顔面神経麻痺通信

2019年2月 1日 金曜日

顔面神経麻痺通信7 顔面神経麻痺の程度を評価して予後がわかる?

顔面神経麻痺の治療をさせて頂く際、その症状がどれくらいの期間で、どれくらい改善するかをあらかじめ予測することは大変重要です。

前回ご説明させて頂いた柳原法(40点法)や各種検査を行うことにより、予後の予測が可能となります。今回は、そもそもどうして、すぐに症状が改善する場合と、後遺症が残る場合があるのかについて、顔面神経の障害の程度からご説明させて頂きます。ベル麻痺やハント症候群は、膝神経節でウイルスの再活性化が起こるため顔面神経炎を生じますが、膝神経節の部分は顔面神経管が直径約1mmと大変狭いために神経が腫脹すると圧迫されて神経障害が起きると考えられています。

この神経障害の程度は大きく3つに分けられます。
1. 一番障害の軽い脱髄は、一過性の伝導ブロックです。圧迫が解除されれば、伝導ブロックは解除され、1ヵ月以内に回復します。


2. 次に障害の重い軸索断裂は、末梢側の栄養が途絶えて軸索は変性します。軸索断裂では内膜の損傷は起こらないので、神経の再生は完全で、回復には通常3週~3ヵ月を要します。


3. 一番障害の重い神経断裂は神経内膜まで断裂しており、膝神経節より遠心性に変性が進行します。神経断裂を含んでいる症例では、一般的に3ヶ月では完治せず、発症から12~14ヶ月頃まで持続回復し、その後症状固定します。

この3種類の障害度の割合が、顔面神経麻痺症状や予後に影響すると考えられています。
具体的な柳原法(40点法)や各種検査による予後の予測については、次回にご説明させて頂きます。
東洋医学研究所®及び東洋医学研究所®グループでは、顔面神経麻痺に関する情報から得られた予後予測に基づき、病気に合った的確な治療をさせて頂いております。是非、安心して鍼治療をお受け下さい。  
(文責 井島晴彦)

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2018年12月 1日 土曜日

顔面神経麻痺通信6 柳原法について

現在の日本において、主に使用されている検者が患者を視診で判断する顔面運動評価法は柳原法です。
柳原法は、1976年に柳原尚明先生をはじめとする顔面神経麻痺の臨床研究に携わるグループにより作成され、1976年および1984年の国際顔面神経シンポジウムで報告されたものです。
ベル麻痺やハント症候群は顔面の左右どちらか一方に症状が発生します。麻痺側の動きを健側と比較し肉眼的に評価することは、顔面神経麻痺の診断として最も簡便かつ重要です。 柳原法は安静時の左右対称性と9 項目の表情運動を4 点(ほぼ正常),2 点(部分麻痺),0 点(高度麻痺)の3 段階で評価します。微妙な場合は中間の3点、1 点を採用する場合もありますが、合計点数を計算するには偶数の方が簡便ですし、検者間の誤差が少なくなるため,より妥当な偶数点に変更し2 進法で評価します。
柳原法は,顔面表情の主要な部位の動きを個別に評価することで、検者の主観をおさえて再現性を高めるとともに,経時的な部位別評価をすることができます。
40点満点で10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺、あるいは20点以上を軽症、18~10点を中等症、8点以下を重症とします。また、36点以上で中等度以上の病的共同運動(口を動かすと、いっしょに目が閉じてしまうなどの症状)のないものを治癒と判定しています。
そして、柳原法を使用することにより、顔面神経麻痺発症初期に麻痺程度を診断することで予後評価が可能であり、的確な治療法の選択にも有用であることが報告されています。柳原法をマスターすることは,顔面神経麻痺後遺症を克服するための基本となります。
東洋医学研究所Ⓡ及び東洋医学研究所Ⓡグループでは、柳原法をマスターし指標とすることにより、鍼治療を行ったベル麻痺・ハント症候群患者の症状が改善することを、(公社)生体制御学会学術集会などで報告しています。
 
 
 
(文責 井島晴彦)

