えたり、感覚として自覚できる部分は、身体の衰えを実感できます。
では骨の衰えは自覚できるかといいますと、見ることができませんし、骨密度の検査等を行わないと捉えることができません。ですが骨も筋肉などと同様、身体を動かすこと(運動)により適度な刺激を与えないと衰えが加速していきます。もちろん骨の構成成分となる栄養の吸収(食事)も重要になることは論を待たないところです。
骨の主成分は、リン酸カルシウムとタンパク質です。骨の中の無機質(主にカルシウムとリン)の量を「骨量(骨塩量)」といい、単位面積内の骨量を「骨密度」といいます。
骨は身体を支える柱の役割をしています。骨あっての脊椎動物であり、骨があるから人間は多彩なメリハリのある動きが可能となります。人体にある約200個の骨は身体の成長とともに、大きく、強くなり、骨折をしても再生します。成長期が終了しても、骨は他の細胞と同様に活発に新陳代謝(骨リモデリング)を繰り返し、質と量を維持しています。骨は約10年~20年で生まれ変わる組織なのです。このバランスが崩れると骨粗鬆症などの骨の疾患を起こします。
骨の新陳代謝(骨リモデリング)は緻密に行われている
骨には大きく分けると「骨細胞」と老化や壊れた骨細胞を吸収に導く「破骨細胞」、その後、新しい骨細胞形成に働く「骨芽細胞」の三つがあります。この三つの細胞と、その機能を結びつけているタンパク質がシグナルとなり、その人の生活習慣に応じた骨の新陳代謝が行われていることが分かってきています。
骨の代謝は、骨細胞から放出されたタンパク質がシグナルとなって、破骨前駆細胞へ働きかけて成熟した破骨細胞へと変身させ、骨細胞吸収が始まります。破骨細胞からは骨芽細胞の働きを抑えるタンパク質が放出される一方で、骨吸収を進めながら骨芽細胞の表面にシグナルを送るタンパク質が放出され、骨吸収から骨形成(増殖)へスムーズに移行するように促されます。骨吸収が終了し骨形成のフェーズに入ると、骨芽細胞からも骨形成を行いながらタンパク質が放出されます。このタンパク質は骨吸収と骨形成の両者を調整する働きを担っています。
このように骨の代謝が行われ、皆様が知らないうちに古い骨から新しい骨へと造りかえられています。
近年、骨は、中心部の骨髄での血液や免疫細胞の造成、カルシウムやリン酸の蓄積、身体の屋台骨としての機械的作用の他に、骨細胞から分泌されるタンパク質が腎臓の制御に重要な役割を果たすこと、免疫系の制御とも密接に関わっていることなど、身体全身の制御に関わっていることが明らかになってきています。
おわりに
人の身体の機能や構造は緻密に精巧にできています。新陳代謝は、自然に自律的に粛々と行われ、現在の自分の身体を維持しています。
骨の機能をみてもそう感じます。その自然に修復・調整される身体の機能の中で、私たちができることは、運動や食事などの生活習慣を整えること「養生」です。
鍼灸治療で動きやすい身体づくりを行うと共に、健康管理のお手伝いをさせていただきながら、積極的に運動を生活の中に取入れ、強く、元気な骨をつくっていきましょう!
