平成15年9月5日号
               東洋医学研究所グループ
               明生鍼灸院院長 鈴木裕明
 不妊症とは「妊娠を望み2年以上夫婦生活を営んでいても妊娠に恵まれないもの」をいいます。西洋医学的不妊原因は多岐にわたり、それらをクリアにすべく治療法もめまぐるしく発展しています。しかし、それにも関わらず成功率はまだまだ低いのも現状です。そこで注目されているのが東洋医学の鍼灸治療です。
 大まかに、妊娠は射精から着床に至るまでの11もの行程が正常かつ物理的、機能的に働いて初めて成立します。
 不妊治療を始めるにあたり、1〜11行程のどこに原因があるのか検査を行います。これを一般不妊検査といい、ここで何らかの原因があるものが器質性不妊、原因がないものが機能性不妊と分類されます。
 器質性不妊であればその原因を取り除けばいいのですが、機能性不妊はこの段階で原因がわからないものであり、考えられている原因として精神的ストレスや免疫異常が関与しているのではないかといわれ、研究もすすんでいます。
 また、不妊症がやっかいなのは、単一疾患ではないことが多いということです。例えば子宮内膜症の副作用による癒着が妊娠の邪魔をしていたり等であります。

 そこで、鍼灸治療が全ての不妊疾患に効果があるのかと聞かれた場合、「
あります!」と言いたいのですが、原因が卵管閉塞、卵巣機能不全など、器質的に原因のあるもので、いわゆる器質性不妊そのものは非常に困難です。鍼灸治療により治療効果が期待できるのは原因がないのに妊娠しない機能性不妊であります。

 機能性不妊の原因として考えられているのは、
生活環境やストレスによる情動障害であります。気持ちが満たされない不満などで、身体の気血の循りを悪くすることが骨盤循環のうっ滞や生殖機能の低下につながります。加えて、病院への通院、治療が繰り返されることでの生活環境の乱れにより不妊悪循環をおこしてしまい、精神的ストレスを取り除けなくなってしまう、いわゆる生活習慣病です。その結果全身の血液循環の悪化、自律神経の乱れによるホルモンのアンバランスなどが起こり、機能性不妊になると考えられています。
 鍼灸治療が機能性不妊に対して効果が期待できるのは
鍼灸治療により生活習慣病の改善ができると云う背景があるからです。鍼灸治療により、血流の改善、自律神経の安定を図ることで生活習慣病でもある機能性不妊にアプローチしてゆきます。
 また、患者さん自身も今一度自分の生活を省みて、本来の規則正しい生活を送ることで体質を変える事ができれば…と願います。
 さらに不妊症患者さんの間では俗説や習慣が飛び交っています。その中の一つに、不妊治療は女性だけが主役であることも挙げられます。しかし、男性不妊が全不妊症の3040%を占めているのも事実です。ご夫婦が共に治療に取り組むことが必要です。他にもさまざまな俗説、習慣がありますが、それらの真意、そういわれる理由をちゃんと説明できる機関に受診されることも必要だと感じます。できれば、それだけではなく不妊治療自体をコーディネイト出来る機関に受診されることが必要です。
 ご夫婦のニーズ、不妊の原因、ご夫婦を取り巻く環境などによっては極端な話、高度な治療が必要でない場合もでてくるでしょう。逆に、不妊歴が短くても高度な治療が必要な場合もあるでしょう。こういった選択肢を提示出来る鍼灸師(病院サイドではない者)を選ばれると良いと思います。
 自然な卵と精子の出会いがかなわなくても、科学の力を持ってすると受精もしくは授精まではサポート出来る(高度生殖医療など)世の中となりました。しかし、いくら受精卵が出来てもそれを育む場所がしっかりしていないと結果(妊娠)が出ません。
 つまり妊娠に至る行程中のGである、良好な分泌期子宮内膜の形成が問題なのです。高度生殖医療を幾度となくチャレンジしている不妊患者さんの中にこの良好な分泌期子宮内膜が出来ず結果を出せない方も多く、明生鍼灸院ではそのような方達の子宮内膜形状改善に鍼灸治療はどれだけ効果があるのか調査しました。
 ここに第51回(社)全日本鍼灸学会学術大会で報告させて頂いた研究内容を一部紹介します。
 我々は難治性不妊症(結婚5年、不妊専門医療機関で2年治療しても妊娠に至らない不妊症)の中でも、病院での治療を続けても妊娠への条件の一つである子宮内膜形状不良(図2)のため、
 妊娠に至ることができなかった57名を対象に病院の治療に鍼灸治療を併用したところ、31名(54.4%)が子宮内膜形状が改善し、その内14名(45.1%)が妊娠に至ることができました。(図3・4)
 以上のことから、不妊原因の一つである子宮内膜形状不良には鍼灸治療は効果があることが明らかになりました。しかし、不妊症は様々な要因が重なっている場合が多いため、鍼灸治療と近代医療とを併用することで、妊娠への道を開いて下さい。
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