平成15年4月5日号
慢性肝機能障害と鍼治療
東洋医学研究所グループ
二葉鍼灸治療院
あなたの肝臓お元気ですか?
 肝臓は横隔膜のすぐ下に位置し、右上腹部のほとんどを占め、一部左上腹部にもおよびます。 前から見ると直角部分を右上にし、左上が鋭くなった直角三角形≠フ形をしています。
肝臓の位置

 上方の面は横隔膜の形なりに、緩やかな丸みをおび、右・上側壁に接する部分が最も厚く、 左にゆくにしたがって薄く鋭くなっています。

 おなかの中では最大の臓器で、重さは成人で約1200〜1400gにもなります。20〜30歳代で最も重くなり、 それ以後は次第に軽くなっていきます。

 肝臓の基本単位である肝小葉には、二つの血管系から異なった性質の血液が流れ込んでいます。

 その一つは肝動脈からの酸素に富んだ動脈血であり、 もう一つは胃、小腸、大腸などの消化管と脾臓から門脈を通って入ってくる栄養などに富んだ静脈血です。
肝臓の形と名称

 この2種類の血流は、肝小葉の周辺でいっしょに並び、肝小葉の組織内を流れて処理されたあと 、小葉下静脈から肝静脈を経て下大静脈に流れていきます。

 肝臓は身体の中で最も重要な働きを担っている臓器といえます。それは肝臓が3/4〜4/5を切り取られても 生命を維持するだけの能力を備えていることからもわかります。

 また、肝臓は心臓や肺、胃腸と違って再生する能力があります。このため肝臓を半分切り取って 移植しても、しばらくするともとの大きさに戻ります。

 化学工場といわれる肝臓のしくみは、消化管で食べ物から吸収された栄養素を運ぶ門脈がパイプラインのように肝臓につながっています。

 パイプラインを通ってきた血液中に含まれる栄養素などは、肝臓で酵素によるさまざまな処理を受け、 からだに必要なタンパク質や脂肪などに加工されます。

 加工された物質は、からだの必要に応じて蓄えられたり、全身の組織、器官にゆきわたり使われます。 また、肝臓には、消化を助ける胆汁を作る働きもあります。

 一方、からだに有害な物質を無毒化してからだの外へ排泄する働きや、アルコールを分解する働きがあります。

 肝臓の異常は、からだに必要な物質の血液中濃度の変化としてとらえられます。

肝臓の主な働き
・ 炭水化物・タンパク質・脂肪などを蓄えたり、ひとのからだで使う物質に作り替え、必要に応じて送り出す。
・ からだで不要になった老廃物や、体内に入り込んだ有害物質やアルコールを害のないものに変える。
・ 脂肪の消化・吸収、脂溶性ビタミン、鉄、カルシウムなどの吸収に必要な胆汁を作る。
・ 血液を固まらせる働きをする血液凝固因子の大部分を作る。
・ 鉄分を貯蔵したり、血液を蓄えたりする。

飲みすぎ 食べすぎ
 このように体にとって重要な働きをしている肝臓の機能に障害が起こりますと、さまざまな症状が現れます。

 しかし、肝臓は7割近くが切り取られてもいつも通りの仕事を辛抱強くこなし、少々の病気では弱音を吐きません。

 はっきりとした症状が現れるのは、病気がかなり進んでからということになります。



 肝臓の病気を引き起こす原因には、ウイルス(A型、B型、C型、D型、E型)、 アルコール、薬物、生活習慣、ストレスなどがあげられます。また、病期としては脂肪肝、肝炎、 肝硬変、肝癌と次第に重症化してゆきます。

慢性肝機能障害に対する鍼治療
 慢性肝機能障害に対する鍼治療の研究は、1970年ころ、東洋医学研究所所長黒野保三先生が病院に通院中の 慢性肝機能障害の患者に鍼治療をしていたところ、患者さんから「主治医の先生から肝機能の状態が非常に よくなったと言われました」との報告を受けられたのをきっかけにはじめられました。

 そして、1975年には名古屋市立大学医学部第一解剖学教室におきまして、動物実験を開始され、 1979年には全日本鍼灸学会鍼灸研究ワーキンググループが発足すると同時に慢性肝機能障害班を設置され 、臨床研究を本格的に始められました。ここにその臨床研究の成果をまとめさせていただきました。

図1 男女別年齢分布
 1979年10月1日から1996年12月31日までの17年3ヶ月の間に鍼治療を受けられた患者さんは126名ありました。 その年齢分布は図1のように50歳代が一番多く受診されておられます。

 鍼治療の効果を検討するために、血液検査を毎月1回測定されていた患者さんの AST(GOT)とALT(GPT)を指標にして、初診時と6ヶ月治療群、初診時と 9ヵ月治療群の推移を比較検討しました。

血液検査
 6ヶ月治療群(19名)の初診時のASTの平均値は142.6KU、ALTの平均値は197.2KUでした。 そして6ヶ月治療後のASTの平均値は56.9KU、ALTの平均値は79.8KUと減少しました。

 また、9ヶ月治療群(15名)の初診時のASTの平均値は106.9KU、ALTの平均値は152.3KUでした。 そして9ヶ月治療後のASTの平均値は49.9KU、ALTの平均値は58.3KUと減少しました。

 次に、自覚症状の推移を検討するために自覚症状チェック表を作製し、 その初診時と6ヶ月治療群、初診時と9ヵ月治療群の推移を観察しました。(図2)

図2 鍼治療によるAST、ALTの推移
 6ヶ月治療群(12名)の初診時の自覚症状の平均値は13.8点、でした。 そして6ヶ月治療後の自覚症状の平均値は5.8点、9ヶ月治療後の平均値は5.6点と減少しました。(図3)

図3 鍼治療による自覚症状点数の推移


 このように、鍼治療はAST(GOT)、ALT(GPT)の減少に有効であることが確かめられました。

 このことは慢性肝機能障害はAST(GOT)、ALT(GPT)の1年間の 平均が80KU以上になると、次の段階(例えば、慢性肝炎であったとしたら 肝硬変へ移行すること)に進むといわれています。

 しかし、鍼治療を行うことにより生体の統御系が賦活され、肝臓の炎症や 線維化が改善され、病気の進行が防止できるのではないかと考えられています。

 そして、自覚症状が減少することが確かめられ、患者さんの 日常生活がとても楽になることがわかりました。

散歩 食べ過ぎないように
 鍼治療には、病気を改善し、進行を防止する働きがありますし、何よりも 自覚症状が取れ日々を楽に過ごせるようになります。

 慢性肝機能障害でお悩みのあなた、毎日お酒やストレスで肝臓を酷使しているあなた、 一度、痛くなく、副作用のない鍼治療を受けて、肝臓をいたわってあげてください。
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