参考文献
・高柳 広:特集1「骨と免疫の新しい夜明け」 JSTnews June2012
・本間 雅ほか:骨リモデリングにおけるLANKLの役割(ミニレビュー).生化学.第91巻4号.2019
2021年10月 1日 金曜日
呼吸と免疫力 東洋医学研究所®グループ海沼鍼灸院 院長 海沼 英祐 令和3年10月1日号
○はじめに
近年、健康のためにヨガやピラティス、マインドフルネス瞑想などの人気が高まっています。それに伴って、それらに欠かせない呼吸法が注目されてきています。
普段、我々が何気なくしている呼吸ですが、その役割は酸素と栄養を肺や血管を通して、体の隅々に行きわたらせることです。呼吸を止めると人間は生きてはいられません。そしてその呼吸は、自律神経によってコントロールされています。自律神経は、主に日中の活動時に働く交感神経と、夜間などの安静時に働く副交感神経があり、両者がバランスを取りながら呼吸や血流、ホルモンの分泌、食べ物の消化吸収、そして免疫機能など生命維持に必要なあらゆる体の機能のコントロールに関わっています。この自律神経がバランスを崩すと、様々な不調が起こったり病気になったりします。逆に自律神経のバランスが整っていると体は元気で病気になりにくくなります。
○自律神経が整えば免疫力がアップする
腸は自律神経の影響を大きく受ける部位ですが、自律神経のバランスが整うと腸の働きは活発になり、腸内環境を良好な状態に保つことができます。腸内には我々の免疫細胞の約7割が存在しています。そして、腸内でウイルスや細菌と戦う準備をしながら、体に問題が起こると血流に乗って移動して敵を撃退してくれます。腸内環境が整っていると、免疫細胞も活性化して免疫力が向上します。さらに、自律神経が整った状態だと血流も良くなり、血流に乗って移動する免疫細胞は体の隅々まで移動できるようになります。これも、免疫力の向上に欠かせないことです。免疫力アップにつながる腸内環境と血流は、いずれも自律神経を整えることで改善することができます。
○自律神経が整う呼吸法
ストレスを受けることが多い現代社会では、多くの人が交感神経優位の生活を送っています。そんな交感神経優位の状態では、呼吸は浅くて速くなります。そして、過剰なストレスや不規則な生活習慣などで交感神経が優位になり過ぎると自律神経のバランスが崩れ様々な不調が出てきます。そこで自律神経を整えるための呼吸法が、ゆっくりと長く息を吐く腹式呼吸なのです。腹式呼吸の訓練を続けていくと、自然と自律神経のバランスが整っていきます。
【腹式呼吸のやり方】
① 背筋を伸ばして胸を軽く開き、鼻からゆっくりと息を吐いていきます。お腹の中の空気をすべて出すイメージで、おへそがへこむまで吐き切ります (20秒を目安として) 。
② へこませたお腹を緩め、鼻から息を吸っていきます。少しずつお腹に空気を送り込むように、ゆっくり吸います。お腹がだんだんと膨らんでいくことを確認しましょう (10秒を目安として) 。
③ 再び鼻からゆっくりと息を吐いていきます。お腹の中の空気をすべて出すイメージで行いましょう。
1日1~2回、1回につき10~30分を目安に行います。
○おわりに
今回、呼吸と免疫力についてお話させて頂きました。腹式呼吸の仕方も諸説ありますが、今回は坂田隆夫著 自律神経を整える「長生き呼吸」を参考に紹介させて頂きました。呼吸法で自律神経が整うと免疫力が向上することが分かって頂けたと思います。そして、自律神経の調整にもっとも効果的な治療法が鍼治療です。東洋医学研究所®黒野保三所長の研究された生体の総合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法は、まさに自律神経の調整や免疫力の向上を考慮した治療法です。ぜひ生体制御療法を受けてみてはいかがでしょうか。
引用文献
・坂田隆夫:自律神経を整える「長生き呼吸」. マキノ出版. 2016
・小林弘幸:自律神経を整える「長生き呼吸法」. アスコム. 2020
・松尾伊津香:自律神経を整える正しい呼吸法は意外と難しい.
東洋経済ONLINE. https://toyokeizai.net/articles/-/288695
近年、健康のためにヨガやピラティス、マインドフルネス瞑想などの人気が高まっています。それに伴って、それらに欠かせない呼吸法が注目されてきています。
普段、我々が何気なくしている呼吸ですが、その役割は酸素と栄養を肺や血管を通して、体の隅々に行きわたらせることです。呼吸を止めると人間は生きてはいられません。そしてその呼吸は、自律神経によってコントロールされています。自律神経は、主に日中の活動時に働く交感神経と、夜間などの安静時に働く副交感神経があり、両者がバランスを取りながら呼吸や血流、ホルモンの分泌、食べ物の消化吸収、そして免疫機能など生命維持に必要なあらゆる体の機能のコントロールに関わっています。この自律神経がバランスを崩すと、様々な不調が起こったり病気になったりします。逆に自律神経のバランスが整っていると体は元気で病気になりにくくなります。
