| 糖尿病の基礎知識 |
糖尿病は膵臓のβ(ベータ)細胞で作られ、血液中に分泌されるインスリンというホルモンの働きが低下しておこる病気で、慢性的に血糖値が高くなる状態です。
その結果、充分な治療を行わないと網膜症・腎症・神経障害などの糖尿病に特有な細小血管合併症や動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症などの大血管合併症が高頻度におこってくる病気です。 |
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| 日本糖尿病学会の糖尿病診断基準は下の表の通りです |
| (mg/dl) |
空腹時血糖値 |
随時血糖値 |
負荷試験2時間値 |
| ☆糖尿病型 |
126mg/dl以上 |
200mg/dl以上 |
200mg/dl |
| ☆境界型 |
どちらにも属さない |
どちらにも属さない |
どちらにも属さない |
| ☆正常型 |
110mg/dl以下 |
110mg/dl以下
140mg/dl未満 |
140mg/dl未満 |
○糖尿病型は3つの血糖値のうち1つでもあてはまる場合
○正常型は空腹時と負荷試験2時間値の両方にあてはまる場合
○境界型は糖尿病型にも正常型にも属さない場合 (糖尿病と診断するには2回の検査が必要)
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| 以下の場合は、1回の検査で糖尿病と診断できる |
| ○ |
上記の糖尿病型に該当し、糖尿病に特有な症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)がある場合 |
| ○ |
HbA1cが6.5%以上の場合 |
| ○ |
過去に高血糖値を示した検査データがある場合 |
| ○ |
過去に糖尿病と診断された病歴がある場合 |
| ○ |
糖尿病性網膜症が存在する場合 |
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| 糖尿病の分類は下の通りです(日本糖尿病学会) |
| 病 型 |
特 徴 |
| 1型糖尿病 |
   |
以前はインスリン依存型糖尿病と呼ばれ、若い人に多く、インスリン注射が必要 |
| 2型糖尿病 |
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以前はインスリン非依存型糖尿病と呼ばれ、成人に多く、インスリンの働きや分泌能が低下している状態で、日本人の糖尿病の95%を占めている |
特定の原因・疾患による 糖尿病 |
インスリン作用に関係する遺伝子異常や他の臓器の異常(肝疾患など)によっておこる糖尿病 |
| 妊娠糖尿病 |
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妊娠によって発症する糖尿病 |
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糖尿病の細小血管障害⇒三大合併症とは?
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インスリンの発見される1921年までは高血糖による昏睡(こんすい)が死因でした。しかし、インスリンが発見されてからは死因は感染症になり、そして抗生物質が発見された現在の糖尿病患者の主要な死因は血管障害による慢性合併症になりました。
| 糖尿病の主な慢性合併症 |
   |
〇細小血管障害
・網膜症・腎症・神経障害⇒三大合併症 |
〇大血管障害
・心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症 |
〇他の生活習慣病を伴うことも多い
・肥満・高血圧・高脂血症 |
糖尿病の慢性合併症には、上の表に示すように糖尿病に特異的な細小血管障害と、糖尿病患者以外にもおこるが、糖尿病があるために若年から高頻度におこってくる大血管障害とがあります。細小血管障害には網膜症・腎症・神経障害があり、これを三大合併症といいます。
細小血管障害とは?
糖尿病に特有の合併症は主として全身の細い血管が障害
されておこり、特に眼の網膜の血管の障害〈糖尿病性網膜症〉や、腎臓の糸球体(しきゅうたい)の血管障害〈腎症〉がおこります。こららの障害は高い血糖値が長く続くことによっておこり、細胞や血管の緊張度・運動を調節している内皮細胞に異常がおこります。
機序としては、ブドウ糖は細胞内で一部がソルビトールという物質に変換し、このソルビトールが腎臓や網膜・神経の細胞内に過剰に蓄積することで細胞の酸素活性が障害されたり、過酸化物をたくさん作ることが細胞変性につながると考えられています。また、血小板機能や血管内皮細胞の機能が障害されて血液が凝固しやすくなると考えられています。神経障害は合併症の中で最も早く、かつ多くの患者におこるといわれ、ソルビトール蓄積による代謝障害や神経栄養血管の障害が関与すると考えられています。一般に細小血管障害は神経障害にはじまり、網膜症・腎症による腎機能低下という順序で進行するといわれています。
☆網膜症とは?
糖尿病性網膜症は失明原因のトップになっており、眼底をみれば糖尿病の状態が推測できる程であるといわれています。特に糖尿病性眼疾患は他の眼疾患に比べ手術後の予後が悪いといわれ、「厚生省糖尿病調査研究」によれば年間約4,000人の患者が失明し、約3,000人が重症の視力障害におちいっていることが明らかにされています。
☆腎症とは?
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| 腎臓の働き |
糖尿病性腎症は腎臓の糸球体硬化症のために濾過(ろか)機能が障害される病気で、最終的には末期腎不全におちいり、透析療法を受けざるをえない状態となります。近年腎症が原因で透析療法が導入される患者が年々増加しており、大きな医療問題となっています。また、腎症を合併すると腎臓は血流をうながすために、ホルモンを分泌し血圧を上げようとします。しかし、かえって腎症を悪化させてしまうことになり、こんな時には糖尿病状態を考慮した降圧剤(糖尿病状態を悪化させない薬剤)の服用が必要となります。
| ・ |
この時期に注意が必要なのは血圧が低下する場合で、これは心臓に異常を伴うことがあるため、足のむくみ等に気をつけると良いと思われます。
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・運動については、腎機能の検査値を気にして安静を勧められることがありますが、むしろ患者の体力を保持するためには軽い運動を勧めるべきと思われます。
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| ・ |
たん白制限(食事療法)については、アメリカおよびフランス糖尿病学会などではたん白制限に対する根拠がないといわれており、患者の体力を保持するためには極端な制限はやめて良質のたん白質を控えめにとると良いと思われます。 |
☆神経障害とは?
