平成15年6月5日号
腰痛と鍼治療
-あなたの腰痛はどんな腰痛ですか-
 
東洋医学研究所グループ
二葉鍼灸療院 河瀬 美之
 
 約80%くらいの人が一生に一度は腰痛を経験すると言われておりますが、東洋医学研究所並びに東洋医学研究所グループに来院される痛み治療の患者さんの中でも、腰痛患者さんの割合は非常に大きくなっております。

 腰痛に対しては「1回の鍼治療で治る」と期待して来院される人も多いと思います。確かに1回で治る腰痛もありますが、3〜4回、または7回、14回と治療を重ねないと治らない腰痛もあります。これは腰痛の原因によって異なるのです。

 そこで、今回、腰痛の原因と、その病気の解説・対処法をご紹介させて頂きます。
 
あなたの腰痛の原因を探りましょう
次にあげる症状をお持ちの人は原因疾患を確認して下さい
症     状 疑われる病気
横になって安静にしていても痛い 背骨の腫瘍や細菌感染、内臓の病気
熱がある 背骨や内臓の細菌感染などの炎症
どんどん痛みが強くなってゆく 背骨の腫瘍・細菌感染
強く打ったり、転んだ後の痛み 背骨の骨折
過去にガンの手術を受けた、体重減少 ガンの背骨への転移
排尿障害 重症のヘルニア、脊柱管狭窄症


上記のうち、「熱がある」は風邪の熱、「排尿障害」は膀胱や前立腺からのものは除いて下さい
 
上記にあてはまらない人は一般にいう腰痛症と考えられますので、次の質問に答えながら原因を探求してゆきましょう
 
あなたの腰痛に対する症状を3つに分類しました。
@下の物を取る時に痛い
A体を左右に傾ける時や後ろにそらす時に痛い
B長時間立っている時や座っている時に痛い
 どの症状があるかをチェックして下記の質問にお答え下さい。

  なお、複数の症状がある場合、あてはまる症状に対する質問に答え、最後のタイプをご確認下さい。
 
下の物を取る時に痛い

チャート@
 
体を左右に傾ける時や後ろにそらす時に痛い長時間立っていたり座っている時に痛い


チャートA



 ご自分がどのタイプかわかりましたでしょうか?
 これはあくまでも目安です。実際に触ったり徒手検査を行わないと把握できませんが、おおまかなものは症状を聞くだけでわかります。
 各タイプ別にみてゆきましょう。
 
タイプ1 筋性腰痛
 草むしりなど、長時間中腰の姿勢を続けた後に立ち上がった時、「う〜っつ」と言って腰を伸ばし、伸ばしきると楽になる状態のひどいものを言います。筋肉の血行が悪くなるためとされています。

 俗に言う「ぎっくり腰」はこの部類に属します。

注意点
@横になって安静にする期間は1日を限度にした方が早く社会復帰で
 きます。
A同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう。
Bぎっくり腰を何度も繰り返すような場合は早めの治療が必要です。
C痛みが強くなってきたと思ったらすぐに鍼治療を受ければ1〜2回で
 良くなることが多い代表的な腰痛です。
D軽い散歩を日頃から行い、腰痛体操をしましょう。

タイプ2 椎間板性腰痛
 椎間板が年齢と共に硬くなり、それがすりへって薄くなったり、変形を起こして痛みが出る腰痛です。
 椎間板の変形により、腰の部分が不安定になってくるため、これを支えるための筋肉に慢性疲労が起こって痛みが出てきます。
 鈍いような重いような違和感が腰の骨の周辺に出てきます。レントゲン像で「骨と骨の間がせまくなっている」と専門医より説明を受けた人はこれにあたります。

注意点
@変形したものはもとに戻りません。
A鍼治療と散歩による筋力強化、腰痛体操で痛みをやわらげることがで
 きます(これ以上悪くしない)。
B変形性腰椎症と総称して言われることがあります。


タイプ3 筋力低下・筋疲労による腰痛
 これはおおざっぱにわけていますので、これに該当する患者さんはかなり多くみられます。
 しかし、もっと詳しく診察すると、今回紹介している様々なタイプに分類できると思います。
 特徴的な症状は朝起きた時に痛く、動かしていくうちに徐々に痛みが楽になる状態を言います。この症状は変形性腰椎症でも言えることです。

注意点
@冷えや天候に左右されやすい腰痛です。
A寝ている時はじっとしているために血行が悪くなり痛みが出ますが、動
 くことにより血行が良くなって痛みがやわらぐものです。
B冷やさないような工夫が必要で、睡眠時は腹巻などを着用したり、冬で
  あればカイロを当てるなど血行を良くしてゆきましょう。
C日中は軽い運動や寝る前にストレッチや腰痛体操を心がけて下さい。
D鍼治療により改善しますので、比較的長期の定期的な鍼治療をお勧め
 します。