○自律神経が整えば免疫力がアップする
腸は自律神経の影響を大きく受ける部位ですが、自律神経のバランスが整うと腸の働きは活発になり、腸内環境を良好な状態に保つことができます。腸内には我々の免疫細胞の約7割が存在しています。そして、腸内でウイルスや細菌と戦う準備をしながら、体に問題が起こると血流に乗って移動して敵を撃退してくれます。腸内環境が整っていると、免疫細胞も活性化して免疫力が向上します。さらに、自律神経が整った状態だと血流も良くなり、血流に乗って移動する免疫細胞は体の隅々まで移動できるようになります。これも、免疫力の向上に欠かせないことです。免疫力アップにつながる腸内環境と血流は、いずれも自律神経を整えることで改善することができます。
○自律神経が整う呼吸法
ストレスを受けることが多い現代社会では、多くの人が交感神経優位の生活を送っています。そんな交感神経優位の状態では、呼吸は浅くて速くなります。そして、過剰なストレスや不規則な生活習慣などで交感神経が優位になり過ぎると自律神経のバランスが崩れ様々な不調が出てきます。そこで自律神経を整えるための呼吸法が、ゆっくりと長く息を吐く腹式呼吸なのです。腹式呼吸の訓練を続けていくと、自然と自律神経のバランスが整っていきます。
【腹式呼吸のやり方】
① 背筋を伸ばして胸を軽く開き、鼻からゆっくりと息を吐いていきます。お腹の中の空気をすべて出すイメージで、おへそがへこむまで吐き切ります (20秒を目安として) 。
② へこませたお腹を緩め、鼻から息を吸っていきます。少しずつお腹に空気を送り込むように、ゆっくり吸います。お腹がだんだんと膨らんでいくことを確認しましょう (10秒を目安として) 。
③ 再び鼻からゆっくりと息を吐いていきます。お腹の中の空気をすべて出すイメージで行いましょう。
1日1~2回、1回につき10~30分を目安に行います。
○おわりに
今回、呼吸と免疫力についてお話させて頂きました。腹式呼吸の仕方も諸説ありますが、今回は坂田隆夫著 自律神経を整える「長生き呼吸」を参考に紹介させて頂きました。呼吸法で自律神経が整うと免疫力が向上することが分かって頂けたと思います。そして、自律神経の調整にもっとも効果的な治療法が鍼治療です。東洋医学研究所®黒野保三所長の研究された生体の総合的制御機構の活性化を目的とした生体制御療法は、まさに自律神経の調整や免疫力の向上を考慮した治療法です。ぜひ生体制御療法を受けてみてはいかがでしょうか。
引用文献
・坂田隆夫:自律神経を整える「長生き呼吸」. マキノ出版. 2016
・小林弘幸:自律神経を整える「長生き呼吸法」. アスコム. 2020
・松尾伊津香:自律神経を整える正しい呼吸法は意外と難しい.
東洋経済ONLINE. https://toyokeizai.net/articles/-/288695
2021年9月 1日 水曜日
心不全について 東洋医学研究所®グループ伸誠鍼灸院 院長 加納 俊弘 令和3年9月1日号
「心不全」と聞くと亡くなられた方の多くの死因として医師が診断する病名で突然死を思い浮かべる方も多いと思います。
心不全とは「心臓の機能低下で全身の血の巡りが悪くなる状態」。病態により「左心不全と右心不全及び両心不全」、機能により「拡張不全と収縮不全」に分けられます。
現在、がんに次いで2番目に多い死亡原因にあげられ、高齢化に伴い毎年1万人ずつ増加していることがわかり、2030年には130万人ともいわれ、心不全パンデミックが起こるのではないかともいわれています。
心不全は進行度によってAからDまでの4段階のステージに分けられます。
初期段階では、約7割の人に自覚症状がなく、その病態が進行してしまうことも多いのです。
症状が現れた時には、重篤化していることも多く、この事を注意喚起するため、日本心不全学会では無症状の心不全に「隠れ心不全」と名付け、2010年に行われた日本心不全学会の市民公開講座で発表されました。
心不全の原因
心不全を起こすのは心臓への負荷であり、その原因は「心臓そのものに原因があるもの」と「心臓以外に原因があるもの」の大きく2つに分けられます。
心臓そのものに原因のあるもの:
虚血性心疾患(狭心症や心筋症)、心臓弁膜症(心臓の弁の異常)、心筋症(心臓の筋肉の異常)、心筋炎(心臓の筋肉が炎症)、先天性心疾患(生まれつきの心臓病)不整脈。
心臓以外に原因があるもの:
