平成19年8月1日号
東洋医学研究所®グループ
二葉はり治療院 院長 中村 弘典
はじめに
今日の糖尿病治療は、合併症の予防に重点がおかれており、大切なことは早期発見による早期治療であるが、合併症を進行させないことも重要なことです。
前回、糖尿病合併症の自覚症状について述べさせて頂きました。そこで、今回は糖尿病合併症の中でも、神経障害が招く足病変の予防のためのフットケアについて述べさせて頂きます。
[1]なぜ足の手入れが必要か
糖尿病と足は、意外なほど強い関係があります。ふつう日常生活で足に気を使うことはほとんどありませんが、糖尿病があると足の手入れが非常に重要になります。
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、よくいわれる神経障害のほかに動脈硬化などによる血流障害が起こりやすく、また細菌や真菌(みず虫)などの感染に対する抵抗力が低下します。
神経障害があると痛みを感じにくいため、ケガやヤケドに気付きにくく、つい放置しがちです。さらに、動脈硬化などが進行し血流障害が起きると、からだの末端、特に足の先などには血液が流れにくくなり、細胞が必要とする栄養や酸素が、十分に行き届きません。
そして、からだの抵抗力の低下により、傷口が化膿しやすく、傷の治りも遅くなります。
まず、神経障害により感覚が鈍くなっているため、ケガやヤケドなどの発見が遅れたり、放置してしまいます。そして、早めに手当すればすぐに治る程度のケガでも、血流障害や細菌に対する抵抗力が低下しているため、なかなか治らず、傷口が化膿するケースもあります。そして、潰瘍へと悪化してしまうと、治療は長期にわたり、入院も必要になります。
この段階に血流障害が重なり、十分な血液が流れないとさらに悪い方向に進み、壊疽という、組織が死んでしまう病気になってしまいます。壊疽の治療は非常に困難で、場合によっては足を切断しなくてはならなくなります。足を切断すれば、日常の活動範囲はきわめて制約されたものになってしまいます。
このように、糖尿病による足の病気はさまざまなことが重なりあって、初めはごく小さなケガでも、想像以上に悪化してしまうことがあります(下図)。
[2]足を守るために
足の病気で困らないようにするには、予防が一番です。血糖コントロールによる糖尿病そのものの治療はもちろんですが、次のような点に日頃から気をつけましょう。
1. 毎日こまめに足のチェックを
寝る前などに、毎日明るい場所で足をよくみましょう。足の裏側は手鏡に映してみたり、目の悪い方は、周りの人にみてもらいましょう。
2. 入浴時のポイント
お風呂に入る時には、次のような点に注意しましょう。
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湯船に入る前には、必ず手で湯加減を確かめる。神経障害があると足は熱さに鈍くなっていて、熱い湯でも気付かずにヤケドをすることもあります。
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やわらかいタオルやスポンジで、足の裏や指の間もていねいに洗いましょう。
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足がふやけるほどの長風呂は皮膚が傷つきやすいので注意しましょう。
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入浴後は水分をふきとり、クリームを塗って、皮膚が乾燥しないようにしましょう。
3.爪の手入れも大切
神経障害が進んでいると、爪が伸びていたり割れていたり、さらには巻き爪でくいこんでいても、違和感や痛みを感じません。伸びた爪はケガのもとですので、こまめに手入れをしましょう。硬くて切りにくい爪は、無理に自分で切らずに医師に処置してもらいましょう。また、深爪をしないように注意しましょう。
○靴下の選び方、履き方のポイント
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通気性のよい綿かウールのものを選びましょう。
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足を締めつけ過ぎず、ずれて下がらない、サイズのあったものを履きましょう。
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出血に気付きやすい白色のものを選びましょう。
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毎日履き換えて清潔を保ちましょう。
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雨水でぬれた時は、早めに履き替えましょう。
○靴の選び方、履き方のポイント
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足全体にフィットし、つま先がゆったりしたものを選びましょう。
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ハイヒールなど、一カ所に体重がかかるものは避けましょう。
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靴底にクッションのある、ウォーキングタイプを選びましょう。
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一日の中で最も足が大きくなる夕方を基準にサイズを選びましょう。
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新しい靴は、最初から長時間履かずに、徐々に慣らしていきましょう。
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靴を履く前には、小石など異物が入っていないかをチェックしましょう。
[3]日常生活での注意点
足の手入れを習慣づけるとともに、普段から次のようなことに気をつけましょう。
1. いつも靴下を履くように
ケガの防止のため、素足を避け、靴下を必ず履くようにしましょう。靴下の選び方、履き方は、上記のようなことに注意しましょう。
2. ヤケドに注意
神経障害により足が冷えることはよくありますが、そんなときは熱さに対しても鈍くなっています。こたつや電気カーペットなどでは、低温ヤケド(長時間温めていることでヤケドと同じ状態になる)に十分注意しましょう。また、真夏の海水浴で、砂浜を素足で歩いたり、直射日光にあたり激しい日焼けをするのは避けましょう。
3. 感染症に注意
汗や汚れをそのまま放置せず、清潔を保ちましょう。雨の日や夏場は特に注意が必要です。ふやけた皮膚は傷つきやすく、そこから感染し化膿・みず虫の原因ともなります。汗はよくふき、靴下は替えましょう。
4. 禁煙を心がける
タバコに含まれているニコチンは、血管を収縮させたり痛めたりすることがわかっています。つまり、タバコを吸うことで、血流障害はより悪化します。
おわりに
糖尿病の“先進国”であるアメリカでは、事故や傷害以外の理由で足を切断せざるを得ない人の約半数が糖尿病によるものと報告され、1994年の統計では、実に6万人が糖尿病で足を失ったといわれます。
最後に糖尿病合併症は、普段から食事療法及び運動療法に鍼治療を併用することで、糖尿病コントロール状態を良好に維持すれば心配はありません(詳しくは、
研究室
及びコラム
平成15年1月号
・
平成17年11月号
を参考にして下さい)。
糖尿病合併症や糖尿病でなくても、自分の健康が気になる方は、一度、我々東洋医学研究所®グループの痛みや副作用のない鍼治療を受療してみて下さい。