平成18年2月1日号
東洋医学研究所グループ®
二葉はり治療院 院長 中 村 弘 典
 
はじめに
 我が国における糖尿病は増加の一途をたどっており、その合併症が大きな社会問題となっています。糖尿病合併症で大切なことは、早期発見による早期治療が最も重要です。
 前回、糖尿病のお話のコラム(平成16年9月号)では、糖尿病そのものによる自覚症状について述べさせて頂きました。そこで、今回は糖尿病合併症の早期発見のために重要となる糖尿病合併症の自覚症状について述べさせて頂きます。
 
糖尿病は万病のもと?
 糖尿病は恐ろしい病気か否か?問われるならば、恐ろしい病気であるとは思いません。糖尿病でインスリンの働きが悪いとしても、インスリンの働きに応じた生活さえすれば、障害が現れないからです。たとえ血糖が高くとも尿中に糖が出たとしても、正しい治療さえ行えば、ほとんどが正常に戻ることが可能であるからです。しかし、正しい治療をしなければ全身が合併症に侵され大変なことになります。

糖尿病合併症について
・糖尿病は合併症の病気といわれているように、糖尿病コントロールの主目的は合併症発症予防と進展の抑制となります。
 糖尿病の合併症とは、一般的に急性合併症と慢性合併症に大別されます(表)。
・急性合併症の代表例としては、糖尿病性昏睡と急性感染症があげられますが、これらは治療の進歩(特にインスリン療法)により、発症とその予後(経過)は著しく改善されています。しかし、未だに克服されたとは言えず、意識障害を来たし、多くの臓器障害まで併発する可能性を含んでおり、生命予後に関わってくる重篤な病態と考えるべきです。
・通常、糖尿病の合併症という場合は、慢性合併症のことを指します。慢性合併症は、成因やその病態から血管障害合併症とその他の合併症に分けられます。さらに血管障害は、細小血管障害と大血管障害(動脈硬化性血管障害)とに分けられます。
 細小血管障害は、細小血管(毛細血管)の病変から始まる病態で、糖尿病に特徴的な合併症です。代表的な例は、網膜症、腎症、神経障害で、この三者を糖尿病性三大合併症といいます。
  これに対して大血管症は、動脈硬化に由来する合併症で、糖尿病に特異的とはいえず、糖尿病自体が危険因子となり、他の危険因子(高血圧、高脂血症、肥満、喫煙など)と絡み合って、糖尿病の罹病経過とは無関係に発症してきます。


○視力の低下
目がかすむ、目が疲れる、目が痛い、黒いものが見える、暗いところでは見えにくい、などのこのような症状が糖尿病患者の約3割の人に認められています。
合併症は、網膜症(眼底出血)、白内障(しろぞこひ)、緑内障(あおぞこひ)虹彩炎、眼筋麻痺など。
血糖が高いのが主な原因で毛細血管や神経の異常が密接に関係しています。
○手足のしびれや痛み
 手足のしびれが糖尿病患者の約4割の人に見られます。触覚や痛覚が鈍い感じで、皮膚に虫が這っている感じ、足の中に棒が入っているような不快感、生ゴムが足に巻かれているような錯覚など様々な症状があります。温度の感覚が侵されて、熱がわからず風呂場や湯たんぽでやけどを負う人があります。
神経痛も知覚異常の一種で、坐骨神経痛や足の痛みなどが主なものです。
糖尿病では、高血糖、ビタミン欠乏や血管傷害などのために神経や筋肉に合併症がおこります。
○こむら返り
 ふくらはぎや手のひらが急に引きつって痛いような感じが、夜間睡眠中及び運動中におこります。
糖尿病患者の約1割弱の人に見られます。
糖尿病神経障害によっておこると考えられています。規則正しい食事や運動療法により予防でき、比較的治り易い症状です。
○歩行障害
 手足のしびれや神経痛が長く続くと、運動するのがおっくうになって歩かなくなるため、足の筋肉が弱くなったり血流が悪くなり、歩行の途中で急に足が痛くなったり、一休みしてはまた歩くような間欠性跛行が見られることがあります。また、足の指の血流がなくなると指が腐るような壊疽になることがあり、治療が遅れると切断することもあります。
○皮膚がかゆい(湿疹・皮膚炎)
 糖尿病では尿に糖分が多く出ますが、同時に汗の中にも糖分が出ているのです。汗をかいたままにしておくと、細菌やカビ類が付着して、湿疹や皮膚炎がおこりやすくなります。このような症状は糖尿病患者の約2〜3割の人に見られます。
○おでき(化膿創)
 おできは、皮膚をかいて傷ができたところから細菌が侵入して化膿したもので、赤く腫れ上がり中に膿を持ち、大変痛いので病院を訪れて初めて糖尿病が発見されることも少なくありません。糖尿病患者の約2割の人に見られます。
○歯がもろくなる(虫歯・歯肉炎・歯周病)
 糖尿病では、唾液中の糖分も多くなるので、不潔にしていると虫歯が起こり易くなります。また、歯肉の炎症を繰り返し悪化して歯槽膿漏が進行し、歯がぐらぐらで、物をかむことができなくなることがあり、糖尿病患者の約2〜3割の人に見られます。
○無月経
 初潮が遅れたり、初潮はあったが、その後無月経になったという少女や、月経が不順になったが体が悪いのではないかと病院を訪れた婦人などに糖尿病が発見される場合があります。
月経異常は、糖尿病の合併症である自律神経の障害によっておこるものと考えられます。
○性欲の減退(インポテンツ)
 糖尿病では、女性の月経異常と同じように自律神経が侵されて、男性性器の働きが鈍くなってくるのです。そのために、性欲が弱くなる・早朝の勃起がなくなる・性交ができなくなるなどの症状が現れることがあります。
 アンケートによると糖尿病患者の約2割の人に訴えられていますが、実際には約1割弱と考えられています。現実、男性ホルモンを測定しても正常な人とほとんど差は認められていません。また、糖尿病以外に血圧などの薬が原因で性欲の減退をおこしていることもあります。
 (インポテンツの意味は力不足・無力という意味です)
○下痢・便秘(便通の異常)
 糖尿病になった時、今まで一日一回順調にあった便通が、急に下痢や軟便に傾いたりする人が、糖尿病患者の約1割弱の人に見られています。
 これは、自律神経の異常によるもので、副交感神経の働きが強くなると腸の運動が盛んになって下痢になり、反対に弱くなると腸の運動が少なくなり便秘になるのです。糖尿病の場合は薬の使用によって簡単に治らないのが特徴です。
○尿閉・尿失禁
 糖尿病では、ごくまれに尿の出方が異常となることがあります。これも自律神経の異常によっておこります。糖尿病患者の1割未満の人に見られます。
 尿が出にくく、腹部が大きくなり、妊娠と間違えた女性もあるそうです。すぐに尿を漏らすので病院で診てもらったところ、実は糖尿病であることがわかったこともあるそうです。
 ・膀胱無力症という合併症のためにおこる症状です。
○多汗・無汗
 汗を出すのも、自律神経の役割で糖尿病での発汗異常は、一般に上半身に汗が出る人が多いが、その逆もあるそうです。また、珍しい場合は顔だけに汗をかき他の部分は無汗という例や、体の半分は多汗で他の半分は無汗の人もあるそうです。
○立ちくらみ・めまい
 血管を支配している血管運動神経(自律神経)の異常でおこる症状で、同時に手足の冷感・鳥肌・むくみなどを伴うことがあり、糖尿病患者の1割未満の人に見られます。目まいが強く、病院を受診したら脳軟化症といわれたが、よく検査を行ったところ、糖尿病による血管運動神経の障害であったということがしばしばあるそうです。
○咳や痰がでる
 糖尿病では、体の免疫力が低下するため感染症には充分な注意が必要であり、普段から無理をしない程度の運動療法が必要であると思います。また、肺結核や肺炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の合併症による場合もあります。