肺血栓塞栓症(肺の血管が詰まる病気)、COPD(慢性閉塞性肺疾患:肺機能が低下する病気)、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症、貧血、アルコールの過飲、抗がん剤の影響、敗血症。
心不全の症状
心不全の初期症状はあまり自覚症状がはっきりと現れにくく、息切れなどの症状があっても、「年のせいだから仕方ない」「体力が落ちただけ」と見過ごしてしまいがちで放置したまま重症化してしまい、突然急性症状を発症し救急搬送される方も多くみられます。
左心不全による症状:
初期の左心不全は、肺鬱血によって、倦怠感、動作時の息切れ、動悸、などが起こりますが、安静時には無症状であることも多いです。
しかし重症化すると、安静時にも動悸や息苦しさが強くなります。また、体を横にすると心臓に戻ってくる血液量が増えることで息苦しさを強く感じ、座ると息苦しさが軽減される起座呼吸が見られることもあります。
右心不全による症状:
右心不全では、右室のポンプ機能が低下することにより、右室や右房、全身にも血流が溜まり、体静脈がうっ血します。これにより、顔や足の浮腫、体重増加、胸水などの症状が見られます。そのほか、腹部膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、などの症状も見られることがあります。
心拍出量低下による症状:
心拍出量低下によって起こる症状としては、疲れやすさ、脱力感、乏尿、夜間多尿、チアノーゼ、四肢冷感、記憶力や集中力の低下、睡眠障害、意識障害などが挙げられます。これらの症状の現れ方には個人差があり、自覚のない方もいらっしゃいます。
心不全は、拡張障害が起きたあと、収縮障害も併発するという経過をたどることが多いですが、最近、とくに高齢者で、収縮機能が保たれた心不全(拡張不全)が多いことがわかってきました。血液を取り込む力が衰え、静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなってしまうもので、通常の検査では見つかりにくく、決め手となる治療法が限られるといった特徴があります。
心不全の予後
心不全という病気の特徴として、死亡率が高く、完治がとても難しいことが挙げられます。
癌全体の10年生存率は約58%であると言われていますが、心不全の場合、一番重篤であるステージDにおいては1年の死亡率が50~60%と非常に高く、ステージA~Bの比較的軽度でも5~10%が1年以内に死亡すると言われており、予後は癌と同等、あるいはそれ以上に悪いと考えることができます。
心不全末期の患者さんは大変な苦痛を伴い末期癌の患者さん同様に緩和ケアでも大変難しい対象疾患であります。
普通にできていた動作ができなくなった、浮腫、冷えるようになった、急に体重が増えた、倦怠感、動悸や息切れが増えたと感じたら、心不全を疑い循環器科を受診されることをお勧めします。
心不全の管理と予防
心不全の治療は循環器専門医による正確な診断と治療が大切なことはいうまでもなく、初期症状がない段階から、心不全の原因となり得る生活習慣病の治療及び管理、減塩、禁煙、節酒、心臓リハビリテーションも治療及び予防に重要です。
心不全の予防法として、効果があるのは運動です。
スウェーデンのウプサラ大学研究チームによると心不全の既往歴を持たない20~90代の男女約4万人を対象に、調査した結果、運動をする習慣のある人は、心不全の発症リスクが少ないことが明らかとなりました。中でも、ウォーキングなどの中強度の運動を1時間、もしくは水泳やジョギングなど強度が高めの運動を30分ほど毎日続ける人たちは特にリスクが低くなっており、通常に比べて心不全の発症が46%低下していたそうです。
また米国の心臓学会では、週3~4回、40分の運動を適度な強度で行うことを推奨しています。
今年1月心臓弁膜症の手術をされた高血圧、糖尿病を既往とする77歳の男性が手術後調子が良かったのですが、暑くなってきてから急に、めまいと倦怠感を伴い鍼治療を受けに来ましたが、やはり下肢の浮腫が目立っていました。3日間連続で鍼治療を行ったところ浮腫がとれてくるのと同時に、めまいや倦怠感も改善していきました。
心不全という病名こそついていませんが、下肢の浮腫と手術前安静時心拍数58/minが施術後85/minと上がっていたため、次回受診時に担当医師に相談するように助言いたしました。
鍼治療が心不全にどのような効果があるのかなどの明確なエビデンスは有りませんが、本Web Siteの東洋医学研究所Ⓡ黒野保三所長は日本自律神経学会雑誌の自律神経49巻4号に鍼刺激(筋膜上圧刺激)を行うことによって心臓迷走神経の亢進を証明した世界で初めての研究が原著論文として掲載されました。
