平成16年10月1日号
膝痛と鍼治療−変形性膝関節症でお困りの人へ−
東洋医学研究所グループ
二葉鍼灸療院 河瀬美之
 
 人間が二足立歩行をするようになった結果、腰痛や膝痛が起きてくるようになりました。また、不良姿勢から首肩の痛みや肩こりが併発してきます。これらの最も大きな原因が運動不足による筋力の低下です。
 前回は腰痛についてあなたがどんな腰痛かをチェックしました(バックナンバー参照)が、今回はあなたの膝痛がどんな膝痛なのかをチェックしてみて下さい。また、膝痛の最終的に行き着く病気である変形性膝関節症について述べてみたいと思います。
 
 膝痛は痛みが現れた時の様子や症状をお聞きし、実際に触って様々なテストを行うことで、約80%の確率で正確な診断が可能であるとされています。実際に痛む部位により大まかな診断ができますので、下の図を参考に見て下さい。
 痛む部位別による考えられる疾患名
痛む部位別による考えられる疾患名 1 膝関節外側
外側半月板損傷、大腿二頭筋腱炎、腸脛靭帯
損傷、外側側副靭帯損傷

2 膝関節内側
内側半月板損傷、内側側副靭帯損傷、タナ障害、
鵞足炎、変形性膝関節症(壮年期以降)

3 膝蓋骨周辺
膝蓋大腿関節障害、タナ障害

4 脛骨粗面
オスグット・シュラッター病(青年期まで)


 スポーツをしている若い人で膝が痛む場合には靭帯や半月板、関節包の障害が考えられ、図を参考にその原因を探る必要があります。

 東洋医学研究所グループの先生方は様々な膝痛の徒手検査テストを行い、より正確な病態把握を行い、適切な鍼治療と生活指導を実施することができます。是非、ご相談下さい。
 
 さて、上記の病変があると、年齢を重ねることにより変形性膝関節症へと移行してゆきます。45歳以降で膝が痛む人は変形性膝関節症と考えられます。

  そのまま放置しているとどんどん悪くなり、今まで片方の膝だったものが両方の膝まで痛くなってきます。「年だから・・」と言ってあきらめていると大変なことになってくるのです。

  そこで、鍼灸院に訪れる人で最も多い変形性膝関節症について述べてみたいと思います。


変形性膝関節症の症状は?
 
変形性膝関節症の症状
 正座をする時、歩く時、階段の昇り降りの時に膝の内側が痛くなります。この症状は患者さんの約80%に現れてくるといわれています。これらの症状は動き始めに痛みが強く出るのが特徴です。

 天気が崩れる時に痛みが強く出たり、、冬の冷えや夏でも冷房の風に直接当たるなどが原因で痛みが強くなります。

変形性膝関節症に対する治療のまず最初は“これ以上悪くしない”

 
 変形性膝関節症の原因は関節軟骨がすり減って炎症を起こして痛みが出てくるのです。これに伴って関節に水が溜まることもあります。特に内側の関節軟骨が減りやすく、膝の内側の痛みが出てくるのです。

 それを続けているうちに関節軟骨がすり減って無くなり、ついには骨と骨とが当たって痛みがひどくなります。したがいまして、関節軟骨がすり減って無くならないようにしなければいけません。

 そのためには・・

ステップ1 膝周辺の血行を良くして痛みをやわらげる
 
 膝の一部分に体重がかかり、その部分の関節軟骨に負担がかかるので、膝周辺の筋肉などの血行を鍼治療で良くして膝関節周辺の筋肉の硬さを改善し、痛みをやわらげる必要があります。

ステップ2 ストレッチにより膝関節のこわばりを取り除く
 
 ほとんど患者さんがO脚変形を起こしています。また、下図のように足を完全にまっすぐ伸ばすことができません。

  膝をまっすぐ伸ばしているつもりでも、膝の裏の面と床の面の間に矢印のように大きな空間ができます。ひどい人は握りこぶしが入るくらい、膝が伸びずに曲がったままで固まっています。

 O脚変形はもとに戻すことはできませんが、膝をまっすぐに伸ばすことは可能です。

 膝を伸ばすことにより、膝の一部分に体重がかかっているものを膝の関節面全体に体重をかけて余分な負荷をかけなくすることができるのです。

 鍼治療を始めると同時に、ストレッチで膝をまっすぐ伸ばすことにより、膝の後ろの筋肉や靭帯などを徐々にまっすぐに伸ばすことができます。

 その方法は、下の図のように床に足を投げ出して座り、足をできる限り伸ばして上半身を前に倒します。反動をつけて伸ばすことはやめましょう。

 膝の後ろの筋肉が伸ばされることを意識して、上半身を前に倒しながらゆっくり伸ばしていき、痛いところでとめて30秒程とめてもとに戻すという動作を2〜3回繰り返します。この動作を朝の起床時、寝る前の最低2回行って下さい。

膝のストレッチ

ステップ3 自分で筋力をアップさせる
 
 体重を減らす必要があることはわかっていても、膝が痛くて運動できないため体重を減らせないのが現状ではないでしょうか。

 そこで、ステップ1にあるように、まず鍼治療を受けながら、ステップ2のようにストレッチを行って痛みをやわらげ、その後で少しずつ散歩を開始するのです。

 散歩が行えるようになってはじめて本当の治療が始まるのです。

  したがいまして、膝痛は患者さんご自身が治療に積極的に参加する代表的な病気であると考えます。

 多少、散歩をやりすぎて痛みが増しても大丈夫です。そのような痛みは比較的早く鍼治療で改善することができます。むしろ、散歩をしなくて痛みが増す時の方が治しにくいのです。


散歩は少しずつ始め、歩くという意識をもって始めましょう!

 だらだらと歩くのではなく、歩くという意識を持って背すじを伸ばし、手をよく振り、足を上げて歩くようにします。この動作により、足の前の方の筋肉と腰やお腹の筋肉の両方を鍛えることができ、効率良く筋力をアップさせることができます。

症 例 紹 介
 
ステップ1〜3までを行い、変形性膝関節症が良くなった典型的な2つの症例をご紹介します。

膝痛VASの推移

 VASはVisual Analogue Scaleの略で、現在の痛みの程度を知る有効な指標のひとつです。

 100mmの線に左端を痛みなし、右端を想像できる最悪の痛みとし、現在の膝の痛みがどの程度かを患者さんがしるしをつけ、左端から定規で何ミリの所にあるかを測定して記録する方法です。

 VAS値が下がれば痛みが改善されていることがわかります。
 2つの症例は鍼治療を開始し、同時にストレッチを行い、矢印からステップ3の歩行を開始しました。

 それまで順調に痛みが軽減されてきましたが、これ以上悪くせずに日常生活には支障がないようにするためには歩行を行わなければいけません。

 歩行を開始すると一時期は痛みが増しますが、それを過ぎると順調に回復してゆくことがわかると思います。

 これら症例の患者さんは鍼治療を毎日あるいは1日おきに受けられています。歩行開始の時期は個人差がありますので東洋医学研究所グループの各先生にお聞き下さい。


 最後に、これからの時期、朝・晩の冷え込みが厳しくなります。睡眠中は動かさないので身体全体の血行が悪くなり、冷えにより悪い膝の血行がさらに悪くなることによって痛みが増します。膝の保温をして冷えに備えて下さい。

 さあ、散歩が気持ちいい秋になります。どんどん動いて膝の筋力アップをはかり、鍼治療により次の寒い冬を乗り越えていきましょう。