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2018年11月 1日 木曜日

顔面神経麻痺通信5 ラムゼイハント症候群について

ラムゼイハント症候群は、James Ramsay Huntが1907年に自験例をまとめて報告したことに由来します。
 

 
人口10万人当たりの年間発症数は2~3人といわれています。性差はなく、年齢別発症率は、20 歳代と50 歳代の2峰性のピークを示します。ハント症候群は5月と8月が少なく、3~4 月、6~7月に発症が増加します。ハント症候群の場合、自然経過のなかで顔面神経麻痺が完全に治癒するのは50~60%と報告され、ベル麻痺の自然治癒率に比べて治りにくいと言われています。
ハント症候群は、脳神経の神経節に、以前に感染(潜伏感染)していた水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうのウイルス:VZV)が、再活性することによって発症します。
症状としては、顔面神経麻痺に伴って、耳の穴や耳介周囲に帯状疱疹による水ぶくれができたり、強い耳の痛み、耳鳴、難聴、めまいなどが起こったりするのが特徴です。個々の症例では、これらの症状のいくつかが組み合わさって出現します。
鍼灸院に来院される末梢性顔面神経麻痺の患者はほとんどがベル麻痺かハント症候群です。そして、ハント症候群の方がベル麻痺と比べて予後が悪いことから、発症機序の違いからその鑑別について正しく理解していることは非常に重要です。
東洋医学研究所Ⓡグループでは、耳介・外耳道、頚部、舌、口腔粘膜の観察と、聴力検査や平衡機能検査、ウイルス抗体価測定(ベル麻痺を発症する単純ヘルペス1型、ハント症候群を発症する水痘帯状疱疹ウイルスの測定)などの結果を問診することにより、正確な鑑別ができるよう勉強しています。
是非、安心してご相談下さい。
           (文責 井島 晴彦)

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2018年10月 1日 月曜日

顔面神経麻痺通信4 ベル麻痺について

ベル麻痺は単純ヘルペス1型の再活性化が原因で起こることが多い末梢性顔面神経麻痺をさし、イギリスの有名な解剖学者であったSir Charles Bell(1774~1842)の記載により彼の名前が付けられるようになりました。
日本での全顔面神経麻痺の患者数は、年間約65,000人で、そのうちベル麻痺は約40,000 人と顔面神経麻痺の約60%を占めます。
人口10万人当たりの年間のベル麻痺発症例は、欧米では15~20例、あるいは20~30例などの報告がみられます。わが国では愛媛県における32例、あるいは山形県における25例などの報告があります。これらを参考にすると、欧米と日本、さらに日本の西部と北部で発症頻度に顕著な差異はないものと思われます。性差はなく、発症年齢は全ての年齢で発症しますが、50歳台にピークを持ち10歳以下は少ないです。ベル麻痺の発症数に季節性はありません。
ベル麻痺については良好な自然治癒が認められます。ベル麻痺の71%がまったく後遺症のない状態まで、また83%が満足な改善といえる状態まで自然回復します。自然経過での不全治癒は17%であり、高度な後遺症がみられるのは4%です。
ただ、臨床所見ではベル麻痺と鑑別が困難なZSH(無疱疹帯状疱疹)の存在が問題となります。ZSHは水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって生ずる顔面神経麻痺ですが、体表に疱疹が出ないため、ベル麻痺と臨床では診断されていると考えられます。
ZSH はBell麻痺と比較して、より難治性で後遺症を残しやすいので注意が必要です。


(文責 井島晴彦)

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2018年9月 1日 土曜日

顔面神経麻痺通信 3 発症メカニズム

ベル麻痺・ハント症候群の発症メカニズムは?
顔面神経は脳幹から発し、頭蓋骨の耳の部分(側頭骨)の中にある顔面神経管を通り、耳たぶの後ろから出て顔面に分布しています。顔面神経管は人体の中で最も狭く最も長い骨性神経管です。顔面神経には直角に曲がっているところがあり、膝神経節といいます。
ベル麻痺の多くは、疲れやストレスなどにより膝神経節で単純ヘルペス1型の再活性化が起こることが原因です。ハント症候群は、膝神経節で水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化が起こることが原因です。ウイルスの再活性化で顔面神経炎を生じますが、膝神経節の部分は顔面神経管が直径約1mmと大変狭いために神経が腫脹すると圧迫されて障害が起き、顔面神経麻痺を発症すると考えられています。

顔面神経麻痺を公表されたMr.マリックさんの場合は、超魔術の演出が「超能力」のようなものに見られ、世間では本物の超能力と信じ込む人も多く、ある時期からいっせいに「インチキ」とバッシングされたことによるストレスで顔面神経麻痺を発症し、しばらくテレビ界から遠ざかったと報道されています。 


 
このように、強いストレスや、過労などによって上記のようなメカニズムで顔面神経麻痺を発症するケースが多いと考えられています。       
(文責 井島晴彦)

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