生活習慣病や将来の心不全の罹患予防のためにも鍼灸治療をお勧め致します。
資料
・国立循環器病センター・循環器病情報サービス
・http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/
・日本自律神経学会
・http://www.jsnr-net.jp/
心不全とは「心臓の機能低下で全身の血の巡りが悪くなる状態」。病態により「左心不全と右心不全及び両心不全」、機能により「拡張不全と収縮不全」に分けられます。
現在、がんに次いで2番目に多い死亡原因にあげられ、高齢化に伴い毎年1万人ずつ増加していることがわかり、2030年には130万人ともいわれ、心不全パンデミックが起こるのではないかともいわれています。
心不全は進行度によってAからDまでの4段階のステージに分けられます。
初期段階では、約7割の人に自覚症状がなく、その病態が進行してしまうことも多いのです。
症状が現れた時には、重篤化していることも多く、この事を注意喚起するため、日本心不全学会では無症状の心不全に「隠れ心不全」と名付け、2010年に行われた日本心不全学会の市民公開講座で発表されました。
心不全の原因
心不全を起こすのは心臓への負荷であり、その原因は「心臓そのものに原因があるもの」と「心臓以外に原因があるもの」の大きく2つに分けられます。
心臓そのものに原因のあるもの:
虚血性心疾患(狭心症や心筋症)、心臓弁膜症(心臓の弁の異常)、心筋症(心臓の筋肉の異常)、心筋炎(心臓の筋肉が炎症)、先天性心疾患(生まれつきの心臓病)不整脈。
心臓以外に原因があるもの:
肺血栓塞栓症(肺の血管が詰まる病気)、COPD(慢性閉塞性肺疾患:肺機能が低下する病気)、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症、貧血、アルコールの過飲、抗がん剤の影響、敗血症。
心不全の症状
心不全の初期症状はあまり自覚症状がはっきりと現れにくく、息切れなどの症状があっても、「年のせいだから仕方ない」「体力が落ちただけ」と見過ごしてしまいがちで放置したまま重症化してしまい、突然急性症状を発症し救急搬送される方も多くみられます。
左心不全による症状:
初期の左心不全は、肺鬱血によって、倦怠感、動作時の息切れ、動悸、などが起こりますが、安静時には無症状であることも多いです。
しかし重症化すると、安静時にも動悸や息苦しさが強くなります。また、体を横にすると心臓に戻ってくる血液量が増えることで息苦しさを強く感じ、座ると息苦しさが軽減される起座呼吸が見られることもあります。
右心不全による症状:
右心不全では、右室のポンプ機能が低下することにより、右室や右房、全身にも血流が溜まり、体静脈がうっ血します。これにより、顔や足の浮腫、体重増加、胸水などの症状が見られます。そのほか、腹部膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、などの症状も見られることがあります。
心拍出量低下による症状:
心拍出量低下によって起こる症状としては、疲れやすさ、脱力感、乏尿、夜間多尿、チアノーゼ、四肢冷感、記憶力や集中力の低下、睡眠障害、意識障害などが挙げられます。これらの症状の現れ方には個人差があり、自覚のない方もいらっしゃいます。
心不全は、拡張障害が起きたあと、収縮障害も併発するという経過をたどることが多いですが、最近、とくに高齢者で、収縮機能が保たれた心不全(拡張不全)が多いことがわかってきました。血液を取り込む力が衰え、静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなってしまうもので、通常の検査では見つかりにくく、決め手となる治療法が限られるといった特徴があります。
心不全の予後
心不全という病気の特徴として、死亡率が高く、完治がとても難しいことが挙げられます。
癌全体の10年生存率は約58%であると言われていますが、心不全の場合、一番重篤であるステージDにおいては1年の死亡率が50~60%と非常に高く、ステージA~Bの比較的軽度でも5~10%が1年以内に死亡すると言われており、予後は癌と同等、あるいはそれ以上に悪いと考えることができます。
心不全末期の患者さんは大変な苦痛を伴い末期癌の患者さん同様に緩和ケアでも大変難しい対象疾患であります。
普通にできていた動作ができなくなった、浮腫、冷えるようになった、急に体重が増えた、倦怠感、動悸や息切れが増えたと感じたら、心不全を疑い循環器科を受診されることをお勧めします。
心不全の管理と予防