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| 神経が障害されて現れる症状 |
糖尿病にみられる神経の病気を糖尿病性神経障害といい、末梢神経と自律神経が主に障害されます。近年、突然死の一因として注目を集めており、適切な管理・治療が必要です。
末梢神経には、運動神経と知覚神経がありますが、障害が最も多いのは知覚神経で、その中でも細い神経線維で伝えられる異常感覚(痛覚)などが早期に出現します。糖尿病性末梢神経障害は、左右対称に現れ、手足の先端で強いのが特徴です。異常感覚・冷感・しびれ感・焼ける感じなどを訴えます。
太い繊維が侵されるとアキレス腱反射消失・深部知覚の障害がおこります。自律神経が障害されると心臓神経障害・無痛性心筋梗塞による突然死、血管運動障害による起立性低血圧、消化器機能障害による胃・腸・胆嚢の運動障害、膀胱機能障害による神経因性膀胱、生殖器機能障害によるインポテンツ、体温調節障害など、種々の内臓機能が障害されます。
以上のことから、糖尿病の合併症が怖いことが良く理解できると思います。三大合併症の予防で大切なことは糖尿病のコントロール状態を良好に保つことであります。
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糖尿病に対する鍼治療の目的
糖尿病に対する鍼治療の目的は、糖尿病の基本治療である
食事療法・運動療法と併用することで、目的を下のように一次予防・二次予防・三次予防の3段階に分けて考え、糖尿病の重症度により患者の目的を設定しています(目的意識を持つ)。 |
| 鍼治療 ⇒ |
一次予防 ⇒ |
糖尿病を発症しない |
二次予防 ⇒
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合併症を予防する |
| 三次予防 ⇒ |
合併症を進行させない |
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| 糖尿病に対する鍼治療の影響 |
| ☆健康人の血糖値に対する鍼治療の影響 |
(社)全日本鍼灸学会愛知地方会には、名誉会長の黒野保三先生(東洋医学研究所 所長)のご尽力により20年前より研究班が設置されています。その研究班の中にある糖尿病班で過去に行った実験の結果を下のグラフに示しました。
健康人に対し、全身の調整を目的とした鍼治療(黒野式全身調整基本穴)を行い、簡易血糖検査器で血糖値を測定しました。空腹の健康人に300kcal(おにぎり2個)の食事をとってもらい鍼治療を行いました。その結果から、鍼治療を行った健康人の方に食事負荷試験の血糖値の低下傾向が認められました。
今回の実験結果から健康人の場合、膵臓のインスリン分泌が維持されていることからも、インスリン分泌に対し鍼治療がよい影響を与えていることが考えられます。
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| (mg/dl)平均値 |
空腹時血糖値 |
食後1時間血糖値 |
食後2時間血糖値 |
食後3時間血糖値 |
鍼なし (n=12) |
91 |
127 |
111 |
104 |
鍼群 (n=12) |
87 |
122 |
103 |
92 |
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(注)
鍼治療群および鍼治療なし群は同一の健康人
(n=12:
男8名;女4名)
(年齢:25〜44歳) |
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☆糖尿病患者の空腹時血糖値に対する鍼治療の影響 |
| 次の実験は糖尿病患者に対し、全身の調整を目的とした鍼治療(黒野式全身調整基本穴)を行い、簡易血糖検査器で空腹時血糖値を測定し、その結果を下に示しました。 |
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鍼治療前(30分) |
鍼治療直前 |
鍼治療後(30分) |
| M.J |
187 |
182 |
164 |
| S.O |
178 |
172 |
158 |
| F.K |
190 |
186 |
173 |
| A.N |
142 |
140 |
144 |
| F.I |
200 |
204 |
197 |
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(注)
鍼治療を行ったのは
2型糖尿病患者
(インスリン非依存型)
(女:5名)
(年齢:70〜78歳) |
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実験結果から糖尿病患者の空腹時血糖値が、鍼治療により低下する傾向が認められました。このことから、鍼治療を行った健康人の食事負荷試験の血糖値同様に、膵臓のインスリン分泌が低下している糖尿病患者に対しても、インスリン分泌に対しよい影響を与えていることが考えられます。
この他、末梢での糖代謝に何らかの影響を与えていることも推察されます。このことは運動療法の糖代謝に及ぼす影響と同じメカニズムではないかと考えています。 |
| 糖尿病患者の栄養状態 |
| 患 者 |
身 長 |
体 重 |
肥 満 度 |
| M .J |
132cm |
47kg |
63.20% |
| S .O |
143cm |
45kg |
16.30% |
| F .K |
153cm |
55kg |
15.30% |
| A .N |
137cm |
50kg |
50.20% |
| F .I |
150cm |
60kg |
33.30% |
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左の表に糖尿病患者5名の栄養状態を示した。 このことから肥満が糖尿病と深い関係にあることが示唆された。
(注)
肥満度20%以上は肥満 |
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以上、糖尿病および糖尿病に対する鍼治療の影響について紹介いたしましたが、近年「一病息災」とも「二病息災」ともいわれ、糖尿病を持っていてもコントロールを良好に保てば全く心配はいりません(詳しくはコラム1月号および研究室)。
最後になりましたが、鍼治療は糖尿病でお悩みの方、家族に糖尿病の方があって将来が心配な方、肥満のある方、糖尿病のコントロールを良好に保つ一手段として有効な治療法です。
ぜひ、東洋医学研究所グループの痛みのない、副作用のない、各種疾患の予防となる全身の調整を目的とした鍼治療(黒野式全身調整基本穴)を行ってはいかがですか。 |