タイプ4 変形性腰椎症
 これは何が原因で足がしびれるのかがよくわからない時に総称して使われることがあります。
 高齢者は比較的このように言われることがあると思います。
 タイプ3と比較的症状が似ています。腰の骨が不安定なため、常に周囲の筋肉が緊張していなければならなく、そのために筋肉に疲労が起こって痛みがでます。この筋力が弱くなると変形が進んだり、痛みが強くなります。

注意点
@変形が認められるため、この変形をさらに進行させないように軽めの
 運動を行って骨にほどよい刺激を与えましょう。ただし、姿勢を正して
 力が加わる方向を正しくしなければいけません。
A鍼治療により動けるようになったら、どんどん動くことによってさらに
 その効果を高めていかなければいけない代表的なものです。
 患者さん自身が積極的に治療に参加することが肝要です(どんな病気
 にでも言えます)。


タイプ5 椎間板ヘルニア
  足のしびれの代表疾患です。最近、若いうちに発症した場合、自然にヘルニアが小さくなる例が多く報告されています。

 症状が激しいほど小さくなる例が多いことから、炎症による体の免疫反応が原因だという説が有力です。鍼治療は免疫系を高める作用(生体の防御機構)がありますので(研究室参考)、ヘルニアの縮小機序に何らかの影響を与えているものと思います。

 また、70歳を越えてくると無症状でもヘルニアを持っている人が70%くらいにみられるという報告もあります。

 ヘルニアによる神経の圧迫以外で周囲の固くなった筋肉による神経の圧迫も多くみられますので、そのような場合は鍼治療により比較的早期に改善する場合があります。

注意点
@まず、1ヶ月間は毎日でも集中して鍼治療を受けることをお勧めします。
A足のしびれがある疾患としてヘルニア以外に脊柱管狭窄症という重症
 な病気もあります。この場合、歩行が困難で、100mほど歩くと足がしび
 れて動けなくなり、前かがみで休憩するとまた歩けるようになります。
 また、自転車に乗ればどれだけでも移動できる人は注意が必要です。
B足がしびれるから腰だと思っていると、実は首からきている重篤な病気
 もあります。手の指が動かしにくくないかどうかを確認してみましょう。


タイプ6 股関節疾患
 股関節の病気から腰が痛かったり、足がしびれたりといった症状が出る場合もあります。
 この疾患の鑑別は徒手検査を行って診てゆきます。

注意点
@一般に変形性股関節症が多いのですが、この場合、下半身のバランス
 が悪いために股関節に無理な力が働いて変形を起こしてきていると考
 えられるので、治療は先ず体の傾きなどバランスを取って姿勢を正して
 ゆくことから始め、その後に筋力の強化といった方法が大切だと思いま
 す。
A鍼治療で筋肉を柔らげてから姿勢を正すことから始めましょう。


タイプ7 坐骨神経痛
 ここでいう坐骨神経痛はひとつの症状で、タイプ4〜6まで幅広く存在するため、その鑑別には症状のみでは判断できず、徒手検査などを中心に考えないと分類できないものです。

 圧迫しているものが何かを追及することが重要ですが、最新医療機器(CT、MRIなど)を駆使してもわからないものが多いため、慎重に診断してゆく必要があります。


タイプ8 椎間関節性腰痛
 椎間関節は背骨の後方に位置し、後ろにそり返る動きを制限したり、腰の回しの動きをスムーズにしてその角度を制限している関節です。

 無理な動きや負荷がかかることによって関節面はざらざらになったり炎症や変形を起こし、動かすことにより痛みが出てきます。

注意点
@タイプ2の椎間板性腰痛と合併して起こることがあり、この場合、腰を
 曲げたり伸ばしたりの両方で痛くなります。
A鍼治療により痛みが多少でもやわらいだら少しずつ動かしてゆきま
 しょう。
B腰の骨の不安定性が出てきますので、腰の筋力増強を目的とした腰
 痛体操や軽い散歩を行う必要があります。
C鍼治療は長期間を必要とする場合や14回ほどで楽になる症例もあり
 ます(いかに適確に腰の筋力を鍛えるかにもかかわってきます)。


タイプ9 脊椎分離症・脊椎すべり症
 若い人では外傷後に起きたり、スポーツなど反復して腰の同じ部位に過度の負荷がかかることによって発症することが多くありますが、先天性として生まれながらに変形している人もいます。

 60歳を超えて発症するものは総称して変形性腰椎症と言われたりします。
 症状は様々ですが、実際の患者さんの腰をみたり触ったり徒手検査などを行うと大まかにわかるものです。

 腰椎の不安定性のために椎間板や椎間関節の変形により痛みが出たり、周囲の靭帯の異常なストレスが原因となっている場合もあります。
注意点

@鍼治療により痛みが多少やわらいだら腰痛体操や軽い散歩を行い、
 腰周囲の筋力増強をはかって、腰への負担を少なくする必要がありま
 す。
Aひどい場合は手術によって固定する方法がとられます。
B腰への血行が悪くなると痛みが増しますので、同じ姿勢を長時間続け
 るのではなく、常に血行を保つために適度の運動と保温を心がけて下
 さい。