心不全の治療は循環器専門医による正確な診断と治療が大切なことはいうまでもなく、初期症状がない段階から、心不全の原因となり得る生活習慣病の治療及び管理、減塩、禁煙、節酒、心臓リハビリテーションも治療及び予防に重要です。
心不全の予防法として、効果があるのは運動です。
スウェーデンのウプサラ大学研究チームによると心不全の既往歴を持たない20~90代の男女約4万人を対象に、調査した結果、運動をする習慣のある人は、心不全の発症リスクが少ないことが明らかとなりました。中でも、ウォーキングなどの中強度の運動を1時間、もしくは水泳やジョギングなど強度が高めの運動を30分ほど毎日続ける人たちは特にリスクが低くなっており、通常に比べて心不全の発症が46%低下していたそうです。
また米国の心臓学会では、週3~4回、40分の運動を適度な強度で行うことを推奨しています。
今年1月心臓弁膜症の手術をされた高血圧、糖尿病を既往とする77歳の男性が手術後調子が良かったのですが、暑くなってきてから急に、めまいと倦怠感を伴い鍼治療を受けに来ましたが、やはり下肢の浮腫が目立っていました。3日間連続で鍼治療を行ったところ浮腫がとれてくるのと同時に、めまいや倦怠感も改善していきました。
心不全という病名こそついていませんが、下肢の浮腫と手術前安静時心拍数58/minが施術後85/minと上がっていたため、次回受診時に担当医師に相談するように助言いたしました。
鍼治療が心不全にどのような効果があるのかなどの明確なエビデンスは有りませんが、本Web Siteの東洋医学研究所Ⓡ黒野保三所長は日本自律神経学会雑誌の自律神経49巻4号に鍼刺激(筋膜上圧刺激)を行うことによって心臓迷走神経の亢進を証明した世界で初めての研究が原著論文として掲載されました。
生活習慣病や将来の心不全の罹患予防のためにも鍼灸治療をお勧め致します。
資料
・国立循環器病センター・循環器病情報サービス
・http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/
・日本自律神経学会
・http://www.jsnr-net.jp/
2021年8月 1日 日曜日
コロナフレイルについて 東洋医学研究所®グループ 二葉はり治療院 院長 甲田 久士 令和3年8月1日号
はじめに
新型コロナウイルス感染症で世の中が重い雰囲気になっています。東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授が、1年間のデータを全国の自治体から集めて調査したところ、高齢者の自粛生活長期化による生活不活発を基盤とする、心身機能の低下、いわゆる「コロナフレイル」ともいえる状態に陥っている科学的根拠が分かってきました。具体的には最初の半年間だけでも、40%強の高齢者に外出頻度の著明な低下を認め、さらに食の乱れ、人とのつながりや地域交流の低下もみられました。全身の筋肉量減少も前後比較で確認ができ、特に体幹部の減少が著明でした。握力の低下、ふくらはぎ周囲長の減少、活舌の低下なども認められていることがわかりました。
私たちは、いつまでも生き生きと元気に暮らし、介護に頼らず健康で過ごせる期間(健康寿命)を延ばすためには、病気を防ぐだけでなく、体や頭の老化も防ぐことが大切です。
今回は、コロナ禍におけるコロナフレイルについて、お話をさせて頂きます。
フレイルとは
年をとって心身が老い衰えて、心身の活力が低下した状態を「フレイル」といいます。
「フレイル」は「虚弱」(英語でfrailty)が語源です。多くの人が「フレイル」を経て、要介護状態に陥ると考えられています。
「健康な時期」から「プレフレイル(前虚弱)」、「フレイル(虚弱)」、「要介護(身体機能障害)」と順を追って老衰していくことを防ぐためにも、早めに気づいて対処することで、「フレイル」の進行を遅らせ、回復させることが可能です。
フレイルの兆候を早期に見つけよう
身体的-「活動的じゃなくなった」サルコペニア(筋肉減弱)、骨粗鬆症など。特に加齢で筋肉が衰えるサルコペニアは、「フレイル」の最も大きな原因の一つです。
両手足の筋肉量、握力、歩行速度の3つの指標で判断します。筋肉が衰えると、転倒、骨折、認知症のリスクを高めます。
精神・心理的-「外出の機会が減った」意欲・判断力低下、うつなど。
社会的-「おいしいものが食べられなくなった」閉じこもり、孤食(一人ひとり別々に食べる)、困窮など
先に述べた兆候に対し何も対処しないと、
① 外出しなくなる→人とのかかわりが減る→認知症のリスクが高まる
② 体のバランスが悪くなる→転びやすくなる→骨折しやすくなる
③ 噛めなくなる→食欲がなくなる→栄養が不足する
するなどに繋がります。
コロナフレイルとは
