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コラム

2021年6月 1日 火曜日

黄砂アレルギーについて 東洋医学研究所® 外部主任 中村 覚 令和3年6月1日号

はじめに
近年、花粉症の方の数が爆発的に増え続けています。2019年の調査報告によると、花粉症有病率は42.5%となり、国民の半数近くが罹患しているという結果となりました。ここ10年で10%以上も増加をしています。何故、このようなことになったのでしょうか?
花粉症は一度発症すると根治することが難しく、発症を予防する方法はまだ確立されていません。したがって、数は増え続ける一方になりますが、その一つの要因に大気汚染物質が関係しています。花粉症の有症率はスギの木が多い山間部と少ない都会部で比較すると、明らかに都会部で高くなります。このことは、自動車の排気ガスなどの大気汚染物質と花粉がくっつくことによって発症率が高くなることが報告されています。
今回は、症状が花粉症とよく似ており、大気汚染物質との関連が深い黄砂アレルギーについてお話をしたいと思います。

黄砂とは
黄砂とは、中国内陸部やモンゴルの砂漠や乾燥地帯(タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原など)で、強い風や嵐で巻き上げられた砂が、偏西風にのって日本まで飛来するものです。年間を通して日本列島に飛来していますが、2月から増加し始め、4月にピークを迎えます。夏にはほとんど飛来していません。黄砂が発生すると48時間ほどかけて日本に届きますが、その間に工業地帯や都市部の上空を通る過程で有害物質が付着することがあります。黄砂には、微生物やその死骸、金属、化学物質(土壌由来ではない人為起源の大気汚染物質:アンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオン)などが含まれていることが分かっています。また、最近では、黄砂とともに飛来するPM2.5も問題視されるようになってきました。

PM2.5とは
PM2.5とは微小粒子状物質をいい、大気中に浮遊している2.5μm以下の小さな粒子のことをいいます。環境基準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子状物質よりも小さいことが特徴です。粒子が非常に小さいため、肺の奥にまで入りやすく、呼吸器系や循環器系の病気の原因となる可能性が高いと考えられています。PM2.5には物の燃焼によって出る煙や、ガス状の大気汚染物質が環境大気中での化学反応により粒子化したものがあり、自動車の排気ガスや工場の排気ガス、ごみ焼却施設からの煙など人為起源なものから、山ガスといった自然由来のものにまで及びます。

黄砂アレルギーとは
黄砂アレルギーは、黄砂(PM2.5を含む)を吸い込むことによって、花粉症の様に目、鼻、喉、肌にアレルギー症状が出現し、目のかゆみ、結膜炎、鼻水やくしゃみや頭痛を引き起こします。ただ、黄砂そのものがアレルギーの原因ではなく、黄砂にくっついた物質によってアレルギー症状が出るといわれています。黄砂は花粉よりも粒子が小さい(花粉は直径30~40μm>黄砂は約4μm>PM2.5は2.5μm以下)ため、肺の奥まで侵入しやすく、花粉症などのアレルギー症状を悪化させることもわかっています。

黄砂による健康被害
黄砂による健康被害はアレルギー症状のみではなく、呼吸器疾患や循環器疾患への悪影響も指摘されています。
気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患においては、黄砂飛来時に受診数、救急搬送数、症状悪化による入院数が増加し、小児では呼吸機能低下が報告されています。また、肺炎による死亡の増加との関連も指摘されています。
循環器疾患においては、黄砂飛来と救急搬送数増加、脳梗塞や心筋梗塞での入院、発症増加との関連が報告され、特に高齢者や糖尿病、慢性腎臓病等の既往歴がある方は、リスクが高くなることが分かっています。

黄砂アレルギーの対策
黄砂やPM2.5の対策は吸い込まない、持ち込まないことが重要となってきます。家では窓の開け閉めをあまり行わず、空気清浄機などを活用すると良いでしょう。部屋の中は掃除機だけでなく水拭きをすると効果的です。
環境省ではホームページで黄砂やPM2.5の飛散量を公開し、PM2.5においては濃度のレベルに応じた注意喚起を行っています。飛散量が多い時は、特に高齢者や乳幼児、呼吸器系に病気のある方は外出を控えましょう。
外出をする際には一般用マスク(不織布マスク等)を着用することで、黄砂に対するある程度の吸入予防効果が期待できます。また、医療用や産業用のマスクは、微粒子の捕集効率の高いフィルターを使っており、黄砂や PM2.5 等の微粒子の吸入を大幅に減らすことができます。しかし、着用すると少し息苦しい感じがあるので、長時間の使用には向いていません。
帰宅後はうがい手洗いだけでなく、顔も行い、肌に付着したPM2.5や黄砂を洗い流すようにしましょう。

おわりに
私自身はイネ科の花粉症があり、また、黄砂の飛散する時期と一致してアレルギー症状が強くなるため、抗アレルギー薬を服用することがあります。黄砂の時期には鼻水、くしゃみなどの花粉症症状よりも目の乾燥や頭痛の症状が強くなることが多く、黄砂の影響を肌で感じていました。
2020年11月頃に突然白い車が黒い粉を振りかけた様になり、頭痛が出現し、天気予報では中国からの偏西風が日本に吹いていると報じられたため、黄砂アレルギーによるものと考えました。黄砂の飛散ピークは4月頃になりますが、その時期は量が多く、風の勢いも強いため、黄砂に付着する大気汚染物質が少なくなり、逆に黄砂の飛散量が少ないときは大気汚染物質が多く付着するため、人体への影響が大きくなることも報告されています。黄砂の飛散量のみで対策をするかどうかの判断をすることは難しいと感じました。
現在は、新型コロナウイルス対策のため、屋外でもマスクを着用する方が多くなっています。結果的に黄砂対策にもなっているため、良いことだと思っています。
アレルギー症状が原因物質に触れてしまうたびに炎症反応を起こしますが、鍼治療による抗炎症作用によってアレルギー症状を緩和することができます。東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは、花粉症の患者に生体制御療法(鍼と超音波の併用療法)を行い、日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ)を用いて検討したところ、鼻・眼の症状の改善に加え、QOLの改善が認められたことを報告しております。
黄砂アレルギーや花粉症などのアレルギー症状にお悩みの方は、是非、副作用のない鍼治療をされることをお勧めします。

引用・参考文献
・松原 篤ほか:鼻アレルギーの全国疫学調査2019 (1998年, 2008年との比較) : 速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として.日本耳鼻咽喉科学会会報.123巻6号. 485-490. 2020.
・一般社団法人環境情報科学センター編集:黄砂とその健康影響について.環境省環境保健部環境安全課小冊子. 2019.
・環境省:平成 15 年度大気汚染と花粉症の相互作用に関する調査研究(疫学研究)研究報告書.2004.
・福岡市ホームページ:福岡市PM2.5・黄砂影響検討委員会
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/k-hozen/hp/fukuokashiPM25kousakentouiinkai.html
・井島晴彦ほか:黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による花粉症症状・QOLの改善効果 : 日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用いた5年間の症例集積.全日本鍼灸学会雑誌.66巻4号.2016
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