平成20年7月1日号
鍼灸治療は知られている?
東洋医学研究所®グループ
福田鍼灸院 院長  福田 裕康

 今回5度目のコラムを担当させていただきます。

 は本年の3月に、開業させていただいている地元の社会福祉関係の方から講演の機会をいただき、「東洋医学(鍼灸医学)からみた健康づくり」と題してお話させていただきました。
 そこで、今回のコラムでは、講演の内容を考えている時や実際に講演させていただいて、鍼灸治療に対するイメージや鍼灸治療そのものについて感じたことがたくさんありましたので、そのことについて述べさせていただきたいと思います。

 まず鍼灸治療に何を望んでいるか?ということです。
 第一は痛みをとって欲しい、つまり腰痛、膝痛、肩痛などの痛み疾患に対して治療をして欲しいということです。確かに健康保険での適応範囲も神経痛、リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症、頚椎捻挫後遺症といわれる主に整形外科の領域に該当する疾患があげられています(保険を使うには医師の同意書が必要)。

 では、鍼灸治療というのは上記の疾患にしか効かないのでしょうか?
 例えばWHO(世界保健機関)が鍼灸治療の対象とした疾患には運動器系疾患、消化器・呼吸器系疾患、疼痛疾患、循環器疾患、泌尿器・産婦人科系疾患、その他の疾患など49種類があげられています。世界的にはこのように認められつつあるなかで、日本ではまだ疼痛疾患の治療というイメージがついてまわります。
 もう一つ鍼灸医学が属する東洋医学では予防という概念が重要視されています。例えば本年度(平成20年)からメタボリックシンドロームいわゆる肥満に対して国をあげて対策にとりかかっています。こういった概念、いわゆる病気になる前になんらかの対策を行うということは、本来、東洋医学といわれる鍼灸医学が得意とする分野であるはずです。
 「未病治」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、まさに東洋医学の本道をあらわした言葉で、鍼灸医学の古典文献においては「上医(最上の医師)は未だ病まざる病を治す、中医(中級の医師)は人を治す、下医(下級の医師)は病を治す」という内容が約2500年前に著わされています。
 しかしながら、残念なことに現段階では、「未病治」言い換えれば予防として治療をおこなうよりも、いろいろな治療を試みた後、最後の手段として鍼灸院に来院してみえる患者さんが多いのが実際ではないでしょうか。
 なぜこのようなことになっているのか、そこにはいくつかの問題点があります。その問題点をみていきます。
 は過去4回(平成14年11月号平成16年4月号平成17年8月号平成18年12月号)にわたって鍼灸医学・鍼灸治療についていいことや期待できることを書いてきましたし、講演を通じて、身にしみて皆さんが鍼灸治療に期待して下さっていることを感じましたが、従来の鍼灸治療のイメージを払拭できない理由はやはり鍼灸師側にあるとしかいえません。
 世間では新聞、テレビなどのマスコミ等を通じて東洋医学に興味や期待を持っていただけているという事実があるのですが、本当にこの期待に答えることが出来るのでしょうか。
 その一つの答えとして東洋医学研究所®グループに所属している先生は、実証的な研究の裏づけがある治療しかしないようにしています。
 1回目コラム(平成14年11月号)でも書き、開業させていただいてすぐに感じたことですが、患者さんもいまや治療として鍼灸院を訪れる場合自分の身を預けることから、相当下調べをして来院し、誰か先に来院され治療を受けた方の経過や効果などを充分に承知したのちに来院されます。つまり、やった、効いた、治っただけでは駄目で、どうして効くのとか、どうやって治してくれるのかということまで要求されるということです。
 例えば先程の「未病治」に関しては、東洋医学研究所®黒野保三所長は1980年に「鍼刺激の生体免疫系におよぼす影響(1)」と題して学会発表され、東洋医学研究所®グループの治療の基礎を創られました。1980年に発表しているということはその数年も前から研究されていることになり、その後も第6報まで(1988年)報告されています。
 医療に携わるということは立ち止まることがゆるされないのか、その後も(社)全日本鍼灸学会本部や地方会において研究班を発足させ、現在も研究を継続中であります。
 この「未病治」というのは当然、体にある免疫力を賦活させ、体の恒常性機構を維持しようとするものであり、これに対して鍼灸治療がどのように係わって有効的なのかを証明してきたものです。
 最近では、この免疫という言葉だけが一人歩きをしており、たまに臨床鍼灸の現場で実態のない説明を聞くことがありますが、それでは患者さんに信頼をうけることができないということが伺われます。
 医療費が高騰し、将来の医療の見通しがきかない現代において、患者さん自身が自己責任において医療を選択する時期がきています。どこの鍼灸院に行っても確たる根拠をもった信頼できる治療を受けることができるようになれば鍼灸治療の存在価値があがることは目にみえています。鍼灸師自身が今のままの認識で良いと思っているならば、世間の認識も当然今のままの低い認識で終わってしまうはずです。

 講演を依頼していただいた目的は、地域住民に鍼灸治療や東洋医学というものに興味をもっていただき、その上で今後の生活の中で役立てていただくためだと聞きました。
 また、講演させていただいた後に、「今回の講演は、一般的によく聞くような、ここのツボを刺激するとこの病気が治るといった内容の話かと思ったら全然違っており、初めて聞く良い内容だった」と言っていただけました。

 東洋医学研究所®グループには、黒野保三所長が50年に亘って積み上げてこられた実証医学的研究があります。その価値は、今東洋医学研究所®グループの鍼灸院に通院していただいている患者さんには理解していただいていると思います。
 しかしながら、今回このような講演をさせていただき、まだ知っていただけていない部分がたくさんあることも痛感いたしました。ありがたいことに黒野保三所長を筆頭に東洋医学研究所®グループの先生方にはそれぞれの専門領域をもった先生がたくさん見えます。正しいことを正しく知っていただきたいと思いますので、ぜひ話を聞きたいと思われる方は東洋医学研究所®グループを参照のうえ、それぞれの先生にお伝えください。