新型コロナウイルスによる感染拡大に伴う外出自粛で、心身が老い衰える「フレイル」は、気づかないうちに加速しているといえます。心身の衰えは加齢変化によるものだけではありません。まず、社会とのつながりが希薄になるところから始まります。衰えをドミノ倒しと考えると理解しやすいです。
ひとつが欠けると負の連鎖により機能が低下していきます。
「老い」を見える化する
東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授は、『「フレイル」をチェックすることで、いま自分は「老い」の坂道の何合目にいるか、それを見える化することができます。栄養と運動、社会参加は三位一体。歩く習慣がない人が無理やり歩くことを始めても、続かず、効果がありません。好きなことや日常生活で活動量を補うのと同時に、オンラインなどを使って家族や友人とつながることが大切です。老いを防ぐ対策は十人十色です。』と言われています。
「イレブンチェック」というフレイルの検査を紹介します。計11項目の質問に「はい」か「いいえ」で答えていきます。最終的に、「いいえ」の回答欄に5個以上のチェックがあればフレイルの可能性が高く、少ないほどリスクは低くなります(表)。
コロナフレイルにならない予防にための3つの柱
第1に栄養(バランスの良い食事)。
第2に運動(日用品などの買い物、ウォーキング:65歳以上は男性7000/歩、女性6000/歩、家庭菜園や園芸作業)。
第3に社会参加(地域での習い事やスポーツ教室に参加:密をさければよい)。
加齢とともに、体力や筋力が低下し、日常の買い物が面倒だと感じるようになります。人と接する機会が減ったり、食生活のバランスが崩れたりすることで体が衰え、判断力や認知機能といった頭の働きも低下する悪循環が起きます。
この3つの柱を心がけることによって、フレイルの進行を遅らせることが可能です。
おわりに
今回、コロナフレイルのお話をさせていただきました。老いることにより様々な現象が引き起こされます。特に現在はコロナ禍における行動自粛が加わり、生活不活発による筋肉減弱が思っている以上にかなり進行していると思います。筋肉を大きく失うということは、単に移動問題だけでなく、免疫力も大きく失ってしまいます。感染予防の励行に加え、十分な栄養摂取、三密回避を意識した上での運動や身体活動、十分な睡眠時間などで日常生活の質を落とさず、免疫力を維持する必要があります。
東洋医学研究所Ⓡ所長の黒野保三先生の生体制御療法(筋膜上圧刺激)は、マウスを用いた基礎実験で、鍼刺激が老化防止に関与していることを細胞レベルで証明され、学会発表もされています。免疫機能も鍼刺激により活性化されること、鍼刺激により自律神経の副交感神経を優位に亢進させ睡眠の質の向上などにも影響を及ぼすなどの研究報告をされています。まさに、この生体制御療法はコロナフレイルに適した治療法であると思います。
現在、鍼治療を受けている患者さんはさらなる継続治療をして頂き、また家族の方、友人の方、職場の方など、健康な方でも今後を見据えて、健康管理のための鍼治療(生体制御療法)を受けられることを、是非お勧めします。
引用文献
・介護予防:中日新聞サンデー版2021年4月11日
・コロナフレイル:中日新聞サンデー版2021年4月18日
新型コロナウイルス感染症で世の中が重い雰囲気になっています。東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授が、1年間のデータを全国の自治体から集めて調査したところ、高齢者の自粛生活長期化による生活不活発を基盤とする、心身機能の低下、いわゆる「コロナフレイル」ともいえる状態に陥っている科学的根拠が分かってきました。具体的には最初の半年間だけでも、40%強の高齢者に外出頻度の著明な低下を認め、さらに食の乱れ、人とのつながりや地域交流の低下もみられました。全身の筋肉量減少も前後比較で確認ができ、特に体幹部の減少が著明でした。握力の低下、ふくらはぎ周囲長の減少、活舌の低下なども認められていることがわかりました。
私たちは、いつまでも生き生きと元気に暮らし、介護に頼らず健康で過ごせる期間(健康寿命)を延ばすためには、病気を防ぐだけでなく、体や頭の老化も防ぐことが大切です。
今回は、コロナ禍におけるコロナフレイルについて、お話をさせて頂きます。
フレイルとは
年をとって心身が老い衰えて、心身の活力が低下した状態を「フレイル」といいます。
「フレイル」は「虚弱」(英語でfrailty)が語源です。多くの人が「フレイル」を経て、要介護状態に陥ると考えられています。
「健康な時期」から「プレフレイル(前虚弱)」、「フレイル(虚弱)」、「要介護(身体機能障害)」と順を追って老衰していくことを防ぐためにも、早めに気づいて対処することで、「フレイル」の進行を遅らせ、回復させることが可能です。