体重の変化を観察することで糖尿病のコントロール状態が解り、合併症の予防につながります。(体重は増加しても、あるいは減少しても注意が必要です)
 糖尿病が発見された時、今までの体重に比べ、「やせてきた」人が23%、逆に「太ってきた」人が27%に認められています。
 一般にいうと、「やせてきた」人は30歳以下の1型糖尿病に多く、症状は重症である傾向にあると考えられます。しかし、中高齢者の中にも糖尿病の正しい治療を怠り、発見が遅れて悪化した場合に体重がしだいに減少し、やせて症状が重くなる場合もあるので注意が必要です。
 「太ってきた」人は40歳以上の2型糖尿病に多く、症状が軽症であることが多いと考えられます。しかし、この型は肥満児にもおこる場合があり、近年では増える傾向にあると思います。
 糖尿病で太るのは、長年の間に食べ物を摂り過ぎたり、運動不足が続いた時に見られるが、夏などは汗をよくかき動悸や息切れがしやすく、疲れ易いので、糖尿病が発見され易くなります。
 やせる場合は、糖尿病が進行してインスリンの働きが低下した結果であり、糖分の利用が悪く、体内の脂肪を燃やしてエネルギーとするため、体重が急に減ってくるのです。
 若い人の体重減少は、糖尿病のほかに甲状腺機能亢進症があったり、ダイエットのための減食による場合があります。成人の場合は、胃癌やすい臓癌などの悪性の病気が体重の減少の原因である場合があるので充分な注意が必要です。
 治療としては、やせる場合はインスリン注射が必要な場合があり、合併症の進展が早いと考えられます。太る糖尿病では、食事療法と運動療法を正しく行うことが重要であり、それを怠るとしだいに合併症が進行しますので油断は禁物です。

おわりに
 以上、糖尿病患者の合併症を発見するために重要となる自覚症状について述べさせて頂きましたが、糖尿病合併症は驚くほど数多く発症します。しかし、糖尿病は合併症さえ予防すれば、怖い疾患ではありません。
 そのためには、普段から食事療法及び運動療法に鍼治療を併用することで、糖尿病のコントロール状態を良好に維持すれば心配は無用です(詳しくは、研究室及びコラム平成15年1月号平成17年11月号を参考にして下さい)。
 最後になりましたが、鍼治療は糖尿病のコントロール状態を良好に保つ一手段として有効です。糖尿病合併症や自分の健康が心配な方は、是非、我々東洋医学研究所®グループの痛みや副作用のない、全身調整を目的とした鍼治療(黒野式全身調整基本穴)を受療してみて下さい。