腰痛体操について

 発症より1〜3ヶ月を越える慢性腰痛に対しての治療として、まず、鍼治療で痛みをやわらげてある程度効率よく動けるだけの状態を作ります。

 次に不良姿勢の改善、筋力の増強、腰部の靭帯などの硬さの改善を目的に腰痛体操や軽い散歩を行って患者さんにも積極的に治療に参加していただくような指導を行っています。

 その腰痛体操は、継続して頂かないと効果が上がりませんので、ここではたくさん行うのではなく、わかりやすい簡単なものを紹介致します。
 
その1 床おしつけ運動
床おしつけ運動@上向きに寝て膝と股関節を軽く曲げる
A腰骨を床に強く押しつける
B同時にお尻を持ち上げる
Cゆっくり10回程行う

ワンポイントアドバイス
 痛みが強くて全く動けない状態の人でも行うことができる。
 ただし、タイプ9のすべり症や腰椎前彎(正常は腰がややそっている)が減少している人は行わないほうが良い。

 
その2 膝かかえ運動
膝かかえ運動@上向きに寝て膝を軽く曲げる
Aゆっくり膝と股関節を曲げながら両手で
 膝をかかえる
B膝を胸につけるようにして腰を伸ばす
C5つ数えて、元に戻し、繰り返して5回程
 行う

ワンポイントアドバイス
 腰の筋肉を伸ばし、骨盤と床が平行になるように意識して行う。
 正常な腰椎前彎よりさらにそっている人は過剰なそりを自分で矯正するように意識して行う。
 床おしつけ運動同様、タイプ9のすべり症や腰椎前彎が減少している人は行わないほうが良い。
 
その3 腹筋運動
腹筋運動@上向きに寝て膝を軽く曲げ、腕を胸の前に組む
A腹筋に力を入れ、頭を持ち上げ、肩甲骨を床から離す
Bこの状態で5つ数える
C最初は5回からはじめ、少しずつ数を増やして最終的に10回程行えるようにする
ワンポイントアドバイス
 腰痛を持った人が上まで上がる腹筋運動を行うことは大変なことであり、かえって悪化を招く場合がある。

 そこで、最初は頭を上げる(ヘソを覗き込む)だけでも効果がある。さらに慣れてきたら、肩甲骨まで床から離すようにする。

 腹筋と背筋は非常に関係のある筋肉なので、腹筋運動により背筋も鍛えられる。

 この二つの筋肉は自然のコルセットがわりになって腰の骨に無理な負荷がかからないようにしてくれる。
 
その4 ストレッチ
 必要に応じて足の筋肉の硬さをとる目的で、アキレス腱・ふとももの後ろの筋肉のストレッチ(伸ばし)を行う。
 
 東洋医学研究所並びに東洋医学研究所グループのメンバーは腰痛患者さんに対し、できる限りの診断方法を使って腰痛に対する原因を探求してゆきます。

 東西両医学の長所・短所を知り、腰痛患者さんに最善の治療法を選択し、手遅れにならないような技術・技能・知識を修得するよう努力しています。

 医学的根拠(治療効果の裏付け)を確認するために、社団法人全日本鍼灸学会愛知地方会研究部には疼痛疾患班があり、その根拠を見出すための研究を行っています。

 ここに第51回(社)全日本鍼灸学会学術大会で報告させて頂いた研究内容を一部紹介致します。
 
 東洋医学研究所並びに東洋医学研究所グループの9施設に来院した腰痛患者さん76例に対しVAS(バス)を指標に痛みの程度を把握し、鍼治療前と最終時鍼治療前(平均治療回数3回)でどれほど改善しているか調査しました。

 VASとは100mmの線上(下の図)に左端を痛みなし、右端を想像できる最悪の痛みとした時、現在の痛みがどの辺りにあるか患者さんにチェックしてもらい、その後、左端からチェックしていただいた所までを定規で測定して記録するものです。
 左端からチェックまでが74mmであれば、VASの値は74ということになります。

VAS
  痛みなし 最悪の痛み


 下のグラフは実際に患者さんがVASをつけられた数値をそのまま点で表しています。

 VAS値の数値が小さくなるほど痛みの程度が改善しているということになります。したがって、横軸に初診時、縦軸に最終時を表していますので、点が赤の斜線より下にあるということは初診時より最終時の数値を低くチェックした(痛みが改善された)患者さんということになり、大多数の患者さんが改善していることがわかると思います。

 医学的な統計処理でも改善していることが認められています。

VAS初診時治療前と最終時治療前の推移

 以上のことから、腰痛に対して鍼治療は明らかに効果があるものです。
 しかし、痛みの原因を正確に把握して今後どのような経過をたどるかを理解していかないと早く良くすることはできません。
 東洋医学研究所並びに東洋医学研究所グループの先生方はこのことに関して十分理解できるように説明できる先生ばかりです。
 是非、鍼治療を受けてみて下さい。

ぎっくり腰をドイツ語でHexenschuss
≪魔女の一撃≫と言っています
  魔女の一撃を天使のような
やさしい鍼治療で治してゆきます
魔女の一撃 やさしい鍼治療

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