フレイルの兆候を早期に見つけよう
身体的-「活動的じゃなくなった」サルコペニア(筋肉減弱)、骨粗鬆症など。特に加齢で筋肉が衰えるサルコペニアは、「フレイル」の最も大きな原因の一つです。
両手足の筋肉量、握力、歩行速度の3つの指標で判断します。筋肉が衰えると、転倒、骨折、認知症のリスクを高めます。
精神・心理的-「外出の機会が減った」意欲・判断力低下、うつなど。
社会的-「おいしいものが食べられなくなった」閉じこもり、孤食(一人ひとり別々に食べる)、困窮など
先に述べた兆候に対し何も対処しないと、
① 外出しなくなる→人とのかかわりが減る→認知症のリスクが高まる
② 体のバランスが悪くなる→転びやすくなる→骨折しやすくなる
③ 噛めなくなる→食欲がなくなる→栄養が不足する
するなどに繋がります。
コロナフレイルとは
新型コロナウイルスによる感染拡大に伴う外出自粛で、心身が老い衰える「フレイル」は、気づかないうちに加速しているといえます。心身の衰えは加齢変化によるものだけではありません。まず、社会とのつながりが希薄になるところから始まります。衰えをドミノ倒しと考えると理解しやすいです。
ひとつが欠けると負の連鎖により機能が低下していきます。
外出自粛による社会とのつながりがなくなる
↓
生活範囲の狭まり、孤立・生きがい喪失
↓
こころが沈み、うつ、認知機能の低下
↓
会話をする機会が減り、歯の健康を失う、咀嚼・発音の衰え
↓
食欲不振による栄養障害
↓
身体的機能の低下、やがて死につながる
↓
生活範囲の狭まり、孤立・生きがい喪失
↓
こころが沈み、うつ、認知機能の低下
↓
会話をする機会が減り、歯の健康を失う、咀嚼・発音の衰え
↓
食欲不振による栄養障害
↓
身体的機能の低下、やがて死につながる
「老い」を見える化する
東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢教授は、『「フレイル」をチェックすることで、いま自分は「老い」の坂道の何合目にいるか、それを見える化することができます。栄養と運動、社会参加は三位一体。歩く習慣がない人が無理やり歩くことを始めても、続かず、効果がありません。好きなことや日常生活で活動量を補うのと同時に、オンラインなどを使って家族や友人とつながることが大切です。老いを防ぐ対策は十人十色です。』と言われています。
「イレブンチェック」というフレイルの検査を紹介します。計11項目の質問に「はい」か「いいえ」で答えていきます。最終的に、「いいえ」の回答欄に5個以上のチェックがあればフレイルの可能性が高く、少ないほどリスクは低くなります(表)。

コロナフレイルにならない予防にための3つの柱
第1に栄養(バランスの良い食事)。
第2に運動(日用品などの買い物、ウォーキング:65歳以上は男性7000/歩、女性6000/歩、家庭菜園や園芸作業)。
第3に社会参加(地域での習い事やスポーツ教室に参加:密をさければよい)。
加齢とともに、体力や筋力が低下し、日常の買い物が面倒だと感じるようになります。人と接する機会が減ったり、食生活のバランスが崩れたりすることで体が衰え、判断力や認知機能といった頭の働きも低下する悪循環が起きます。
この3つの柱を心がけることによって、フレイルの進行を遅らせることが可能です。
おわりに
今回、コロナフレイルのお話をさせていただきました。老いることにより様々な現象が引き起こされます。特に現在はコロナ禍における行動自粛が加わり、生活不活発による筋肉減弱が思っている以上にかなり進行していると思います。筋肉を大きく失うということは、単に移動問題だけでなく、免疫力も大きく失ってしまいます。感染予防の励行に加え、十分な栄養摂取、三密回避を意識した上での運動や身体活動、十分な睡眠時間などで日常生活の質を落とさず、免疫力を維持する必要があります。
東洋医学研究所Ⓡ所長の黒野保三先生の生体制御療法(筋膜上圧刺激)は、マウスを用いた基礎実験で、鍼刺激が老化防止に関与していることを細胞レベルで証明され、学会発表もされています。免疫機能も鍼刺激により活性化されること、鍼刺激により自律神経の副交感神経を優位に亢進させ睡眠の質の向上などにも影響を及ぼすなどの研究報告をされています。まさに、この生体制御療法はコロナフレイルに適した治療法であると思います。
現在、鍼治療を受けている患者さんはさらなる継続治療をして頂き、また家族の方、友人の方、職場の方など、健康な方でも今後を見据えて、健康管理のための鍼治療(生体制御療法)を受けられることを、是非お勧めします。
引用文献
・介護予防:中日新聞サンデー版2021年4月11日
・コロナフレイル:中日新聞サンデー版2021年4月18日